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2匹のトラさん物語  作者: 小川大河


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4/10

島の守り神

 クワガタとカブトムシの畑仕事の仲間にシカっちが加わりました。シカっちは仕事を憶えるのが速く、体力もあったので畑作業はどんどん捗りました。シカっちはしばらくトラさんたちと行動をともにしようと思いました。さあ、ついに収穫です。トマトやナス、きゅうりなどが収穫できました。しいたけも食べられそうです。野菜はたくさん採れました。二匹のトラさんとベルンガも畑に向かいます

 立派なきゅうりです。ベルンガは早速つまみ食いをしています。とても美味しそうです。ナスも大きく育ちました。トマトはパンパンで爆発しそうです。しいたけも特大サイズです。みんなで野菜をどんどん収穫しています。明日はお肉屋だけでなく八百屋さんもできそうです。茶色いトラっちも恐る恐る野菜を食べています。野菜はトラさんにとっても美味しかったのです。

 白いトラっちはみんなと離れて何かしています。大きな鍋です。そこに野菜を切っていれています。何か料理をするのでしょうか。白いトラっちは夏野菜でカレーをみんなに作ってあげようと思いました。これまで畑仕事を頑張ってきたご褒美です。野菜を炒めるいい香りがします。お肉の香ばしい香りもしてきました。スパイスを入れるともう、カレーの匂いです。ベルンガが匂いに引き寄せられてきました。よだれを垂らしています。茶色いトラっちもよだれを垂らしながらやってきます。もう、収穫どころではありません。みんなでお昼ご飯を食べることにしました。

 「それにしても、このカレー美味しいベル。」

 ベルンガはカレーに感動して涙を流しながら食べています。きっと今まで、こんなに美味しいものを食べたことがなかったのでしょう。ベルンガはおかわりをしました。巨体な鍋にはカレーがまだたくさん入っています。ベルンガはカレーを鍋ごと飲んでしまいたいぐらいです。しかし、みんなもカレーをおかわりしたいかもしれません。

 クワガタとカブトムシもカレーを気に入ったようです。むしゃむしゃと食べています。カブトムシは何かを思いついた様子で席を立ちました。戻ってくると、手にはビールを持っていました。虫族の特性のお酒です。

 「カレーにはよく合いそうだ。」

 白いトラっちは見たこともないものに興味津々です。ビールからシュワシュワと泡が出ています。白いトラっちは少し飲んでみました。キーンと冷たいビールはとても苦みがありました。でも、熱々のカレーに相性抜群です。白いトラっちはカレーを食べなが、ビールをどんどんと飲んでいきます。それをカブトムシは少し心配そうに見ています。白いトラっちはなんだかフラフラとしてきました。どうやら酔っ払ってしまったようです。

 「あんまり急いで飲むと酔っ払ってしまうから気おつけて。もう遅かったかもしれないけど。」、カブトムシは言いました。

 白いトラっちはビールに夢中のようです。茶色いトラっちも恐る恐る飲んでみます。白いトラっちの様子を見て、ゆっくり飲んだほうが良さそうです。茶色いトラっちはシュワシュワとする黄金の液体を口に入れました。ベルンガとシカっちは普段からビールを飲んだことがありました。ビールがたくさんできると、虫族は島のみんなに分けていたのです。

 カレーのおかげでみんなすっかりと酔っ払ってしまいました。これでは午後の収穫作業ができそうにありません。少し食べた後に休憩をしたほうが良さそうです。白いトラっちはもうすでに横になっていびきをかいています。

 白いトラっちが眼を覚ますと、もう夕暮れ時でした。オレンジ色の空はとてもきれいです。白いトラっちは慌てて野菜の収穫に向かいます。他のみんなはもう起きて収穫を再開していました。

 「やっと起きたベルか。もう終わるベルよ。」

 助かりました。すっかりと寝過ごしてしまった白いトラっちでしたが、畑の収穫は無事終わりそうです。白いトラっちも最後の収穫を手伝います。収穫が終わるとみんなで白いトラっちの小屋に帰って来ました。小さな小屋に大人数は入りきらないので、近くの砂浜で野菜の仕訳作業を行います。空にはきれいな星空が輝いています。

 「変な形のきゅうりベルな。先っちょが2つに分かれている。」

 「それは食べれるから気にしなくていいよ。きゅうりはきゅうりだ。」

 今日の夜ごはんはカレーです。お昼の残り物ですが白いトラっちは少し何かを具材を足したようです。飽きないように味付けを少し変えたようです。またしても、ベルンガはカレーを食べると感動して泣いてしまいました。それを見てみんなが笑います。明日は、白いトラっちは八百屋さんをやるので、ベルンガはお肉屋さんをやることになりました。

