第37話 第一騎兵隊
第四庁舎の方まで移動していくと、先程逃げるように飛び出した職員と2名の衛士。そして三人の若者がたってのいるのが見えた。確かに真ん中の若者は背丈や体つきが女性っぽい...とかの前に明らかに目が行く両サイド。遠近感が狂う。この時代の平均身長って何センチだ?
ムサシも軍の中で頭一つ出るくらいだったが確か身長は177㎝だったはずだ。軍部では身体検査をするから記録がある。デカイから記録を見てみたことがある。
そこから見た感じ大体男で165cm前後が平均ぽい。
二人共に180cmは超えてるんじゃないか?
衛士と並んでいると大人と子どもだ。
そんな二人が一歩下がって真ん中に立たせている若い娘。155cmくらいか?
只者じゃない。そんなものシンジロウじゃなくても、誰が見ても思う。ナナコだって目を見開いている。
あんな漫画みたいな三人組、どう考えたって只者じゃない。
その只者じゃない三人組と衛士達と職員はこちらに気付いたようだった。衛士達と職員は姿勢を正し頭を下げた。三人組はその場に膝を付き平伏する。
「かまわない。立たれよ」
僕が言うと三人は躊躇なくスッと立ち上がった。威風堂々だな。
「ミミナのケンシンと申します!拝謁の機会をいただきましたこと恐悦至極でございます!」ケンシンは臆することなく名乗りを上げる。
「相国のトウリである。楽にせよ」
「はっ!」
「そこの二人も楽にせよ。名を聞こう」
「はっ!」オールバックの長髪を首の後ろに縛った巨躯な若者が返答する。
「ミミナのヤタロウであります!」
…ヤタロウ?ケンシンの横にヤタロウ?鬼小島?システム。ふざけすぎだろ...。
もう一人の巨漢が続く。
「ミミナのケイジです!」
…ケイジ...。ケイジロウ?トシマス?そりゃ次の代のカゲカツだろ...。あと二十数人いるって言ってたな。なんだ?カネツグとかも出てくるのか?
「軍に志願したいと聞いたが、戦えるか?」
「はい!我らが里はクマソの襲撃によりそれぞれ壊滅致しました。それぞれ近隣の里の生き残りで集まり、山谷に潜伏し獣を狩り、武を鍛え、またクマソが来たならば必ずや雪辱せんと誓い生きてきました。戦う機会を得ぬまま、ヤマタイ国の温情に預かることとなりましたが、戦えばクマソの兵など物の数ではないと自負しております」
ケンシンが答える。本当に威風堂々って言葉が似合う子だなあ。
「なるほど。少し気を悪くさせるかもしれんが、ヤタロウとケイジは誠に見事な巨躯である。腕も立つだろうと見受ける。しかしながらケンシン。君は女の身でありながら如何様にしてこの豪傑達を従えたか?」
何かを言おうとしたヤタロウをケンシンが振り向きもせず片手を上げて遮る。
「ご懸念は仕方なきこと。しかしながら私には二人にも勝るとも劣らぬ武があります。兵を率いれば誰にも負けません」
「左様か。あいわかった。他の者の入場も許す。連れて来るといい」
ケンシン達はパッと明るい表情になった。衛士達に目配せをし連れて行けと促す。
3人は一礼をして駆け出した。衛士達は慌てて一礼をして「待たぬか」とあとを追う。
「何とも見事な丈夫達と娘でしたね」ナナコが言う。僕は頷く。
「確かに只者じゃないって正解だったね」
「三人ともまだ若く、真っ直ぐな者達でした。でも瞳には力強さがある。開戦前に吉兆ではありませんか」
「失礼致します。相国様」
ナナコと話ていると女官が一人駆け寄って来て頭を下げた。
「如何した?」
「はい。ユカ号の荷が到着致しましてございます」
「おお!誠か、すぐに...」あ、ケンシン達が...「後ほど参るが、先に馬を見たい。馬を一頭連れて参れ」
タイミング悪いなケンシン。しかし待望の馬だ。馬だけは見たい。
先に帰って来たのはケンシン一行だった。
総勢26名。男22名、女4名。ケンシンの他にも女がいたか。
もちろんウチの正規軍にも女はいる。ヤマタイ国はこの時代の地球上でも珍しいくらい職にも身分にも性差がない。女官だって決して低い身分じゃない。他の公務員と同列だ。
「軍に入るということは規律に従うことである。皆が一緒とは限られなければ、対する敵がクマソではないこともある。それを納得し、受け入れられるか?」
僕は26名に向かって問う。
一歩前に出ているケンシンが振り向き、全員を見渡す。全員が真っ直ぐにケンシンを見つめ返している。
ケンシンが前を向き直す。
「我ら26名、国のため、この国の民のために軍規に従い、如何なる敵にも如何なる戦場でも死力を尽くします」
ケンシンが抱拳し、頭を下げると、皆が一斉にそれに倣った。兵卒には惜しい人材だ。名に恥じぬ統率力。
「相国様。馬を連れてきましたが、よろしかったでしょうか?」
来た!馬!
「おお!うむ、良い馬だ」
衛士達は近くで見る馬にちょっと腰が引けている。
「これが馬という生き物ですか...」
ケンシンがマジマジと馬を見つめる。
「そうだ。近くで見るといい」
ケンシンは臆することなくスタスタと馬に近寄る。
「何とも綺麗な目をした生き物ですね」
微笑むケンシン。そういう表情を見ると普通の女の子だ。
「乗ってみるか?」
ふと言ってみる。
「よろしいのですか?!」
今日初めての満面の笑顔。
「鐙を取りに行か...」
「ほっ」
ケンシンは躊躇なく裸馬に飛び付くように股がる。マジか...。馬も大人しくケンシンを乗せている。
「おお、以外と高いですな。ほう、ヤタロウの頭のてっぺんを初めて見たぞ」
ケンシン一向は笑う。
衛士達もナナコも馬を連れてきた職員も戦々恐々だ。
「ケンシン。歩かせる自信はあるか?ただし落ちて大ケガしても知らん。どうだ?」
僕の言葉にケンシンはニヤリと笑う。
「ヨシ!行け!」
ケンシンは手のひらで軽く馬の背を叩く。馬は嘶き、ゆっくりと歩き始め、徐々にスピードを上げて、駆け足で辺りを周りだす。やはり名は体を表す世界なんだな。
「相国様。楽しいです!私は馬というものが好きになりました。心が通うように感じます」
「そうか」
僕は25名を見る。ケンシンは騎乗のままその25名の後ろに止まる。
「貴様らを召し抱える。貴様らは今この時より、新設する相国直轄軍「第一騎兵隊」である。隊長をケンシンとし、副長をヤタロウ、ケイジとする。尚、ケンシンを中尉とし、副長の二人を少尉とする」
騎兵隊の誕生だ。




