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004 ☖ 前回との差異

 この日ノ本国では、何千、何万回と同じ時代を繰り返している。

 原因は属性神と呼ばれる5柱が欠けてしまい、世界を崩壊させてしまうため。


 発端は日ノ本国らしい。

 だけど、世界の崩壊は他国も巻き込むので、きっと他国も同じ時代を繰り返していると思われる。


 世界の崩壊は、即ち人類の滅亡。


 だから巫女さんは、崩壊を阻止するために輪廻という禁術で時代を戻している。

 その事実や前回までの出来事を覚えていられるのは、瘴気によって一度は堕転し、魔術以外の(すべ)で欲を自制し、更に "世界の加護" から脱却できる者だけ、らしい。


 厳龍曰く、オレもその1人らしい。

 この輪廻という単語や話題が相手へ一字一句、伝わることが証拠なのだそう。

 ――でも、ソレをどうやっているのか、イマイチ理解はしていない。


 そんな輪廻は、同じ時代を繰り返しながらも、しかし、徐々に同じ歴史を歩まなくなっていった。


 最初の出来事は、オレのような、前回までの出来事を覚えていられる者が増えたことだと思う。

 その者たちが徐々に増えていったことで、輪廻を使わずに生存し続けることを目標に団結し始め、今では何組かのチームとして動き始めている。


 なお、巫女さん曰く、瘴気や悪鬼を利用して属性神を排除しようとしている敵側も、輪廻を利用している節があるという。

 そのせいで、時折、個々によって巻き戻る年数に違いが生じてしまっているらしい。

 しかし、厳龍曰く、そのこと自体はイレギュラーには入らないが、何年も繰り返す内に大きな変化となればイレギュラーにも成り得る、と難しいことを言っていた。


 ちなみに、その敵側というのが死神教という名前で活動している。



 そして、今回の場合。

 巫女さんが知る限り、最初のイレギュラーは阿修羅帝国で革命が起きたこと。


 前回までは、阿修羅帝国は魔力暴走によって国が滅んでいた。


 あ、魔力暴走というのは、その字の通りに魔力が暴発してしまうこと。

 大体が欲に捕らわれた悪鬼による、結界で村や町を一網打尽にした皆殺し、らしい。


 だけど、今回はその革命軍のおかげで、帝王一家以外の多くの命が救われたことになる。


 だが、同時に帝王派に居た多くの悪魔族が他国へと亡命した。

 巫女さん曰く、その一部がこの国にも到達しているらしい。



 そして第二のイレギュラーは、オレの弟・(つかさ)が母を殺したこと。


 前回までは母が司を連れ、全ての元凶である死神教の忍びの隠れ里に行っていた。


 それを食い止めようとすると、その場に居た者は全滅する。

 しかし、止めずに行かせると ()()()()()()()()()()() が司の手で殺されてしまう。


 これらも、幾度もの失敗から判明したこと。

 よって最近は、事が起きる前日に母を牢屋に入れていた。


 でも、今回は本来の1週間も前に行動を起こされてしまったので食い止められなかった。

 しかも、一度は家を出て行ったのにも関わらず、何故か2人は一度自宅に戻ってきており、東都の屋敷の中で母は死体の状態で発見されたらしい。

 その死体のあった場所が殺害現場だと聞いてはいる。


 司はオレより頭も運動神経も良かったからか、幼い頃から母は司の面倒しか見なかった。

 そういうオレも、当然のように次の首相の座は司が継ぐものだと思っていた。

 だからオレだけが美島市の別邸で、両親と司は東都の本拠に住んでいることも当然だと思っていた。


 でも、司は全てにおいて優秀だったけど、魔力の保有量だけは極端に少なかった。

 首相を継ぐということは、今や国宝でもある智神の核を継ぐということ。

 ただ、この神の核は魔力が多くないと継ぐことは出来ない。


 司自身も保有量を増やそうと努力はしたらしい。

 だけど、体質的に無駄だと解った時点で諦めていたらしい。


 ちなみに、オレの吉村家は、代々、首相を担っている。

 昔は首相も "政府七人衆" という7つの名家で持ち回りだったけど、他の名家で6代前と先々代で不祥事が相次いだ結果、清廉潔白だったのが吉村家だけだったらしい。

 不祥事があったら以後5代は首相を担えない法律なので、またしばらく吉村家が担うことになってしまった。


 そんな理由から、司が親父に何か言ったのだと思う。

 だから親父がオレに核を継ぐと家族会議で宣言した直後、母は酷く取り乱す。


 そして計画を練るのか、死神教に連絡をとって提案されたのかは不明だが、前回まではだいたい会議から10日後のオレの誕生日に母は司を連れて家出した。


 だが、今回は数日しか経っていない。

 むしろ直後と表現してもいいほど、行動が早すぎた。



「そしてもう2つ、私が気になっていることがあって」

「何でしょう?」

「今まで司君、要の誕生日プレゼントに手紙と魔法石を準備していたこと、無かったでしょ? 前回まではカードゲームのブースターパックだったし、その前はお食事券だったし」

