8話 準魔王サイモン vs 俺
俺は今混乱している。
まず1つ目。
森と山の前にある平野の境目には大きな洞窟?
崖みたいなものがある。
しかもあまりにも深くて底が見えないほど深い。
そして2つ目。
俺の目の前にこの世界で初めて見る人間みたいなやつがいる。
こいつは...
なんて言うんだろう...
獣?
人?
いやどっちかと言うと人に似た獣だから獣人?
まあ今は獣人と読んでおこう。
俺の目の前にはその獣人?みたいなやつがいた。
「誰だお前」
その獣人らしきやつは俺に話しかけてきた。
「おまえエルフか」
は?
エルフ?
何いってんだよ。
俺は31歳体重100kg超えののクソ童貞だぞ。
最近剥げてきたんだぞ。
なんか確かに異世界転生したあと耳が長い気がするし、体がバキバキになってて多少体重が減って筋肉が増えたんだとは思うけどこの俺がエルフ?
エルフ?
「何いってんだお前」
「エルフ?」
「は?」
「俺がエルフ?」
俺が彼に問いかけると彼は困惑した表情をした。
おそらく少し俺を言動を聞いて引いているのだろう。
「なっ、何いってんだ?」
「お前頭でもぶつけたか?」
「まあいい」
「回復魔法でもかけといてやろう」
「ヒール」
優しそうなやつだ。
こういうやつは俺は意外と好きだ。
「名前...なんて言うんだ」
「俺様の名前か、私の名前はサイモン」
「準魔王だ」
「だから気遣え」
は、何だこいつ。
やっぱこういうやつは大嫌いだ。
「ちなみにそこのエルフの少年よ」
「君以外にこの森を抜けたものを見なかったのかい」
「俺しか見なかったよ」
「ん?」
彼の目が急に変わった。
「そういうことか」
「やっぱり私のエレガァーントな目にお前みたいな低レベルは見えなかったようだ」
「まあ森の奴らをなんとか倒せてここまでこれたという感じなのだな」
「ん?」
こいつが何を言っているのか俺にはさっぱりわからない。
それに急に主語を俺様から私に変えんな。
殺すぞ。
俺がもし回復魔法を使うのならどんな重症者がいても必ずまずはお前にかけていただろう。
「ま、あ それか群れ同士で戦いが始まったという感じだったというわけか」
「お前が何をしてなかったとしても魔王ディーーーーーーーリ様に命令された私はお前を殺さなければならない」
こいつは本当に何を言ってるんだ。
これはばかりは俺も見逃せない。
俺があまりにも醜い顔をしてるからってエルフの少年とか煽ってきたし。
殺すしかない。
殺す殺す殺す。
うざいから殺す。
「こいよ」
「クソ雑魚」
俺の挑発にムカついたのかサイモンは少しキレ気味だった。
「本当だったらお前がそのしょうもないたわごとを話しているうちに殺しているところだったんだが...」
「まあいい」
「遊んでやろう」
「いつまでそんな軽い口叩けるだろうかね」
「さあ始めようか」
バァン
サイモンは走り出した。
いい音するじゃないか。
俺には圧倒的に劣るがずいぶん早いスタートだ。
よくわからないがさすが準魔王と名乗るほどだろう。
0.1秒も立たないうちに俺の目の前にいる。
俺の顔に一発入れてこようとしてくる。
それを見きった俺はサイモンの腕を掴む。
「森では見なかった強さだな」
こいつは準魔王と自分のことを名乗っているが本当に強いのかも知れない。
まず準魔王というのが何なのかすらわからないのだが...
「はは」
「森にいる魔獣なんかと比較されられては困るよ」
確かに強かった
サイモンは俺が今まで戦った中で一番強かった
ただ
あいつは最大の誤算をしている。
こいつは
俺にとっては
あまりにも弱すぎた。
「おいこんなもんか」
俺はどんどんサイモンを挑発してゆく。
俺は思った
こいつの本当の強さをもっと見たい
気になる
こいつとどれだけ勝負できるか気になる?
だんだんこいつと戦うのが楽しくなってきた気がする。
サイモンと戦っている間の衝撃波によって周りある木々と一緒に、半径1kmくらいの土が衝撃波とともに砕けてゆく。
サイモンは俺の攻撃でどんどん消耗していっている
サイモンは攻撃し続けてくる。
「ほう」
「そんなもんか」
「きっ、貴様ぁ」
「少し手は抜いといてやるよ」
「ライトスター」
俺は小型のライトスターを放った。
俺の魔素とパワーが一つのライトの光のようにサイモンの右肩を貫いてゆく。
ドがぁーん
手を抜いたと言っても闇の森の5分の1がもの距離まで貫通するほどの威力だった。
貫通した森には幅30cmほどの切れ目ができている。
俺は魔王ディリ。
自分のことは比較的真面目な人だと思っている。
なぜなら魔王の中でも珍しい人間だからだ。
暴力的な獣族やずる賢い魔族や、天然すぎるリーフバリア族などいろいろな種族の魔王がいるがその中でも俺はましだと思っている。
俺は少しサイモンのことを心配している。
なぜならサイモンは自己肯定感が高くとんでもない馬鹿だからだ。
ちょっとした優しさがたまに見えるのだが、それを一瞬でかき消すほどいつも馬鹿なことをしている。
どうせ「なんで俺様がこんな雑魚のために相手しないといけないんだ」って今回の森の突破者もくだらないやつだと思って監視に行っているのだろう。
しかしまず闇の森を突破したとしたら相当な強さだ。
ただ準魔王のサイモンにとっては闇の森を突破したものと言われても容易に倒せるはず...
だからってどんな相手でもそうやって油断するのは良くない。
時々ヤバイやつがいるのだ。
それで俺は何人部下を失ったといえば...
だから
「そううまくいけばいいのだが...」
そう。
そううまくいけばいいのだが...
なぜか...
今日は嫌な予感がする。
「何なんだこの気持ちは」
その時だった。
ドがぁーん
戦闘が始まったのだろうか。
地上からとてつもなく大きな地響きが聞こえる。
これはとてつもない音だ。
まさかここまで深い場所まで戦闘の音が聞こえるなんて...
準魔王と言ったって、成り立てのサイモンがこんな強力な攻撃を放てるわけがない。
それは...
「まさか...」
「ここで嫌な予感が当たるとは」
ここで予期もしない強敵に会うとは俺も思っていなかった。




