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Starting Over in邪馬台国 ~卑弥呼システム~  作者: 暇人と黒猫


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第30話 信仰心と軍事衝突

特命課の扇動が始まった。まずは「キノク国」に30人放つ。

しばらくして内10人を「ソウマ国」に移動させ、10人を「ヒムカ国」に移動させる。

「キノク国」である程度の目処が立てば5人ずつ「ソウマ国」「ヒムカ国」におくる。


指示と報告は全て手紙とする。万が一に紛失しようが盗られようが、ヤマトの人間しか読めない。

まずは「キノク国」を徹底的にやる。他二国は前準備と隣国にも同じような話があるという状況作りだ。


日神暦188年7月。年内には「キノク国」は落としたい...と考えていた時期が俺にもありました...。


思っていた以上に「キノク国」は限界だったのだろう。わずかひと月で民衆が蜂起した。驚いた。数千の民が王宮を囲った。王宮の守備兵力は350程度。しかも交代制の徴集兵。守るわけがない。

王宮は陥落。王は討たれた。

民衆の代表数名がヤマトにかけこんで、それを発見した巡回中の衛兵が保護。御殿場に連絡。もちろん先に情報がきていたので準備万端。混乱の収拾を大義に兵200と役人30名を派遣。食料を配給。

などとやっていたらソウマ国とヒムカ国にも飛び火。両国の各地で「日神様の神兵」と嘯き、立ち上がる民衆が出没。倭国版黄巾の乱だ。

想定外の展開。どんだけクソ統治したたんだよ?

しかもタチが悪いのが「日神様の御心は日巫女様の下に」と唱えながら進撃しているという事実だ。一向一揆の「南無弥陀仏」や黄巾党の「中天甲乙」みたいなものに「日巫女」の名が入っている。

正直宗教を甘く見ていた。考えたら一向一揆勢はあの織田信長や徳川家康をもってしても苦労させられたのだ。


ひとまず特命課は撤収させた。簡単にキノク国が落ちたのは嬉しい誤算だったが、ソウマ国、ヒムカ国の混乱が早すぎるのは、大誤算過ぎた。ヒムカ国はある程度飛び火はする予定だったが、ソウマ国はそこまで貧しい国ではない。キノク国を統治し、ある程度安定させた後にヒムカ国へ本格的に手を出すつもりだった。ソウマ国はその後だ。

しかし民衆が貧困だけでなく、信仰心でこんなに煽られてしまうとは。完全に僕の認識の甘さだ。

認めたくないものだな。自分自身の認識の甘さゆえの過ちというものは...。


ヒムカ国は早々に民衆に降伏した。隣の王が殺されたのだ。決断が早い。ヤマトに泣きついてきたから、とりあえず王の身は御殿場で保護した。ヒムカ国にも兵200人と役人30人を送り込む。

展開が早すぎて手が回らない。これ以上は治安維持の兵力が足りない。なんせキノク国もヒムカ国もクマソと領土を接している。ある程度国境に兵を展開させないと混乱に乗じて一気に攻めてきかねない。

まだ秘匿しておきたかった「連弩」「バリスタ」「投石機」を已む無く送り込む。


秘匿しておきたかったな。万が一クマソにわたって研究されたら自分達に向かって飛んでくる。


数年前から開発していた新兵器。同時代の中国やローマにあるのだからもちろんヤマトでも「知ってれば」作れる。弩に至ってはさらに古い時代である秦の始皇帝の大陸統一を支えた立役者だ。

マナの「何で日本ってクロスボウ使わなかったの?」から始まった兵器開発。

諸説あるみたいだが、本当に何でだろう?日本では使い勝手が悪いとか集団戦がとか色々言われていたが、実際「でも有っても悪くはないし、有用」には違いない。

特にヤマトの開発陣はみんな算術に精通している。四則演算必修化からもう勝手に「数学」の領域にまで足を踏み入れた連中だ。分野によっては僕もマナもすでに敵わない。単純なクロスボウから連弩、滑車から歯車まで利用したバリスタやロングボウまで開発している。バリスタやロングボウは構造上量産化はまだだけど。

元々日本人は器用で勤勉だ。わずか2丁の火縄銃の伝来から、数年で国産化し、しかも改良までし、量産化して運用方法さえ独自に発達させた民族だ。黒船見てビビってたくせにすぐに自国で蒸気船だアームストロング砲だと自作し、小型蒸気機関車を城の庭で走らせちゃう民族だ。新しい技術の吸収力と応用力が何故か日本人は特化している。ウチの国民はその祖先たちだ。


ちなみにヤマトには俗にいう「木牛、流馬」もある。これは実際どんなものだったのか一応不明だが、たぶん「リヤカー」だ。ちなみに木牛流馬と名付けてはいない。まんま台車と呼んでいる。工事現場で見るような一輪台車と昭和の廃品回収で見た二輪の台車だ。木製タイヤで傷みやすいが、規格を統一して生産しているので、タイヤ交換も容易い。軍事だけでなく普通に民間で当たり前に使われていたりする。

ヤマトでは車輪がすでにあった。マナが「馬車が欲しい」と作らせた。結局馬が揃ってないことと道が整備されていないことで馬車自体は企画倒れしたが。


小規模ながらやはりクマソ国が動いた。こちらは前もって防衛ラインを定め、特に侵攻が予想される場所には簡単な竹の柵を立てて、浅めだが塹壕まで掘っている。兵力が少ないので20人一部隊とし、キノク、ヒムカの防衛ラインに合わせて8部隊を展開させておいた。キノク側に100程の兵団が三か所、計3兵団入って来たが、一番近くの一部隊で各個殲滅してやった。盾を構えて亀と化し、相手の弓攻撃をしのいで、接近させて強弩の一斉射撃。近距離なら薄い鉄製の鎧なんて紙に等しい。相手としても「矢は上から降ってくるもの」という常識がある中、水平に点となって矢が高速で飛んでくるのだから、死んだ兵は自分が何故死んだかもわからないだろう。

しかもこちらはプロの軍人だ。多勢に無勢で慌てたりしない。むやみに強弩を打ちまくったりもしない。隊長の合図で一斉に一発。前衛が倒れたのを見計らって一斉に二発目。無駄矢は使わない。足が止まったところに短槍を一斉に投擲。間髪入れずに抜刀突撃。一人も逃がさずに全滅させた。これは大きい。情報を持ち帰らせない。

こちらは被害ゼロ。負傷者すらいない。武器を持った素人100人程度、さらに上を行く装備を持ったプロの20人なら容易い戦果だ。

おかげでクマソは大人しくなった。混乱状態の隣国に300の兵を出したら一人も帰ってこないのだからね。賢いものなら慎重になる。やはり良くも悪くもクマソはちゃんと考えている。もちろんこちらも警戒は緩めない。






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