9話 魔王ディリ vs 俺
彼らは当時、盗賊だった。
「すいません」
「大丈夫ですか」
「よくこの森を抜けましたね」
そうやってサイモンはいつも闇の森の突破者に話しかける。
「もしかしてお怪我なさっていますか」
「いや」
「怪我はしてないです」
彼女は少し疑いの目を向けていた。
その姿を見たサイモンはすぐさま話の内容を変える。
まるで会話のプロのような会話術だ。
誰が見てもその違和感は感じられないだろう。
「それは失礼しました」
「ちなみにぃ」
「今日は冒険パーティーで森の探索でもしていらっしゃったのですかねぇ?」
「いえ」
「パーティーには入っているのですが今回は一人で」
「そうですかぁ」
彼女は一流の魔法使いなのだろうか。
どこかの冒険パーティーのメンバーの一人のようだ。
「ここの闇の森は強い魔物が多くいるのかなかなか冒険に行った冒険者が帰ってこれないと聞きまして」
「そこまですごい森なのかと思いまして...」
「今度ダンジョンに行くので手馴しにでも行ってみようかなと思ったんです」
「ただ意外と簡単でして」
彼女はサイモンの会話に持っていかれどんどんサイモンの思い通りになっていく。
「うんうん」
「わたしもここらへんに住んでましてぇ」
「そこまで強い魔物がいるわけではそんなにないわけですよぉ」
「やっぱそうなんですか」
彼女は夢中にサイモンの話を聞く。
「はい」
「ただ、やっぱり怖くて森の奥まで入ったことはないんですけどね」
「まあお疲れでしょうし紅茶でもいかがでしょうか」
「はい」
「お願いします」
ゴクン
「あっ、ああああぁぁぁぁぁーーーー」
バタン
こんなことを何回繰り返しただろうか。
確かに多少この森はディリの魔素によって強い魔物はいるがそれは見せかけである。
俺らはその森を使って物を盗んでいる盗賊団だった。
「目ぇ冷めたかぁ」
「ここぉどこぉなの」
彼女は混乱している。
「早く早く早く出してよ?」
サイモンは彼女に問いかける。
「ん?抱いてよ」
「うん」
「もちろん後で抱いてあげるんだけど」
「し か も」
「お前が持ってるお宝の秘密とか財産の場所とかぁ」
「教えてくれたら君とたくさん遊んであげたあとに出してあげるよぉ」
「ほぉ、ほんとに?」
「うんうん」
パニック状態の人は何でも言うことを聞いてしまう。
それを利用することでたとえ強者であってもサイモンとディリはビビリもしなかった。
「じゃあ、ディリ様に抱いてもらおうか」
彼女の顔は絶望していた。
「え?」
「何その顔?」
こうして遊び尽くされた彼女はやがて死に、洞窟の最深部に落とされる。
そしてこの彼女以外にも何万人、何十万人、とたったの30年で殺していった。
こうして俺らは進化し師匠であるディリ様は魔王になった。
そして俺も準魔王になり俺らはついに盗賊団の規模では収まらなくなってしまった。
俺は暴れまわるサイモンを倒したあと。
彼の治療に使うスキル「ヒーリング」の練習をしていた。
ここまでの重症だとスキルを進化させないといけないからだ。
その時だ。
「サイモン... 大丈夫か」
誰かがサイモンの近くによってくる。
これは本物の人間か?
おそらくサイモンの味方だろう。
久しぶりの人間を見た俺は今とても感動している。
俺は今すぐ話しかけたいぐらいなのだが今ここで話すことはできないだろう。
それに俺の話したくもない。
クソ野郎の目をしている。
それに俺が撃った「スターライト」で右肩を思いっきり撃ち抜かれたサイモンは右腕と体が何個かの筋肉の筋でなんとかつながっている状態だった。
そんな状態を見た彼はサイモンが俺にどんなことをしていたとしても理性を保てなくなるだろう。
だからもしこいつとの会話をするのだったら、まずはこいつの理性をもとに戻さないとだめだ。
「おい」
「お前」
「俺のサイモンに何してんだてめぇ」
謎の男は俺に話しかけてきた。
こいつの顔には俺に対する怒りがこもっていた。
ただ...
そんな事言われてもあいつから仕掛けてきたんだから...
