第18話 文化レベルと影響力の向上
「184年ですか?へー。凄い!カレンダー作れそうです」
「いや、日付がわからないからね」
「そっか。じゃあ私の誕生日を1月1日にしましょう。季節的にもそんなにズレはないんじゃないかなって」
「日本だけ西暦がズレるだろ」
「だから、そういう細かいことを気にしたら負けですって。ユカも絶対そういうの気にしたんだろうなあ。どうせ下手したら消えちゃう歴史だし、そもそも私たちがいた時間軸とは違う世界線なんだし、私らが便利だったら良いんですよ。よし、決めた。たぶんもうすぐ1年経過のお知らせくるからその時に発表しよう。今日から日神暦185年です!って。あ、1年は365日ね」
閏年...いや、細かいことで終わるな。もしかしたらシステムのお知らせはその辺も考慮されてるのかも。
「日神暦」
「そうです。日神様が誕生して185年ってことにしときましょう」
キリスト「...解せぬ」だろうなソレ。
まあでも正直確かに西暦は助かる。僕らの歴史知識は西暦だから。少なくとも三國志絡みの出来事がある程度わかるのは大きい気がする。
4年とちょっとで献帝が即位して董卓が実権を把握か。あまり関わりたくないな。
「よし!カレンダーができた。トウリ君と合流して早速ひとつ改革です。あとは何をしましょうか?」
「とりあえず最初の目標はこの御殿場の文化レベルをヤマト国全体に広げることじゃないかな。各出張所に派遣している人達、増員してもいいね、彼らを使って文字の普及。集落の代表何人かに教えて、その代表達が集落で教える。四則演算もだね。平仮名片仮名、四則演算を国民の必須にしちゃおう」
現在のマナが公務員と呼ぶ人達の数。
日巫女世話係の女官700人。男性従者(調理や力仕事担当らしい)が100人。
常勤の衛士(近衛兵になるかな)300人。
政務(貢ぎ物の管理や集落の長の相手。各出張所に配属)が400人。女官を回してもいい。彼女たちはこの時代のスーパーエリートだ。
「学校作るんですか?」
「それはまた追々。今は皆労働力だからね。集落じゃまだ日が高いうちに仕事終わって自由時間だから、その時間を少し分けてもらえばいいよ。平仮名片仮名四則演算ならそれで十分浸透する。後は国民の生活向上だ。水車に井戸掘り技術、滑車にトイレ。これも広めよう」
要は上下水道改革だ。
井戸掘りは鳥の羽を使って当たりをつける。コレはマナも知っていた。今の集落では水は川から汲んでいる。水車や井戸があればグンと効率があがる。効率があがれば時間ができる。他のことに使える時間。
さらに暴君マナは自分たちだけすでにろ過したキレイな水を使っている。飲料と料理に限りだが、大きな水槽を粘土で作り、貯まった雨水や水車で取り込んだ水をその下のろ過装置を通して使う。しかも簡易的な蛇口を使っている。まあドアノブ作らせたくらいだし、原理的には蛇口に応用できただろうね。
これが各集落に伝われば衛生面も向上するだろう。
そして下水。マナの祈祷所トイレ、通称「弥生式便器」は見た目だけでなく仕組みも斬新だ。あのトイレ、下まで管が繋がっている。土器製だ。しかも取り外し可能で定期的に清掃させているらしい。
その管が下の蓋付きの側溝に繋がっていて、最終的に御殿場内の全ての汚物がこの小高い丘の下に作った巨大汚物層に集まるらしい。御殿場には下水管があるのだ。
さらには集まった汚物汚水には収穫後の藁を投げ込む。時折かき混ぜることで発酵させ、それを肥料として御殿場周りの日巫女の天領畑に使うという。
ちなみに天領田や畑に従事する人達が別に100人くらいいるらしい。
日巫女様、なんだかんだやり過ぎ感あるくらいの過保護だ。神様の使いなだけある。
ちなみに僕の集落は中規模だが、総人口70人そこらだから、日巫女領の御殿場が破格だとわかる。そもそも敷地だけで僕の集落より広い。天領田やらを足したら2008年の数字で言えば400ヘクタール程度か。朝倉市の⅙近くだ。
まあとにかくこの時代じゃ有り得ない良質な肥料まである。生産性向上だ。
識字率が100%近くなり、上下水道がある程度整備されたらそれだけでかなりの文明開化になる。
それをまずヤマト国だけでする。
敢えて地方と格差を生じさせる。それも出来る限り絶対的な差をだ。
明らかに日巫女のクニだけが急激に豊かに
なれば今よりもっと他のクニの王達への神秘性と影響力が高まる。そして同時に「そのタイミングで突如現れたまだ子どもの側近である僕」の神秘性と影響力もだ。
マナと違い「勾玉」なんて持ってないし、マナが紹介したところで国内ならまだしも近年まで争っていた王達がポッと出のガキを心から敬うとは思えない。発展の妨げになる。
まずは最初の一手だ。




