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Starting Over in邪馬台国 ~卑弥呼システム~  作者: 暇人と黒猫


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第4話 卑弥呼というシステム

邪馬台国。

どこにあったのかも定かではなく、どんな国だったのかも具体的にはわからない国。


卑弥呼。

倭国大乱を終わらせ君臨し、神道や占いの類いで国をまとめていた女王。こちらも謎の人物だ。


邪馬台国と卑弥呼。これらの存在を肯定するものは国内にはない。言ってしまえば「ムー大陸」みたいな「伝説上の国」という方が近い存在なんじゃないかと思う。

しかしそうはならなかった。彼らは「外交」をしていたのだ。


「魏志倭人伝」


中国で正式に国の史書であると認められた記録に「邪馬台国」と「卑弥呼」の存在が記されている。わずか二千字程度の文字だけが確かにその存在を証明している。

日本国の歴史からはまるで消されたかのような謎の亡国とその女王の存在を。



「ここは後の世で邪馬台国と呼ばれる国。そして私は卑弥呼と呼ばれる女王」日巫女様は二、三頷きながら言う。「日神様はさしずめ天照大御神なんじゃないかな?」


なんじゃないかな?...?


「あの、先の世の人間としてお聞きします。なぜ僕なんでしょうか?」聞きたいこと気になることは山ほどあるが、まずはその答えを欲した。

日巫女様...卑弥呼...もう彼女でいいか、彼女は「上手くいった」と言ったからには何らかの意図があり僕の記憶を蘇らせたのだろう。まずはなぜ僕なのか?だ。

「いや、別に貴方だったからとかじゃないの。たまたま貴方だったのよ」

彼女の答えに唖然となる。たまたま?

「たまたま?...ですか?」

「たまたまって言うと何だか確かにちょっと軽いわね。こっちが巻き込んだのだからさすがに失礼だった。謝るわ」

「巻き込んだ?あの、そもそもどうやって僕の記憶を蘇らせたんですか?そもそもトウリが僕だってなぜすぐにわかったんでしょうか?」記憶が蘇ったその日に使者が来たのだ。これまでたまたまってことはないだろう。


「そうね。何から話して良いのか...。とにかく全部話す。邪馬台国と卑弥呼の秘密。邪馬台国とは何なのかを。そして卑弥呼とは何者なのかを。私もちゃんと理解できているわけじゃないけど」彼女は椅子から降り、僕の正面に正座した。


邪馬台国と卑弥呼の秘密?

邪馬台国とは何なのか?卑弥呼とは何者なのか?

いよいよ意味がわからない。


そしてそれが僕に何の関係があるんだ?


彼女は目を閉じてとても深く深呼吸をした。そして目を開け僕の目を見る。

「まず。私も元未来人です。貴方と同じ令和で死にました」


驚い...いや、うん。何となく途中からちょっと思ってた。もうね、話し方が普通に現代人。「もそっと近う」とか言ってたの最初だけだったよ?


「えっと、じゃあ僕ら二人が記憶を持ってこの時代に?でも貴女は僕のことを知っていたみたいだけど、僕は貴女が未来人の生まれ変わりとは知りませんでした」


「それは私がこの時代に生まれ変わる前から貴方がこの時代に生まれ変わるのを知っていたからです」


「知ってた?え?前世で僕たちは知り合いだったんですか?」僕の問いに彼女は首を横に振る。


「いえ、そうではなくて。あ、敬語やめて下さい。今は私の方が年上だし、日巫女とトウリなんですけど...。今からはお互いに前世の人格同士ってことで。私、前世じゃずっと年下...って言うか、ぶっちゃけ大人と子どもなんです。なんか気まずいというか、話しにくいというか...」言っても見た目はトウリで子どもなんだけどそういうの気になるものなのか?見た目は子ども頭脳は大人な探偵さんとかにも気を使っちゃうタイプなのかな?


「わかった。ちなみに大人と子どもって、君は僕の知り合いじゃなかった。だけど君は僕がいくつだったかは知っているってこと?」どういうことだ?


「あ、はい。いや、はっきりと何歳って知っているわけじゃなくて、60前後のおじさんって...」

確かに僕が死んだのは59歳だ。


「なぜ知ってるの?」


「えっと...まあ、そのへんのことも卑弥呼のことが絡んでくるんです」


「卑弥呼は今の君なんだろ?」


「そうです。今の卑弥呼は私です」


「今の?」


「前の卑弥呼はまた別で...」


「前の卑弥呼?えっと、それは卑弥呼ってのは世襲制の役職名的なもので、この世界での君のお母さんのことだったり...」


「そういうのとはちょっと違うんです。えっと、何て言うか、卑弥呼って言うのは人間でありシステムなんです。多分...」僕は顔をしかめる。

システム?


「システム...。で、多分というのは?」


「推測なんです。前の卑弥呼の。前の卑弥呼は卑弥呼を6回やってて、繰り返しやっていった中で彼女なりに考えたみたいで。て、言うのも何か決まった法則が...」


…はぁ?


