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2匹のトラさん物語  作者: 小川大河


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2/10

海賊襲来

 白いトラっちのお肉屋さんは大盛況です。島にいる肉食の動物たちは白いトラっちのところにお肉をもらいにやってきます。島の肉食動物は白いトラっちのお肉屋ができる前は、島の草食動物を食べていました。島の肉食動物は草食動物を食べることをやめては、生きていけません。それで、島の草食動物は肉食動物たちを恐れていました。白いトラっちのお肉屋さんができてから、島の肉食動物は狩りをする必要がなくなりました。草食動物のお肉を食べなくても、白いトラっちのお肉屋さんでもらえば良くなったのです。島の肉食動物は島の草食動物たちにこれまで怖い目に合わせてきたことを謝りました。島の草食動物たちも肉食動物が肉を食べることは当然と考えていたので受け入れていました。島では草食動物と肉食動物の間で交流が生まれつつありました。

 ベルンガはみんなが寝静まった夜更けに、白いトラっちの小屋にやってきます。白いトラっちはベルンガを迎え入れます。二匹はいびきを掻いて寝ている茶色いトラっちのところに行きます。白いトラっちはナイフを取り出して茶色いトラっちの尻尾を切ります。尻尾を切られた茶色いトラっちのお尻のところからは不思議なことにまた尻尾が生えてきます。白いトラっちは高速で茶色いトラっちの尻尾を切り取りますがそれよりも速く茶色いトラっちの尻尾は再生をします。ベルンガは助手として茶色いトラっちの尻尾を肉と骨と皮を分けています。

 朝になると、白いトラっちはお肉屋さんの屋台の準備に向かい、ベルンガは白いトラっちのお肉屋さんにお肉をもらいに行きます。茶色いトラっちは朝から島の探検に行きます。茶色いトラっちは朝になったら海を探検するつもりです。そのために前の日、ヤシの木を伐って船を造りました。茶色いトラっちが、朝目覚めると白いトラっちはいません。もう、肉屋さんに向かったのです。最近は白いトラっちの肉屋はますます人気になり、白いトラっちは早朝からお店を開けています。白いトラっちはお店を予約制にすることを考えています。行列に並んでも肉をもらえない者がぽ大勢出ていました。

 「白いトラっちは頑張るなあ。オラも負けてられんね。」

 茶色いトラっちは独り言を言いました。小屋の外に置いてある自家製のボートを持って海に向かいます。釣り竿も一緒に持っていきます。茶色いトラっちは静かな浜に向かいます。というのも、白いトラっちが肉屋の屋台を浜に出してから、お肉屋の近くはとてもザワザワとうるさくなっていました。

 南の島の太陽は灼熱です。海はギラギラと輝いています。砂浜は焼けるような暑さです。茶色いトラっちは灼熱の浜を歩いて、海にボートを入れます。ボートは浮かんでいます。水も入ってきません。茶色いトラっちが乗っても大丈夫そうです。

 茶色いトラっちがボートに乗ると、ボートは大きく傾きました。茶色いトラっちはなかなか重たかったのです。それでもボートは安定しました。茶色いトラっちはヤシの木でできた、オールでボートを進めます。なんだかとてもいい気分です。

 「でもよく考えたら、トラって泳げるんだよな。」、茶色いトラっちはボートを漕いでいるとしばらくして思いました。でも、荷物を置くにはボートがあったほうがいいかもしれません。

 茶色いトラっちはボートの上で海中を見ています。海の底まで透き通っていてかろうじて見えています。魚がたくさんいます。海底は岩場のようで、岩からは色とりどりの珊瑚が生えています。しかし、海面の波のせいで水の中は見にくいです。そんなときのために、茶色いトラっちは白いトラっちから箱メガネをもらっていました。箱メガネを使って海を覗くと、波が邪魔をしないのでとてもくっきりと水の中が見えます。

 そこは別世界でした。海の中には赤い魚や黄色い小魚、青い魚などたくさん魚がいます。サンゴ礁もいろいろです。ゆらゆらと海藻が波に揺れています。ウツボもいます。底の岩場はちょっと行くと砂地になるようです。ふにゃふにゃの生き物がいます。茶色いトラっちがこれまで見たこともない生物です。

