43話
ここがダンジョン塔か。
どこまでも高く続く円柱状の白い塔。600年以上前に魔女によって生み出されたとされる建造物。特殊な魔法で保護されているため建物を破壊することはできない。いまだにこれがどうやって作られたものなのか全く解明されていない。
魔女が何の目的でこの塔を作り出したのかは不明だが、一説には欲に塗れた人間が死にゆくさまを見るためだと言われる。魔女は今だ塔の頂上で生きているとされるがその姿を見た者はいない。。ダンジョン塔は国によって厳しく管理されていて許可証のないものは立ち入ることができない。
「お兄さん観光?今は入れないよ」
そう、入り口の鉄門はチェーンでぐるぐる巻きにされている。周囲の塀も相当高いから入るのは不可能に思える。
「そうらしいな。お前は?」
「マイクっていうんだ。経験豊富で知識も豊富、世界最高の荷物持ちさ」
「ダンジョン塔に入ったことがあるのか?」
「何百回もあるさ!」
こんな子供が入ってもいいものなのか?相当危険だと聞いていたがこの世界の倫理観はどうなっている。
「世界最高の荷物持ちがこんなところで何をしている」
「お兄さんみたいな観光客の相手さ。この塔の歴史とか伝説なんかを話してお金をもらってるんだ?お兄さんも興味あるでしょ?100ゴールドでいいよ」
そんなことよりどうにかして入れないか。ここまで歩いてくるのに結構な距離があった、ただ見ただけで帰りたくはない。この門を壊して入るか?
「わかってるわかってる」
「なにがだ」
「もっと近くで見たいんでしょ?いつもなら入れるんだけど今は厳戒態勢でこんなに遠くからしか見えない、それが不満。そんなお兄さんにすんごくいいのがあるんだ、ほら見てよあそこ」
示した場所には植物が生い茂っていて、子供はそこまで走っていくとガサガサと音を立てながら何かを引っ張り出そうとしているが植物に引っかかって思った通りにいかず悪戦苦闘していた。
「お兄さんも手伝ってよ」
「なんだそれは」
「お兄さんみたいな人は絶対欲しがると思ってね、隠しておいたんだ。よっほらっ、よいしょっと!」
ブチブチブチと植物がちぎれる音とがして草むらから子供が梯子を持って飛び出してきた。
「ほら、これがあれば登れるでしょ」
「大丈夫なのかそれ」
手作り感が凄い。
「大丈夫大丈夫、ちゃんと実験したんだから。これをこうしてこの塀に立てかければっと、ほらぴったり計算通り。ねっすごいでしょ、ほら上ってみてよ、大丈夫だからさ」
せっかくだから使ってみるか、門を壊して後でゴダゴダ言われるよりこっちのほうがよさそうだ。
「ちゃんと押さえてるからさ。さあお兄さん、のぼってのぼって」
両手で梯子をつかみ一段目に足をかけてみる。
「ギシギシいってるぞ」
「大丈夫大丈夫」
2段目に足をかけてみたが一応大丈夫そうだ。
「ほら、ね、大丈夫だって言ったでしょ!」
塀の上から中へ飛び下りる。足に相当な衝撃がくるのを覚悟していたが全く感じられなかった。とりあえず無事入ることはできた。これでダンジョン塔に入ることができる。
「ちょっとお兄さんお金お金!1,000ゴールドだよ」
ああそうか。ちょっと高いがそれくらい払ってやるか。
「無い」
「ええーー!」
財布はヒカリに預けたままだった。
「戻ってきたら払う」
「今払ってよ、ちゃんと梯子使えたでしょ!」
「だから今はないんだ、戻ってきてから払う」
子供の声を背にダンジョン塔に向かって歩く。それにしても大きい、これが魔女が作った塔か。やけにデザインにこだわってるな、彫刻もすごい。まるでヨーロッパの古い建物みたいだ。
ダッ、という音がして振り返ってみると塀の上から飛び降りた子供が着地を決めたところだった。
「1,000ゴールドちゃんと払ってよ!」
こっちをめがけて走ってきて息を切らせながら言った。
「だから今持ってない」
「ウソだ!」
「それなら確かめてみろ」
「観光に来て財布を忘れてくるなんてそんな間抜けいるわけないよ、あれ、財布、お金は………」
スーツのポケットをまさぐっているがもちろん何も出てこない。
「だからないって言っただろう」
「まぬけ…そんなまぬけいるわけ」
間抜け間抜け言うな。
「お前は外で待っていろ戻ってきたら1,000でも2,000でも払ってやる」
「外って言ったってどうやって出ればいいのさ!」
「なに?」
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