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Starting Over in邪馬台国 ~卑弥呼システム~  作者: 暇人と黒猫


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第24話 文字

西暦1939年


「扶余の神宮造営工事で朝鮮半島の古代遺跡らしき発見があってね。僕も採掘調査隊に選ばれたんだ」

お兄ちゃんはしばらくの間、海の向こう、朝鮮半島に行くらしい。少し淋しいけど、お兄ちゃん本人は嬉しそうだ。

「朝鮮にも古の国があったんだね?」


「もちろん。百済という国があったんだ。半島は中国と陸続きだからね、中国文化の影響は日本よりもずっと古くて深いんだよ。彼らは日本よりも早く国家を形成していたんだ」

お兄ちゃんはそう言うと、急に黙り込んでしまった。何だか悲しそうな目をしている。


「お兄ちゃん?」

私は心配になって声をかける。

「お国はね、そういうのは求めてないんだ。朝鮮半島は元々から日本だった。本土と半島に日本人が分かれて暮らしていたんだって言いたいんだよ」

私は慌てて辺りを見渡した。誰かに聞かれたらお兄ちゃんは捕まってしまう。

そんな私に構うことなくお兄ちゃんは続ける。

「発掘調査は楽しいよ。ロマンだ。でもね、ヒナ。何が見つかってもそれはかつて日本が朝鮮半島に深く関与していた証だという穴だらけの偏った学術論文で発表されてしまうんだ。そしてプロパガンダに使われてしまう」

私は黙って聞くしかなかった。止めないといけないのかもしれなかったが、お兄ちゃんは自分の大切な世界を踏みにじられて悲しんでいる。その気持ちを否定することは私は出来なかった。

「本土ではなかなか発掘調査の許可が降りないんだ。目の前に古墳らしき丘が有っても掘っちゃいけない。僕らが掘れるのは本土外の大陸だけ。笑うよ。国は僕ら考古学者を利用しながらも怖がっている。朝鮮半島は古から日本の同祖だと言ってて、本土は駄目なのに朝鮮半島は掘らせる。本当はわかっているからだ。日本と朝鮮は別々の文化圏だってね。だから困るような物が出てくるわけがないことを」


「出てくると困る物?」

何だろう?


「文字だ」


「文字?何でそれが困るの?」


「この日本は神がお造りになった地で、その子孫たる皇室の御一族により統治されてきた。神国だ。もし、発掘調査で文字が見つかって、それを解読した時に『そうじゃない国家の成り立ち』が書かれていたら大変なことになる。古代史としては大発見だが、国はそんなものが出てきてしまったら困る。そんなもの見つけてしまったら、僕らはきっと消されてしまうだろうな」


文字。残してはいけない歴史。


「幸い弥生時代以前の遺跡はまだ本土でも発掘調査ができている。あの時代は文字がなかったから。でももし、何らかの文字が発見されたなら、もう発掘調査は許可されないだろうね。だからそんなものは発見されない方が良いのかもしれないな」


もしも弥生時代の遺跡から文字が出てきてしまったら、お兄ちゃんはもうロマンを無くしてしまう。


お兄ちゃんが笑った。

「でもさ、ヒナ。僕の心は矛盾しているよ。そんなものが見つかったら考古学はこの国から追い出されてしまうのに、でも僕はそれを見つけてみたいんだ。弥生時代に文字があって、そこには古の国の秘密が書いてある。僕はそれをいつか見つけたい」


「駄目だよ。お兄ちゃんがそんなもの見つけてしまったら、お兄ちゃんは消されてしまうんでしょ?私はそんなものお兄ちゃんに見つけて欲しくないよ」


「誰も知ってはいけない地下深くに眠る古の国。それを見つけて、その歴史と一緒に消されてしまう。それもロマンかもな」


誰も見つけられない国。誰も知らない国。


誰も見つけてはいけない国。誰にも知られてはいけない国。


私と彼だけの国。




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