 お腹いっぱいになると、みんな砂浜の上に寝てしまいました。暖かい南の島なので風を引く心配は無さそうです。みんなが寝静まった後でも、白いトラっちとベルンガは眠れません。二人にはお肉屋さんとしてお肉を調達しなければならなかったのです。

 茶色いトラっちは砂浜の上に大の字で寝ています。幸い尻尾はちょん切りやすいように飛び出したっ格好です。白いトラっちはナイフを持って茶色いトラっちに忍び足で近づきます。そして、ナイフで茶色いトラっちの尻尾を切断します。尻尾を切られた茶色いトラっちのお尻からはすぐに新しい尻尾が生えてきます。それはずいぶんと不思議な光景です。茶色いトラっちは尻尾を切られても、痛くない様子ですやすやと眠っています。白いトラっちは無限に再生する茶色いトラっちの尻尾をどんどんと切っていきます。ベルンガは白いトラっちが切った尻尾から肉と皮と骨を分ける担当です。茶色いトラっちの尻尾のお肉が白いトラっちのお肉屋さんで出している肉の正体だったのです。白いトラっちのお肉は美味しいと評判でしたが何のお肉か知っているのはこの二匹だけです。何も知らない茶色いトラっちは夢の中です。

 朝になると、白いトラっちとベルンガはお肉と野菜をあげるために屋台へと向かいます。八百屋さんができたとあって、いつにない大行列です。行列はなんと島を2周もしていました。残念ながらそんなに野菜もお肉もありません。今日もあっという間に売り切れてしまいます。白いトラっちはなんとかみんなに食べ物を行き渡らせたいと考えていました。でもこれだけお客さんが多くては不可能です。

 野菜は大人気でした。新鮮で立派な野菜はあっという間になくなりました。八百屋さんとお肉屋さんができたことで肉食動物と草食動物の間に小さな交流ができました。並んでいる間に雑談をするようになったのです。こうして、白いトラっちはこの島ですっかり有名になりました。白いトラっちはお肉屋さんに専念しています。ベルンガは八百屋さんです。朝のお店の時間帯は二人はいつも忙しく働きます。はじめのうちはあまりの混雑に大変でしたが、慣れてきて二人ともなんとかできるようになりました。

 ある日、白いトラっちとベルンガがお店を終えて小屋に戻ると、一匹のイヌがいました。とても立派な犬は毛並みがツヤツヤとして体格もしっかりとしています。ベルンガは驚きました。このイヌはこの島の守り神でした。めったにイヌは自分の住処からは出てきませんでした。守り神は念力の使い手と言われ、みんなから畏れられています。イヌは島最強の実力者とされています。そのイヌが何の用でしょう。白いトラっちはイヌの事を何も知らないのでベルンガほどには驚きません。でもなにか得体の知れない力を感じます。

 「何かようですか。」、白いトラっちは言いました。

 イヌはそれには何も答えませんでした。イヌは代わりに念力を使いました。白いトラっちとベルンガは体が全く動きません。口が動かないので喋ることもできないのです。しかもなんだか、体を潰されるような圧迫感を感じます。白いトラっちは敵かもしれない、と思いました。イヌはまだ攻撃をしていないだけで何をしてくるか分かりません。イヌの念力を知らない白いトラっちには自分の体がどうなっているのか検討もつかないのです。とりあえず、白いトラっちは様子を見ることにしました。実はイヌも最近島に流れ着いた、二匹のトラさんの様子を見に来ただけだったのです。どうやら、イヌはこの白いトラはベルンガと仲良くやっているように見えます。二匹のトラさんには害意がないように見えます。しかし、イヌは二匹のトラさんが勝手に島を荒らすことに困っていました。自分の知らないところで、この島をいじくり回されていい気がしません。イヌは島の守り神ですから。

 イヌは念力を解きました。

 「ときどき、お前の小屋に来てもいいか。」、イヌは聞きました。

 「いいよ」、白いトラっちは答えます。

 イヌが帰った後でベルンガはイヌのことを説明しました。白いトラっちは驚きました。この島で一番強いということはシカっちよりも強いのか。あのイヌはそんなに強いのか。少し戦ってみたい、と白いトラっちは思いました。それにあの念力はなにかの異能力に違いありません。イヌはどうやらかなり強力な異能力のようです。白いトラっちが習得したビームのこともなにか分かるかもしれません。そもそも異能力とは一体何でしょう。いったい世界中にそれを使えるものはどれくらいいるのでしょう。白いトラっちはイヌに聞きたいことが山程ありました。

 「それを先に言えばいいのに。」、白いトラっちはベルンガに言いました。

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