第14話 先代卑弥呼の想い
西暦2040年。
「最近ちょっと顔出せてなくてごめんね。アナタも大変だろうけどさ、私だってわりと頑張ってるわけさ」
マナをあの時代?世界?に送り出して15年。世界線は違うのだろうけど、時間の流れは同じなのかな?ま、世界線は違えど同じ地球だったはずだからそこは同じだったんじゃないかな。
「15年かあ。さすがに名もなきオッサンはもう合流してるかな?アンタは一体どんな卑弥呼やってるんだろうね」
墓参りなんてしたところで、当の本人は今頃違う世界線の弥生時代だ。意味なんてないんだろうけど、なんだかんだとちょこちょこ来てしまう。
なんだかね、アナタのお墓が違う世界線の私達を繋ぐ媒体になるんじゃないかなって思ってさ。
「一方通行でも良いから私の声が届くと良いんだけどねぇ」
それはたぶんない。さすがに6回も7回も人生送ってて誰も墓参りに来なかったなんてことはないだろうけど、アッチの私にはそんなの何も感じなかったから。
「あの後も、今でもずっと後悔してる部分があるわけさ。本当にマナに押し付けて良かったのか?私が続けた方がシステムの謎が解けたんじゃないか?送り出すならもっと色々教えておくべきじゃなかったのか、見ず知らずのオッサンなんかを一緒に飛ばして果たして良かったのか...」
卑弥呼システムから私は解放された。今世を終えると、どうなるのかは知らないが、少なくとももう卑弥呼になることはない。
どこかでずっと私が望んでたことだ。
でも。
「笑うよねぇ。結局私は卑弥呼システムに囚われたままだよ」自嘲。
私は考古学者になった。大学で教鞭をとりながら研究やフィールドワークで今も邪馬台国を追っている。
「私、捏造疑われるくらい遺跡発見しちゃってるからね。ホント自作自演じゃないかってコソコソ探られているわ。まあでも確かに自作自演なんだけどね。1800年くらい前に自分が築いた国を掘り起こしているんだから」墓石の前でひとり笑う。
「めっちゃ壮大な自作自演よ」
もちろん考古学者として名を上げたくてやってるんじゃない。私は私で卑弥呼システムの謎を追っている。マナはマナであの子のことだからきっと「卑弥呼システム、私が終わらせる!」とかやってるだろう。あの子、ちょっと破天荒というか、突拍子もないこと言いだしたりやり出したりするとこあったから。ちょっと空気読めないとこあったり。周りを無邪気に振り回すタイプだもん。まあだからこそあの子といるのが楽しかったのよね。
「オッサン。大変だろうな。絶対振り回されてるわ、あのオッサン」
勝手に飛ばしてしまったオジサン。どんな人なんだろう?いい人だったらいいんだけどな。
「でもさ、意外と私よりマナの方が向いてるかもね、卑弥呼。どこまでもマイペースで、そのマイペースが全力疾走で。ハハハ、なんかアナタの作る邪馬台国、とんでもないことになりそう」
私は卑弥呼システムに囚われ過ぎていたのかもしれない。呑まれてたんだと思う。
あの子ならそんなことにはならないかもしれない。
「マナなら逆に卑弥呼システム呑み込んじゃいそうね。あ~あ、せっかく掘るならアナタの作った邪馬台国遺跡掘りたかったな。なんかとんでもないもの出てきそう。もうオーパーツだらけ?何に使うか意味不明なものとかゴロゴロ出てきたり。私さ、自分で作った邪馬台国掘ってて、やっぱちょっとお行儀良いなって思っちゃったんだよね。面白味がないわけさ。あの頃は必死に足掻いてたもん、システムに。もっと遊び心が必要だったなって。だからさ、マナを卑弥呼にしたこと、今も色々考えちゃうけどさ、でもマナだから良かったって思える部分があって、それで救われてる。だからマナ。アナタはアナタの思うようにアナタの卑弥呼と邪馬台国を作ってね。私もコッチで私なりにやるからさ」
そして2008年って言うキーワード。
「私さ、今まで卑弥呼に囚われ過ぎてたから蔑ろにしてたんだけど、もしかしたら卑弥呼システムの鍵ってコッチに有るのかもって考えてる。決まって2008年に生まれてくるこちら側。色々調べてみたけど2008年にそれらしいキーワードはまだ見つかってないけど。私はコッチからアプローチかけてみる。ソッチからマナが、コッチから私が。ユカ&マナは健在よ」
私は立ち上がって墓石を見つめる。
「見つからないのよねぇ...『私のお墓』」
私は卑弥呼の墓を探している。私の前世の墓だ。そこに何かが有るのかもしれない。
「こればかりは私が死んだ後に作られたものだもんねぇ。自作自演ってわけにはいかないわ。遺言でもしときゃ良かったわ、私の死後はあそこに埋めなさいって」
私は墓石に手を合わせる。
「さて、そろそろ行くわ。またコッチの近くに来たら寄るから、頑張ってね」
振り返りその場から立ち去り、駐車場に止めてあった車に乗り込んでエンジンをかける。
「あの子...邪馬台国で世界征服だ!とか言ってたりして」
ハンドルを切り駐車場を抜けて霊園の道を下る。
「さすがにそこまで残念な子じゃないわ」
運転しながらひとりクスクスと笑った。
わかってる。さすがにそこまで残念な子じゃない。ただそんなこと言ってたら面白いなって。