「待って!ちょっと待って。卑弥呼を6回やった?え?なに?君の前の卑弥呼って、卑弥呼から生まれ変わってまた卑弥呼に生まれ変わっていたってこと?」僕の問いに彼女は頷いた。何だかどんどん意味がわからなくなるぞ。

「彼女...前の卑弥呼が言うには。とても良い子だったし、嘘つくような人じゃなかったんだけど、正直私も信じてなかったんです。ただ彼女なりに死んじゃう私を慰めようとそんな作り話をしてくれたのかなって...」


「えっと、その前の卑弥呼...さん?は前世で身近な人間だったの?」


「同級生。仲が良い友達だったんです」


「なるほど...」


卑弥呼は人間でありシステム。先代卑弥呼は卑弥呼を6回やってて、同級生で友達。


OK。もう何を言っているのか全然わからない。


「でもこうして実際に私は卑弥呼と思われる人間に生まれ変わった。そして貴方もこの時代にあの時代の記憶を持ってここにいる。彼女の話、全部本当のことだったんだなって」


「じゃあつまり、君の同級生のお友達が僕のことを君に教えてたってこと?60前後のおじさんがこの時代に生まれ変わって10歳の誕生日に記憶を取り戻すよって」


「半分は正解。うん...と言うか、ぶっちゃけると私と貴方をこの時代に生まれ変わらせたのがその子...前の卑弥呼なんです」


「つまり前の卑弥呼さんにはそんなことができる力?みたいなものがあったってこと?」彼女は頷く。「それは彼女の...何だろ?オリジナルの能力?それとも卑弥呼になった君にも同じことができるってことなのかな?」


「できます。ただ一度この卑弥呼の人生を終えて改めて2008年に生まれ変わってからですけどね」


「2008年?それはどこから出てきたの?」


「あの子、前の卑弥呼が言うには、卑弥呼の人生を終えると必ず2008年に生まれ変わるんだそうです。6度ともそうだったって。ただ生まれ変わり先は決まってないみたいで。同じ人間に生まれ変わることはなかったみたいです。ただ決まって日本人で性別は女で2008年生まれだけは変わらないって」


「2008年なのは何か意味があるんだろうか?」2008年。何かあったっけ?


「彼女の推測なんですけど、その2008年が邪馬台国の存在意義に関係しているんじゃないかって」


「まあ決まって2008年なら何かあるんだろうけど、邪馬台国の存在意義?とは?」


「彼女の話だと2008年は同じなんだけど、生まれ変わる度に世界はいつもちょっと違うって言ってました」

ちょっと違う?


「平行世界?パラレルワールド?...みたいなことなのかな...」


「多分そうじゃないかって。ただ歴史がひっくり返っているみたいな大きな違いはなくて、例えば元号が令和に変わらず平成のままだったり、そもそも平成でも令和でもない元号だったり。総理大臣が違うとか、街並みが違うとか...。私もあの時は話半分で聞いてたし、ちゃんとは覚えてないけどそんな話でした」


確かに違う時間軸の世界なら前世が未来ってのはおかしくはないかも。厳密にはこの世界の未来ではなく、違う時間軸の未来。


「2008年もそうなんですが」彼女が続ける。「邪馬台国も生まれ変わりの度に変わっているし、私も変えたって」


「まあ6度も繰り返したなら、全く同じとはいかないかもしれないし、そりゃ違う選択肢を選びたくもなるだろうからね」


「それもそうなんですが。あの、そもそもが違っていたって」


「そもそも?」


「例えば、私たちの未来では邪馬台国って九州説と近畿説がありましたよね?」


「だね。他にもまた違う説があったり」

そう言えばそうだった。結局正解はどこなんだろ?ここってどの辺りだ?彼女は知っているのかな?


「アレ、両方正解なんです」まさかの解答。


「彼女は6度卑弥呼として生きたけど、邪馬台国の場所はそれぞれ違ったって。確か北部九州地方が2回、近畿地方が3回、四国が1回...」


「四国?」


「はい。四国の時もあったって。九州も近畿もその都度場所は違ったらしいです。ちなみに近畿地方は九州地方よりハードモードだったからアナタは九州だと良いねって言われました」


ハードモード...。


まあ大陸が近いから九州の方が発展はしやすいかも。

しかし...これってまるで...


「ちなみに僕らのいるこの時間軸?のここって...」


「あ、九州っぽいです。私なりに日巫女様権限で地形調査させました。おそらくだけど、どうも私たちの記憶でいう福岡県のウエスト辺りになるんじゃないかな。前回前々回の九州の時は大分と佐賀だったらしいです。佐賀は色々やりやすかったらしいですよ」


ウエスト...。まあ言いたいことはわからなくもないけど。朝倉市辺りかな。


佐賀か。豊臣秀吉も明征伐、朝鮮出兵時の本拠を佐賀に置いたくらいだしね。


「...まあ、とにかくハードモードは回避できたんだ...」


「ですね」


「正直言って良い?感想」


「はい」


「何か、こう。ゲームみたいに感じるんだけど」


「彼女もそんな風に言ってました。でも遊びじゃない。理由があって多分明確な目的があるはず、とも」僕は頷いて肯定した。彼女の言葉が続く。


「そしてきっと、その目的を果たさないとこの卑弥呼システムは終わらないと」


卑弥呼システム。平成生まれの感性かな?昭和生まれの僕の感性ではシステムというか「呪い」だと思う。令和だと「卑弥呼転生。やり直しチートで無双する」?


「ごめんなさい。長くなったわ。寝てないのでしょ?朝ご飯用意させるから、それ食べて今日は休んで下さい」少しだけ静寂があり、日巫女様が一旦終了を宣言した。




「あなたの家族には改めて使者を送ってしばらくこちらに滞在してもらうことをちゃんと伝えます。あ、今から人呼びますから、ちゃんとトウリ君モードで。私も日巫女様モードになるから」


そう彼女は言って、改めて椅子に座ると簾をまた降ろすように言った。僕が重石を外して簾を降ろすと、彼女は小ぶりの鐘を叩く。カーンと高い音が予想以上の大きさで響いた。


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