 「あとで白いトラっちに聞いてみよう。」

 茶色いトラっちが知らないことは白いトラっちに聞いていました。白いトラっちは何でも知っていたのです。海の中には茶色いトラっちが見たこともない景色が広がっていました。幻想的な風景はいつでも見ていられます。でも、茶色いトラっちはお腹が減ってきました。釣りをすることにしました。

 魚はなかなか釣れません。茶色いトラっちは山で狩りをしたほうが良かったかもしれないと思いました。何も知らない茶色いトラっちは山で狩りを続けていました。急に、釣り竿が引っ張っています。すごい力です。ボートが獲物に引っ張られています。何にが釣れたのでしょう。大物に違いありません。茶色いトラっちは釣り竿を慌てて持ちました。すごい力です。茶色いトラっちは海に落ちそうになりましたが、かろうじて踏ん張りました。これでは紐を引くこともできません。茶色いトラっちは獲物がくたびれるまで待つことにしました。

 夕方になりました。茶色いトラっちの戦いはまだ続いています。しかし、獲物は大分弱ってきたようです引く力が弱くなってきました。そろそろ浮いてくるかもしれません。何か浮いています。きっと獲物です。

 浮かんでいる獲物はかなり大きいようです。茶色いトラっちよりも大きそうです。茶色いトラっちは一日がかりでこの獲物の相手をしました。もう、疲労困憊です。茶色いトラっちはボートを獲物の方に進めます。獲物の巨体は真っ白い色をしていました。どこかで見たことがあるような。そうです、茶色いトラっちが釣り上げたのはベルンガでした。茶色いトラっちは大慌てで助けに行きました。

 「なんだ、ベルンガだったのか。悪いことをしてしまったな。」

 「茶色いトラっちのせいですっかりクタクタだよ。口の中も釣り針で傷だらけだよ。でも、食べられなくてよかった。」

 「ゴメン。白いトラっちに見てもらおう。」

 茶色いトラっちのこの日の収穫はありませんでした。二匹は一緒に白いトラっちの小屋の向かいました。小屋では白いトラっちが夕食を作って待っていました。

 「あれ、ベルンガも来たのか。ご飯2人分しかないや。もう一人分用意するから少し待て。」

 「そんなことより、白いトラっち。ベルンガが大変なんだ。釣り針に引っかかって口の中が傷だらけみたい。」

 「釣りしてたのは茶色いトラっちだったけどな。」

 「うん、それは仕方あるまい。薬草を採ってい来るから待ってろ。」

 白いトラっちは治療のために薬草を取りに行きました。ベルンガと茶色いトラっちの前には豪華な夜ごはんが用意されていました。とても美味しそうです。量もいっぱいあります。トラさんたちは大食いでした。

 「すごいな。トラさんてこんな食事を毎日しているのか。すごい豪華だ。というか、白いトラっちすごいね。こんなに料理ができるなんて。」

 確かにそれは茶色いトラっちにも不思議なことでした。白いトラっちは何でもできたのです。いったい、白いトラっちはこれまで何をしてきたのでしょうか。

 「おまたせ。薬草があったからこれで大丈夫だろう。この辺に畑でも作ろうかな。そうすれば、山まで採りに行く苦労もないし、見つからないことを心配することもない。はい、そうしたら口を開けて。」

 ベルンガの傷はあっという間に治りました。痛々しい口がもう、食餌をできるまでになりました。白いトラっちは早速、ベルンガのご飯も作っています。ご飯ができました。とても美味しそう。

 「チャドラよ。島の探検はどのくらい進んだ。」

 「今日でもう一通り終わったよ。白いトラっちも、海の中を見たほうがいいかも。色々な生き物がいたよ。見たことないふにゃふにゃの生き物がいた。カラフルなナメクジみたいだった。」

 「それはウミウシかも。」、ベルンガが答えました。

 「うん確かに、今度見に行こう。チャドラは探検が終わったら何をするつもりだ。」

 「ちょうど、白いトラっちに聞きたいと思っていたんだ。探検が終わったら、やることなくなりそうだから。」

 茶色いトラっちの探検は今日で一段落がつきました。これからどうしようかと考えていたところでした。白いトラっちはしばらくはお肉屋さんに専念しないといけなそうです。茶色いトラっちは肉屋を手伝うことになるのだろうかと考えました。

