第32話 倭国大乱再び
「では進言致します」僕は身を起こしマナを見る。あ、すっげー嫌そうな顔してる。
「いや、流れとか空気とかわかるんですけど~。今は二人っきりなんで普通に話してくれます?何かキモい」キモい...。
「じゃあ。まず統一プロジェクトは一旦止める。まずは新しく領土になった三郡を急ピッチでヤマトにすることに専念しよう。富国強兵だ。戸籍制度、職業斡旋、貨幣経済を1年かけて根付かせる。人口も一気に増えたから兵力も増強して、武器生産も強化。次の倭国大乱に備えよう」
一度休戦協定が崩れた。必ず荒れる。
「うん。許可」
「もちろん日神様効果があっても油断できない。僕は、たぶんだけど、少なくともトキ国とクマソ国にはかなりキレる軍略家がいると思う。ソイツらが、やれば必ず勝てると踏んだら新しい日巫女をでっち上げたりしかねない。僕ならやる。日食から時が経つにつれ恐怖も和らぐし、何よりまた戦争始まったけど日食起きないじゃんと言い出す。僕ならそう拡散して民を扇動する」
「ありそうですね。私のパチモノ。でもそんなに警戒するような人が向こうにいるかもなんですね?もしかして未来の記憶持ちだったりして」
「それはないかな。いや、そうじゃないから強いんだと思うよ。確かに僕らの記憶は新しい制度や文化、武器を生み出した。確かに強みだ。でも軍略的なことや政治的な駆け引きは、未来人より現地人の方がやはり上だと思う。現実として生でこの時代を生きてきた人たちだ。肌感でこの時代を知ってる。教科書や資料で知ってるつもりじゃ渡り合えないよ。前世の知識で無双しますなんて創作でしかない。現地人をナメ過ぎだ。現に僕らがクロスボウって言ったら、すでにこの時代の人達の力だけで僕らが想定していたクロスボウよりも遥かに強力な物を開発したんだ」
「確かに。ナナコちゃんなんてすでに私より数学できるもんね。ムサシ君なんて拳銃持ってても勝てる気しないし。え?人間ってそんな動きできるの?!だよね。むしろ転生してない方がチートキャラ」
「特にトキ国は、僕の扇動作戦を完全に利用してソウマ国を簡単に占領した。明らかに僕の作戦の意図を読み、対策するどころか自分の策を上乗せして利用している。そして大陸への入口を完全に抑えた。大陸からの資源を独占できて、僕らに流れないようにもできる。初手ですでにその後に来る大乱で有利になる手だ」
「だとしたら凄いですね。引き抜けないかなあ」
「下手に調略なんて仕掛けたら、逆にまた逆手に取られかねないね」
「わかった。とにかく富国強兵ね。クマソとトキを最大限警戒して。シンゲン大佐の第一兵団をトキ国境近くに幾らか配備させましょう。カズマサ大佐の第二兵団はクマソ側ね」
「衛兵隊も増強しよう。各市町村で定期的に職質させるんだ。他国の工作員対策にね。戸籍にない人間は即逮捕。各市町村にも高札を立てよう。知らない人がいたら通報するようにと」
「わかった。任せます。あとは?」
「予定より早いけど材料は揃えてるし下準備はできているから、急ぎ有明海で二隻の巨大船を完成させる。一隻は完全に戦艦仕様にしよう。もう一隻は交易船として完成次第大陸に出す。贋金大量にばら撒いて鉄器に馬や牛、手に入れば羊や山羊も欲しいな、そういうのを大量に運び込む。黄巾党の残党が山ほどいるはずだからね。彼らの中には乱中に田畑を失って、なし崩しでやっている人が大多数だ。彼らの武器を大金はたいて買い取る。溶かして再利用だ」
多少だが金銀の蓄えもある。それを放出してもいい。
「クイーンマナとクイーンユカがついに完成ね!あ、軍艦の方をマナにしてね。大戦艦マナ」
マナとユカはもう決まりなんだ...。
「マナ号、沈められたらどうするの?」
「沈まない船を作って沈められないくらいみんなで必死に戦って下さい」
まあ、とにかく。
「相国として日巫女様に。日神暦188年10月21日。本日より我が国は戦時下に入ることを報告致します」
「あい、わかった。日巫女の名において本日より我が国は戦時下にあると宣言する。相国にあっては必勝をもってコレを収め、日神様と我が威光を世に示すよう」
倭国大乱再びだ。今度はハッタリはできない。
まあ、すぐに戦端が開かれることはないだろうけど。
でももう戦時下として緊張感を持って国中が動かないといけない時だ。
ヤマト、トヨマ、ウサ、トキ、クマソ。九州戦国時代。




