グラリス王子(王女)とのアフターケア
王宮 グラリス王女の私室 稽古後
訓練場の激しい稽古を終えてから、三十分ほど経った頃。
グラリス王女の私室に、汗だくの彼女と俺は戻っていた。
「はぁ……はぁ……くそ、今日のお前はマジで強かったな…… 肩と背中が……ガチガチだぜ」
グラリス王女は上半身を軽く脱ぎ捨て、薄いタンクトップ一枚になってベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。背が高く筋肉質な背中が、稽古の熱でまだ赤く染まっている。紫の長髪が乱れてベッドに広がり、普段の武闘派らしい凛々しさが少しだけ緩んで見えた。
「アロス……悪いが、また頼む。 お前のマッサージ、癖になりそうだ」
彼女は顔を横に向け、照れ隠しのようにニヤリと笑った。しかしその瞳には、さっきの稽古で俺を見ていたときと同じ熱が残っていた。
俺は香油を手に取り、ベッドの横に座った。
「では、失礼します」
両手を彼女の肩に置くと、グラリス王女の体がビクッと反応した。
「んっ……お、相変わらず手が熱いな……」
俺はまず肩から背中にかけて、ゆっくりとほぐし始めた。グラリス王女の筋肉はエベルより厚く、固く発達している。親指で肩甲骨の周りを深く押すと、彼女が低く唸った。
「ぐっ……そこ……いい…… お前、ほんとにただの付与術師じゃねえよな。 剣の腕も、魔導の使い方も、ケアの仕方も……全部一流だ」
グラリス王女の声が少し低くなる。
(……マジでヤバい。この手つき…… 稽古のときも思ったが、コイツは本当に強い。 しかも優しい。オレみたいな荒っぽい体を、こんなに丁寧に扱ってくれる……)
彼女は心の中で熱くざわついていた。
(兄貴が夢中になるのもわかる。 ルーリがあんなに懐くのもわかる。 ……くそ、オレも……もっとこの男に触れていたくなるじゃねえか)
グラリス王女は口では豪快に話しながら、内心ではアロスへの好意を抑えきれずにいた。
俺は背中全体を両手で滑らせ、腰のあたりまで丁寧にマッサージを続けた。時々固くなった筋肉を深く押すと、グラリス王女が「はぁ……」と甘い吐息を漏らす。
「グラリス王女、ここは特に凝ってますね。 槍を振るうときに、下半身から力を伝える動きが多いから……」
「へへ……よくわかってるじゃねえか。 お前、オレの体をちゃんと見てくれてるんだな……」
彼女は照れくさそうに笑い、顔をベッドに埋めた。
俺が腰のくびれ付近を優しく揉みほぐしていると、グラリス王女が突然小さな声で呟いた。
「……なあ、アロス。 お前……王宮に来てから、毎日楽しそうだよな。 ルーリや兄貴と一緒にいて……オレともこうして……」
「はい。みんなと一緒にいられるのが嬉しいです」
グラリス王女は少し沈黙した後、照れ隠しのように笑った。
「ふん……まあ、オレも悪くねえよ。 お前みたいな強いやつと稽古できるなんて、久しぶりだ。 ……それに、お前のマッサージ、クセになるんだよな。 毎日でも頼みてえくらいだ」
(……本当は毎日触れていたい。 この手で体をほぐされるたび、オレの胸が熱くなる…… こんな気持ち、初めてだぜ……)
彼女は心の中でそう思いながら、口ではいつものガサツな調子で続けた。
「よし、今日はここまででいいぜ。 ……ありがとな、アロス。 お前がいると、オレももっと強くなれそうな気がする」
グラリス王女は体を起こし、汗で濡れた紫の髪をかき上げながら、俺をまっすぐに見つめてきた。
その瞳には、戦士らしい鋭さと、隠しきれない柔らかな好意が混ざっていた。
「また明日も……稽古、付き合えよ? 今度はもっと本気でいくからな」
「はい、楽しみにしてます、グラリス王女」
俺が微笑むと、グラリス王女は照れくさそうに目を逸らし、「へへ……楽しみにしてろよ」と小さく笑った。
稽古後の私室に、汗と香油の匂い、そして二人の甘く熱い余韻が静かに残っていた。