 「そうしたら、この小屋の裏の木を伐って畑を作ろうよ。野菜ができたら、肉屋の隣で八百屋をやってもいいし。あと、火山のところの温泉をこっちまで引いてもいい。それか、温泉にお風呂場を作るかだね。とりあえず、畑をやるか。畑を作っても、収穫するまでに時間がかかるし。肥料の研究もやりたいね。」

 「なんだか楽しそう。ベルンガも手伝うベル。」

 「そうしたら、広い畑を作ろう。」

 こうして、茶色いトラっちとベルンガは島に新しく畑を作ることになりました。

 茶色いトラっちは木を切り倒しています。ノコギリのギイギイという音が森の中に響いています。ベルンガは茶色いトラっちが切った木を運んでいます。白いトラっちは伐った木でキノコを作ろう、と2匹に言いました。ベルンガは葉っぱも集めます。肥料にするためです。ベルンガは畑を作るために伐った切り株を掘り起こすこともします。これが一番の力仕事です。茶色いトラっちは木を沢山切りました。視界がひらけてきました。畑にはもう十分です。あとは伐った木を運んで、切り株を掘り起こせば畑はできそうです。次の日の作業を残して二匹は引き上げました。

 小屋では白いトラっちが豪華なご飯を作って待っていました。畑作業が順調だという報告を聞いて嬉しそうです。いつの間にかベルンガも、二匹のトラさんの小屋で暮らし始めています。少し賑やかです。

 ドンドンドン、外に誰かいるようです。

 「めずらしい、お客さんかな。こんな夜中に。」

 「チャドラよ、ちょっと見てきてくれ。」

 茶色いトラっちが外に出ると、そこにはカブトムシとクワガタがいました。でも、とても大きいです。二匹の虫はどちらも、茶色いトラっちと同じぐらいの大きさです。茶色いトラっちはびっくりして、虫のおばけが出たのだと思いました。

 「大変だー。」

 茶色いトラっちの叫び声が聞こえました。ベルンガと白いトラっちはびっくりしました。茶色いトラっちが戻ってきました。その後には巨大なカブトムシとクワガタが着いてきています。白いトラっちは巨大な虫を見てびっくりしました。とても興味を持ったのです。どうしてこんなに大きくなったのだろう。

 二匹の虫は、トラさんたちの用事があってきました。別に驚かせに来たわけではありません。茶色いトラっちが昼間切り倒した木は虫達の住処だったのです。

 「なんだ、カブトムシとクワガタじゃないか。そんなに驚かなくていいベル。二匹は虫族のボスべる。」

 クワガタとカブトムシはベルンガのいることに驚いたようです。虫たちはどこからか流れ着いた2匹のトラが小屋を立てて住み着いたことしか知りませんでした。白いトラっちのお肉屋も知りません。カブトムシもクワガタも肉は食べないからです。二匹の虫は木を切ったことに文句を言いに来ました白いトラっちは謝罪しました。茶色いトラっちは納得できないようです。

 「木を伐って畑を作れば、野菜ができるよ。野菜ができたら、みんなで分けよう。それにキノコだってできるし。肥料も使うから、自然にできるよりもいっぱいできるんだ。」

 「チャドラよ。家がなかったら困るだろう。あそこの、林は虫たちにとっては家なんだ。もしこのまま、畑を広げるとなると、虫たちは住処を奪われることになる。住処を守るためには戦うしかない。もし、畑を作ると鳴ると我々は虫たちと戦わないといけなくなるようだ。それを伝えに来られたのだろう。」

 「そういうことだ。すでに伐ってしまった所は仕方がないから畑にでもしてくれ。でも、あんまり木を切られるのは迷惑だ。分かったようだからそれでいい、トラとはいえお前たちは2匹しかいないのだから大人しくしていろ。」

 カブトムシとクワガタは帰っていきました。白いトラっちは怒られて反省しているようです。畑を作るのは結構いいアイディアだと思われました。食料の調達は格段に便利になるでしょう。しかし、畑を作ったことでその土地から追い出されてしまうものが出てしまいました。