「よく覚えてたな、お食事券」

「プレゼントが中学生っぽくなかったからね」


 厳龍のツッコミにも巫女さんは答えつつ続ける。


「そしてもう1つは、五十市と小槌市の境にある研究所の存在。あのあたりは妖怪の朱雀族が管理していて、過去の犯罪者が溜め込んだ違法魔法石が地下に保管されているから立入禁止区域になっているのだけど。

 そこが現在、朱雀族は感知していないにも関わらず、朱雀族以外が出入りしている痕跡があるようなの。その研究所の以前の名称は "魔法石研究所"。こんな偶然、ありえる?」


「そこに司様が出入りしているとでも?」

「それは無いわ。朱雀族は吉村家の血の臭いを知っているもの。司君が出入りしていたら吉村家の名を出すでしょうし」

「無関係ではないだろうな。確かに、ここ2ヶ月くらいは流通している魔法石の値が下がってきているし」


「それで考えてみたのだけど。研究所へは用水路を使っているのではないかって。朱雀族は水が嫌いだから、用水路側の警備はガバガバでしょうし」

「「なるほど」」


 オレ以外の一同は納得していたので、何となくオレも頷き返しておいた。が、


「お前は全っ然! 解ってねぇだろ!」


 厳龍の指摘にも頷き返すことしか出来なかった。




 巫女さんと厳龍が帰った後で、光と風見から先ほどの内容をかいつまんで教えてもらった。


 ようは司が希少な魔法石を準備できたのは、国内の魔法石の流通量が増加したから。

 その増加した理由は、阿修羅帝国から亡命して来た何者かが "魔法石研究所" に侵入し、転売が目的で地下に秘蔵されていた魔法石を盗み出しているから。

 そして、転売したお金を逃亡費用に充てるつもりなのだろう、と。


 どんな理由であれ窃盗は許されない。

 また盗品を売買することは違法だったはず。

 まして違法魔法石は邪道な手段で生成された危険なモノ。


 朱雀族は管理者として犯人を追っているらしいし、今日か明日にも販売業者へ査察が入り、違法魔法石だった場合は入手先に関して本調査が入る、という予定らしい。


 しかし、そこから犯人を追えるかどうかは解らない。

 足取りが解ったところで、既に県外に逃げていたら難しいのだから。


 そして厳龍が帰る前に言っていたのは、市中に居る他の国籍の要注意人物は子供ということ。

 ただその子供が要注意なのではなく、その命を狙う暗殺者に要注意という意味らしい。


「まぁ元々、ここは避難所みたいな地域ですし、仕方ないことなのでしょう」


 光はそう言いながらも、オレの前にあった空の皿を下げ、代わりにデザートのイチゴパフェを置いてくれた。

 風見は少し離れた場所で食事をとっているが、オレよりもだいぶ後に食べ始めたのでまだデザートには至っていない。

 それでも光か風見のどちらかは、必ず一緒に食事をしてくれるようになった。



 ここ美島市は、というか、それより大きな枠組みの千波県は、東都で居場所を失くした者が多く住んでいる。

 つい数十年前までは、迫害されていた妖怪や能力者が人間を傷つけないようにするための養育区画だったらしい。

 今でこそ能力者も人間と思われるようになったが、それまでは人間であっても能力者は全員、妖怪や悪魔なんて呼ばれていたほど、日ノ本国は他国と比べようがないほど酷い扱いだったとか。


 ちなみに、両親が生まれるよりも前は、奴隷制度もあったらしいし。

 その名残で、今でも東都で軽犯罪をした者が流れ込んでくることも多かった。


「それにここ数年は魔導自動車のエンジン不良による事故も増えています。なので要様、どうかお独りで出歩くことはおやめ下さい」

「うん。解ったってば」


 悪いとは思った。

 それでも今日、どうしても行きたかった。


 でも、どうしてそう思ったのかは未だに思い出せそうにもない。


 巫女さんにも悪いから、早く思い出してあげたいんだけどなぁ。


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