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Starting Over in邪馬台国 ~卑弥呼システム~  作者: 暇人と黒猫


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第26話 姓の誕生

日神暦188年3月。


ヤマトの改革は期待以上の成果を見せていた。マナと僕の力なんてきっかけだけで大した役にはたってない

何と言ってもこの時代の人間達の凄さだ。

勤勉で熱心で辛抱強くて、彼らは僕らの描いた絵を試行錯誤しながらもどんどん立体にしていった。

改名騒ぎもあった。力技を使ったせいと言うか、おかげと言うか。

なので未だに僕もマナも時折「名の神託」を祈祷所で祈る日がある。まあ要するに名前を考える日だ。たぶんいくつもかぶってしまっている名前もある。数が多くて僕ら自身も最早把握しきれていない。


名付けはくじ方式にした。僕とマナが書き出していく名前を女官達の協力で小さな板に書き写しそれを箱に入れていく。それを各「市役所」に設置し、希望者が来ればそれを引かせてて、名前とした。名前の数に限りがあるから同名になるが、同じ内容の箱を別の市役所に設置する。同名であるが地域が離れていればそんなに害はないだろうと言う苦肉の措置だ。


しかしこの措置で副産物があった。

「姓」が誕生したのだ。例えばアチコチの市で「タロウ」が現れる。ヤマトを東西南北中に分割し、市をさらに東西南北中に分割する。

北の市の東側に属する村の「タロウ」なら「北の東のタロウ」で「キト タロウ」になる。同じように「キホ「北北」」「キナ」「キニ」ができる。つまりこの国の「姓」は家を表すのではなく、「出身地」を表すものとなった。だから同じ旧集落の人間は皆が同じ「姓」になる。そのため普通は「相手を姓で呼ぶこと」はない。言わば自己紹介時に使うものになった。これは当初自然発生したのだから驚きだった。

しかも「姓の名乗り方も日本史と偶然にかぶった」のだ。

この現象は御殿場内から始まった。

宮仕えの人間も名を欲しがったから「名付け箱」を御殿場にも設置した。そんな中で「同名」が現れる。僕もマナも思い付く限り名前を書き出したから、一度書いた名前なんかも後になって何度か書いてしまっていたりを普通にしてしまっている。かなりの数の中からでも同じ名を引いてしまう人間が出てくるものだ。

例えば「ハナコ」が二人現れる。職場が同じだからお互いに顔を合わせる。同僚達も同名がいて困る。「ハナコを呼んできて。あ、そっちじゃないハナコ」になってしまう。そこで「ハナコ」達は各自出身地で自主的に「北の市の南の町の出身のハナコ」と「西の市の西の村の出身のハナコ」を名乗る。長い。不便だ。

それでいつの間にか略されていき、「キノナノハナコ」「ニノサノハナコ」になる。

で、最終的に「キナ ハナコ」と「ニサ ハナコ」になった。で、自己紹介の際には「キナのハナコです」「ニサのハナコです」になった。

これが大流行してしまう。名前が同じじゃなくても皆が使い始めた。

「ヒトのナオキ」「ミサのカオリ」みたいに名乗り始めたのだ。


ちなみに僕のいた集落は「中心地の西」に位置するから「中市西村」が住所になり、そこの村民の姓は「ナサ」になる。遥か未来でロケットを飛ばしそうな一族だな。

ちなみに御殿場や周囲の天領生まれの人は「ナチ姓」を名乗る。なかのちゅうだ。

なぜか最初の市を表す字は訓読みで後の町村を表す字は音読みの法則になっている。

そもそも最初の同名の一人が漢字の勉強をしていたと言う奇跡が生んだ産物だ。


「平清盛」を「タイラのキヨモリ」と読んでいるのもこんな感じからなのかな?「キヨモリです。あ、タイラ家のです」みたいな。


ちなみに僕は「ナサのトウリ」になる。まあそれ以前に相国だからあまり使うことはない。相国のトウリと名乗る。

そしてマナは相変わらず無名だ。彼女はどこの誰でもなく「日巫女」だ。


なにはともあれ、この大流行は「出身地もわかって便利」となり、戸籍制度で活用された。

しかしこの先、八国の統一が控えているんだが、それはそれでまた姓だの名だの考えなければならない。ため息が出る。最近じゃマナは手伝わないし。おかげで女子は名前がかぶりまくりだ。


それと、この改名騒ぎでもうひとつ偶発的な不思議が起きた。偶発的なのかな?

名は体を表すと言うのか、あるいは言霊なのか、もしかするとシステムのいたずらなのかもしれない。名前に関してちょっと奇妙な現象がある。


例を挙げると、この御殿場内の名前箱を引いた衛士の若者が授かった名前は「ムサシ」だが、実は彼は衛士の中でもすば抜けて剣の腕が立つことで元々有名な衛士だ。国内最強と思われる剣士が「ムサシ」の名を引いた。出来過ぎだろ、と思う。

さらには衛士隊の隊長が改名したのだが、彼が引いた名前が「シンゲン」だ。もう悪意に近いものさえ感じるのだが。

もちろん中には「タカシ」とか「ケンジ」とかの名前もある。ムサシだシンゲンだとかはいよいよネタがなくなり、歴史上の人物の名前まで使い出して入れたものだ。そこをたまたま彷彿とさせる人物が引き当てる。

やはりシステムの干渉くさい。


女性の名前にも悪意を感じるものがある。例えば「ミクナ」だ。

相国就任からずっと僕の専属女官の彼女も改名をした。で、「ナナコ」になった。

何が悪意かと言えば、実は「ナナコ」は僕の前世の妻の名前だ。

僕の身の回りの世話をする女官が前世の妻の名前を引く。やはりいよいよシステムの干渉くさい。


まあ、しかしだ。人材登用の際に名前が参考になるかもしれないとは思う。悪意より善意?日神様の思し召し?

実はちょっとマナの、日神様が卑弥呼システムの黒幕説を僕も少し考えている。突拍子もないことだが、卑弥呼システム自体が突拍子もないものなのだから。


ちなみにだが、名前箱に入ってない名前が二つある。「マナ」と「ユカ」だ。この二つはマナの希望で外している。まあ個人的な思い入れもあるだろうし、紛らわしいというのもある。


僕の前世の名前も実は入っていない。入れる必要がない名前だからだ。昭和生まれにしては珍しい名前。同世代に同名の人間がいた試しがない。

ただ平成生まれからは同じ名が増えた。それでもまだ珍しい方だろうな。


卑弥呼システムの悪意...ねぇ。


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