 「まあ、とりあえず木を伐った分は畑にしよう。」

 畑の野菜は順調に育っています。トマトは大分枝が伸びて実をつけています。畑の隅っこには穴を掘りました。そこに落ち葉をためて堆肥を作っています。ベルンガときどき落ち葉に水をかけて、穴をかき混ぜています。発酵させているのです。キノコもニョキニョキと順調に大きくなっています。二匹のトラとベルンガが畑をしているのは物珍しく、見物客が多くきます。虫たちも、落ち葉の堆肥のところに卵を生むようになりました。堆肥は栄養満点で幼虫がよく成長したのです。再び島では平和な時間が流れました。そんなときでした、海賊が現れたのは。

 海賊はウミガメとワニの二匹でした。白いトラっちが小屋にいるとベルンガが来ました。

 「大変だ。海賊が暴れていて、砂浜を荒らしている。」

 白いトラっちが砂浜に行くと、海賊がいました。海賊は白いトラっちのお店の屋台をめちゃくちゃにしていました。島の生物たちは海賊が恐くてみんな逃げ出したようです。

 「肉出せ。ここにすごくうまい肉があると聞いてきたんだ。肉ださないと、暴れる。」

 海賊はもうすでに十分暴れていました。白いトラっちの肉屋は営業を終えてしまっていました。もう肉はありません。白いトラっちは仕方なく戦うことにしました。白いトラっちはワニに向かって思いっきり吠えました。ワニはびっくりして怯んでいます。白いトラっちはワニめがけて飛びつきました。

 「ワニビーム。」

 ワニが不思議な光線を飛ばしてきました。白いトラっちは驚いて避けました。何だあれは。超能力か。白いトラっちはこれでは近づけません。触れたら大変なことになりそうです。

 白いトラっちはカメに向かって吠えました。カメはびくともしません。甲羅に守られているようです。中々厄介な相手です。カメは甲羅で攻撃を防御します。ワニはへんてこなビームで攻撃してきます。白いトラっちはすっかり困ってしまいました。

 「お前、能力者に会ったことないだろ。そりゃ、こんな島で暮らしてたら会わないよな。世界は広いんだ。お前が見たこともないことをできるやつがわんさかいるんだ。」 

 海賊が言いました。白いトラっちには不思議でした。彼には野生の勘がありました。自分より強い相手は何となく分かるものです。白いトラっちにはこの海賊たちは自分よりも格下であるように思えてならなかったのです。

 「あの能力さえなければ勝てるのに。」

 白いトラっちは海賊たちの攻撃を必死で避けます。防戦一方です。得体の知れる攻撃に逃げ腰になってしまっています。あの二匹がそんなに強いはずがない。でも、白いトラっちには攻撃をすることができません。

 カメの動きが止まりました。白いトラっちはすかさず、パンチをしました。亀の甲羅に直撃です。これなら甲羅に入ってもただでは済まないでしょう。しかし、ダメージを受けたのは白いトラっちの方でした。亀の甲羅が衝撃を跳ね返してきたのです。白いトラっちは自分の渾身のパンチで大ダメージを受けました。いったいどうしよう。

 「白いトラっちビーム。」

 もうヤケクソでした。あの海賊たちにできるなら自分にもできるかもしれない。白いトラっちはどこかで思いました。そして、ビームが出たのです。それはとても強烈でした。ワニは避けることもできず、直撃してしまいました。ビームを食らったワニの体はカチコチです。凍りついているようです。白いトラっちはカメにもビームを放ちました。カメもカチコチになりました。どうやら、甲羅ではビームを反射できないようです。白いトラっちは海賊を縄で縛りました。そして、小屋に持って帰りました。ベルンガは海賊を持って帰る白いトラっちを不思議そうに眺めました。

 小屋では茶色いトラっちが待っていました。白いトラっちが海賊を釣れて帰りました。茶色いトラっちは驚いて海賊を見ています。

 「もしかして、ウミガメとワニを食べるの。今日の夜ごはんはずいぶんとワイルドだな。」

 「いやいや、違うんだ。チャドラよ、明日からこの二匹と一緒に温泉の整備をしてくれ。コイツラは助っ人だ。」、白いトラっちは言いました。

 こうして茶色いトラっちは温泉の整備をすることになりました。

 


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