32・領主とタカムラくん(その3)
領主は苦労して、船といかだでタカムラくんを本土に運び、前もって領地から用意しておいた大型業務用自動車でこっそり、自分の領地まで輸送した。
連れていったというより、輸送したのほうがただしい表現だろう。
ただし、鎖で縛りつけたりはしなかった。
タカムラくんは特に、騒音を聞いて暴れるようなこともなく、おとなしく大型画面の携帯端末を手のひらにおいて、昔の書籍などを読んでいた。
しばらく領主の館の、使われていない応接室で飼っていると、というかたはあんまりだな、世話をしてると、旧皇帝の言ったとおり、外に連れ出したら軍に戦車で射撃されるほどの体の大きさもだんだん元に戻っていき、それに合わせて衣類その他の、島から持ち込んだものも、普通の大きさになった。
どうやら魔水を含む島の空気・水分的な環境が影響していたらしく、機械類が小さくなるのには時間がかかるようだった。
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旧皇帝の説明によると、タカムラくんは特等貴族とのことである。
ただちょっと調子に乗りすぎるところがあって、軍令部でも戦争中は使いにくかったんろうね、と旧皇帝は説明した。
一等までは資格試験を通れば誰でもなれるものなのだけれども、特等貴族というのはオヤの地位とか、とにかく資格試験以上のものがなないと通常はなれないところを、タカムラくんは武芸と学力でなんとかしたという、古今前に見る逸材らしい。
竹槍で戦略爆撃機を落としたのも、能力ではなく武芸できたえたものだから、あのくらいのことは素人でもできるようになります、とタカムラくんは言った。
ならねぇよ。
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なんとか人前に出せるくらいの大きさになったので、と言っても領主の1.5倍くらいの大きさではあるけれど、領主は執務室でいつものふたりに紹介した。
大きさのわかりにくい画像では不便だろうと、領主と並んだ立ち姿のものを、前もって送っておいた。
画像の中で領主は緊張して立ち、その横にタカムラくんは腰に手を当てて、ゆとりの姿勢で立っていた。
このかたがあの有名なタカムラくんですか、と人事大臣は言った。
ところでタカムラくんって強いの、と軍事大臣はいつも通り聞いた。
当たり前だろう、と領主は答えた。
いやあ、あんまりヒトと戦ったことはないんで、とタカムラくんは頭をかきながら言った。
野生動物とかにはだいたい勝ってますけど、負けたら食われちゃいますからね、引き分けだったのはクジラ相手のときぐらいかな。
しかし武芸・学力以外の特殊能力としてはどんなものがあるのかは、領主も知りたがったのでちょっと聞いてみた。
んー、偽書、とタカムラくんは言った。
あと、人の署名をうまく真似られます。
ためしに領主の筆跡を見せたらとてもうまく偽造してくれた。
それじゃあ、源為朝が小野小町に宛てた手紙とかは、とそれもうまいこと、さらさらとタカムラくんは書いた。
これが偽手紙なのは、時代が違うことで明らかではある。
じゃあ、びぃとるずの4人の署名は、とまたも人事大臣は領主にはわけわからん人たちの名前を言った。
じょん
ぽぉる
じょぉじ
林檎
ひとりだけは帝国のかな文字ではなく古代帝国文字ではあるけれども、共和国語の字ではない、あきらかに偽署名である。
びぃとるずの4人が狂信者たちに送っていた署名だって、本物はそんなに多くないんですよ、と人事大臣は説明した。
だいたい98%の署名は専用担当者が4人の筆跡を真似して書いていたんです。
なるほどよくあることなんだなと領主は言ったけれども、しかし気になることがひとつ領主の心に生まれた。