俺は気づいていた。
あのサイモンと言うやつが俺に回復魔法と言って俺にかけたのは毒魔法だった。
念のため彼が魔法をかけた瞬間、スキル「小説家」の空間で分析してみたのだ。
つまり表面上はいい顔をしているように見えるが実際は黒だ。
ただこの世界を知るために尋問する価値はある。
つまり理性を戻すことができたら話し合いをするのも一つの手ということだ。
俺はすぐさま行動に移った。
「まずは自己紹介をしたらどうだ」
「俺はまだお前の年齢も名前もわからない」
俺の発言を煽りだと感じたのか彼の怒りは最骨頂に達していた。
このままだと尋問ができなくなってしまう。
「おい」
「てめぇ」
「俺の名前を覚える必要はない」
「覚える前にまず死んでもらう」
彼は自信満々に俺にそう語ってきた。
彼の顔を見る限りこれはもう手遅れかもしれない。
あれこそが勘違いクソ野郎だ。
アニメとか小説でそういうやつを見ると俺はとてもムカつく。
ただ会話する余地が0%だとはまだ決まっていない。
だからまだ待つべきだ。
俺は念のため彼との交渉を持ちかけることにした。
「あのさ」
「ちょっと聞いてくれよ」
「暴れるなよ」
「ちゃんと聞け」
俺は冷静に彼に問いかけた。
だが...
「だまれ」
「お前を殺す」
何なんだよ。
ムカつくな本当に。
何のためにあのサイモンていうやつの急所外したんだと思ってんだよクソが。
「別にこいつは死んでないし俺が直そうと思えば直すこともできるけど...」
「それにまず俺はなんにもしてないんだ」
「仕掛けてきたのはお前の友達かは知らんがそのサイモンていうやつなんだよ」
「なあ」
「まずは話し合わないか...」
話し合った瞬間俺は察した。
こいつはもう手遅れなことに。
もう理性が保てていない。
いつもはオブラートで包まれている感情が丸出しになっている。
こんな状態では会話どころか、俺の話を聞くことすらもできていないだろう。
どうやら意味がなかったようだ。
「まずは落ち着いたらどうだ」
今度は俺から攻撃をさせてもらった。
俺はサイモンに当てたときより少し弱めの攻撃を打つ。
やはりこいつよりわずかに勝っている気がする。
ただ
攻撃はさっきの準魔王と言っていたやつより格段に強い。
これほどの攻撃をしばらく打ち合っていたら森が無くなってしまうかも知れないほどの威力を持っている。
「うがガガガッぁー」
ついには人間の声とは思えないような声まで出し始めた。
というかフォルムチェンジ?というのかわからないがすでに人間の姿ではないのは確かだ。
マジで何なんだあいつは。
これはもうだめだと俺は察した。
それに毒魔法の話もそうだしこいつはどっちにしろ俺を殺そうとしていたのに間違いはない。
確かにこの世界を知るためにはまず尋問をしてから殺したいのだがもうこいつは手遅れだ。
だからここで死んでもらう。
「悪い」
「本気を出す」
「締めさせてもらう」
このままこの戦いを続けたとして俺の攻撃をこれ以上強くしたらこの森ごと無くなってしまうし、俺とこいつでこれ以上攻撃し合ってもこれ以上戦えば森はなくなる。
今のような場合はさっきのように「ライトスター」のような超高密度で被害範囲を抑え込めるような攻撃を本気で打つしかない。
こいつらは今まで俺と同じ手口で沢山の人を殺してきた匂いがする。
だから
こいつらには世界一苦しい死に方をしてもらう。
「サイモンくんもまだ生きてるけどどうやら毒で俺のこと殺そうとしてたみたいだから一緒に死んでもらおうか」
「うがぁああー」
彼は必死に抵抗している。
ただお前らはもう死ぬ運命なのだ。
俺という人間を殺そうとしたのが間違っていた。
森の被害を最小限にするには俺の「ライトスター」で二人を同時に撃ち抜くしかない。
だから俺はスキル「自由移動」でサイモンを彼と一直線に並べる。
「うがぁーー」
彼はフォルムチェンジみたいなやつをしたせいで怪獣みたいな気持ち悪い声しか出せないようだ。
「では」
「お気をつけて」
「ライトスター」
俺は渾身の超圧縮ライトスターでこいつらの体の至る所を貫通させていった。
一体こいつらのせいで生き残れなかった人は何人いるのだろうか。
もしこの世界に一流の剣士や魔法使いのような人がいるのならこの森を抜けるのは容易だったはずだ。
ただこいつらの仕掛けによってどんどん殺されていったと考えると腹が立つ。
表向きの感情がいいやつでもこのように根が腐っていたら何の意味もない。
そう感じさせられた戦いだった。
これで10話目です。
作品としてはうまくできている方ですかね。
教えてください。




