第35話 大戦艦とトヨマ滅亡
日神暦189年10月30日。
有明海の潮の満ち引きを利用して作られたアリアケ造船所。
早くからヤマタイ国のエリート軍団70名が知恵を出し合い、計算をし、小さな模型から人が乗れる大きさの模型までを何パターンも作り、導き出した答えを元に材料を揃え、内陸で職人公務員や土木公務員、様々な手伝いに他公務員と民の有志達、兵士さえも駆り出して竜骨やリブを組み立て、浮力を得るために板で何本もの竹を挟み、人力と車輪で骨組みを運び、4年の歳月をかけて建造された二隻の巨大船。携わった人間は3000人。
昔...いや未来か、中国に鄭和の宝船というのがあったらしい。全長120mは誇張だろうけど、決して引けを取らない船だと思う。名前忘れたけどスペインの無敵艦隊の旗艦くらいには大きい。
1500年近い時代を超えたオーバーテクノロジー。
3ヶ月間、訓練を兼ねて東シナ海を幾度と航行した。問題はない。
乗務員は完成前から決めていた。完成前から地上で訓練をつんだ。
船を動かすだけでも一隻最低でも30人は必要だ。帆船ではあるが、人力も併用でき、巨大なオールが左右に三本。テコの原理と歯車を応用し、1本辺り二人でも漕げる。スピードを上げようと思えば人数を増やせば良い。
マナ号は完全に軍艦仕様甲板。前方に2基の巨大バリスタを設置。しかも180度回転する。その後ろには投石器。天秤の両方を皿にしているから、左右どちらにも発射可能。三層の高楼を持ち、兵員は300人乗れる。
ユカ号は交易仕様。船内に土を持ち込み、動物輸送用の設備をもつ。武装はバリスタ1基。空っぽの状態で500人は乗れる。窮屈だけど。マナ号より軽いので最大船速はマナ号よりも速い。天候が良ければ中国の山東半島まで片道7~10日で行ける。
朝鮮半島なら2~3日だ。
この船が世に出て研究されれば間違いなく大航海時代は1000年早くなる。
色々開発してきたが「これぞ未来人のチート」みたいなものを作ったのはこれが初めてであり、もうこれ以上は多分ない。
いや、僕の「あんなこといいな、できたらいいな」を、マナ世代なら「いつまでも輝く夢」を叶えてくれたこの時代の人間達が偉大なんだ。
そんな21世紀と弥生時代のコラボレーション最高傑作2隻が中国へと出航した。
まあ、マナ号はすぐに引き返してくるけど。練習と近海までの護衛だ。
自前の鉄はもうすぐ底を付く。トキ国の侵攻も近い。頼むぞユカ号。
翌月、11月6日。トヨマ国降伏。その7日後、ウサ国がトキ国に合併された。
九州の北部はトキ国の勢力下となった。
早ければ年末。いや、おそらくは正月に動きがあるのではないだろうか。
僕は軍部、内政部、外交部の課長職以上を招集した。いよいよ開戦前夜の空気だ。
会議にはマナも参加した。さすがのマナも緊張感がある。
「開戦時期については正月が明けが濃厚だが、クマソ国が先に動くかもしれない」
僕が発言する。トキ国は日巫女効果がある限り、奇襲はないかと思う。偽者を立てるなりして、日巫女を貶めてからだ。来る前に大きな動きがあるだろう。
問題はクマソ国。アイツらには日巫女効果が薄い。一応日神信仰らしいが、日巫女を認めてはいない。日食のハッタリ時もいなかった。遠慮がない。
「防衛に関していかがなっておる?」マナが軍部に問う。
「はっ。現在トキ国と接する北部に第1師団と第4師団が展開中。計6戦団でそれぞれに防衛陣地を構築。西部は第3師団と第5師団が同じく展開中です。南部はクマモトに第2師団、ミヤザキに第6師団が展開しています」軍部部長がテーブルの上の地図を棒で指しながら説明する。地図といっても簡易な手作りだ。
「旧ウサ国方面はいかがか?」
マナが棒でウサ国方面を指す。
「はい。険しい山岳地帯なので急襲はないかと。故に衛士隊200名を麓に配置し、高所に30名の見張りを置いてます」
軍部部長がすぐに答える。
「ふむ。相国よ、いかがか?」
マナが僕に確認する。一同が僕を見る。
「現状では最善かと。ただ相手はかなりの軍略家と見ています。ウサ方面も努々警戒を怠らないように」
「はっ」
「外交部。ユカ号は間もなくか?」
マナが外交部に問う。外交部長は女性だ。ユカ号は外交部が管理担当部署になった。
「はい。予定ではこの数日の内に寄港するかと。いかんせん海上ゆえ御容赦くださいませ。アリアケ港には300の人員を既に配置しています。寄港次第すぐに内陸へと輸送できる手配です」
馬、いるかな?馬が数いれば来年3月までには騎兵を導入し参戦させたい。
「内政部。国民の状況はいかがか?」
マナが内政部に問う。
「はっ。戦時下宣言を年始めにはしていたので混乱はありません。ただやはり若干の緊張感は広がっています。特にクマモト、ミヤザキ方面はようやく暮らし向きが良くなったところですから、不安の色はあります。ただ各地の役所で志願兵に関する問い合わせが多いです。いかが取り扱うべきかと」
「ふむ。相国?」
「はい。まずはクマモト郡ミヤザキ郡には山間、山上に避難地を作っていることを周知し、役所職員達も避難道の再確認を。最終的にはヤマト郡への疎開も受け入れましょう。まあ、そこまで侵攻させる気はありませんがね。志願兵に関しては収穫に影響が出ないよう、出仕しても家族に男手が2人以上必ず残る者で健康な男性のみを可とし、一度ヤマト郡の第一兵舎に集めましょう。基本的には後方支援。戦況に合わせて配属します」
マナは大きく頷き、皆に言う。
「各々。ヤマタイ国建国よりの非常事態と相成った。皆を始め全ての民に負担を強いること妾の不徳である。しかしながら妾はこの国に生きるもの達の強さと頼もしさを知っている。困難に打ち勝ってきた皆の姿を知っている。日神様の加護がある。我々は必ずや乗り越えん。皆の者頼む」
「は!」
「では相国。あとを頼みます。妾は祈祷所に向かうゆえ、後ほど参れ」




