36話
吸い込まれるように手が木刀を掴む。
ばきょっ
手に伝わる感触はこれまでに経験したことがないものだった。
「ぐあっぁああああああああああゎあああっわああああ」
「外した」
頭を狙ったはずの振り下ろしの一撃は痩せ長髪の左肩に直撃しヘソの上くらいの位置まで陥没させていた。
「てってめぇえ」
「うるさ」
今度は横薙ぎに木刀を振るったがまたしても狙いは外れスキンヘッドチンピラの左腕から鳩尾のあたりまで陥没させた。
「いでええぇえええぇえええ」
「ぐおおおおおおおあおあおおあおおおあああ」
「ノブナガさん」
「やられたらやり返す。これは当たり前のことなんだヒカリ」
「は、はい」
さすがに殺すのはよくないだろう。これはよくあるただの喧嘩だ。
「オイ何か言うことがあるだろう」
地面を転げまわるチンピラ。
「ててめえこの野郎俺たちをだーーー」
「違う」
膝を狙って踏みつけると今度は思った通りの場所に命中し嫌な音と共に骨が砕け散る音がした。
「びゅああああかかああああ」
「お前はどうだ」
「やめーー」
「違う」
踏みつけた。
「口を閉じろ」
大声で喚いて鬱陶しかったチンピラが悶絶しながら無事なほうの手を使いながら口を閉じた。
「何者なのアンタ」
露店少女が呆然としながら俺に問いかけた。
「そいつはただの迷子」
白銀うるさい。
「やり過ぎじゃないですかノブナガさん」
「落ち着けヒカリ」
「落ち着いていますけど」
「この世は弱肉強食なんだ、わかるな?」
「わかりますけど」
「例えばオオカミの群れのボスに若造が失礼な態度をとったら痛い目にあわされる。それは自然界では当たり前なんだ」
「はい……」
「それでその若造オオカミがその怪我がもとで死んだとしても自然界では当たり前だ。神様だって別にそれで怒ったりはしないだろう」
「はい………」
「それに比べて俺は殺してない」
「はい………」
「膝を踏みつける前に俺は聞いたよな、何か言うことはないかって」
「はい」
「その時こいつらは謝らなかった、反省していないってことだ」
「そういうことだったんですか?」
「そりゃそうだろ、謝ったならそんなことはしなかった。悪いことをしたら謝る、それは当たり前のことだろう。謝らないということは反省していないということだ。だから教えてやったんだ」
「うーん」
「つまりわかるだろう、俺のやさしさが」
「うーん」
「大人になればヒカリにだってわかるさ」
「そうですかね?」
「そういうもんだ」
「うーん。でも大丈夫ですか?」
「なにがだ」
「この人たちたぶんマフィアですよね、復讐しに来るんじゃないですかね。もしそうなったらハルカさんたちに迷惑がかかるんじゃ」
「えええぇそうなの!?」
「大丈夫だろ」
「なんでですか?」
「こいつには剣聖セイゾウがついている」
「へ!?」
「それに、お前もうとっくに剣聖くらい強いだろ」
「なにいってーーー」
「そうに決まってるよな。この木刀で練習すれば強くなれるっていってたじゃないか」
「ちょ、、」
「良かったな。自分自身でこの木刀の効果を実証する時が来たぞ。お前がマフィアを全滅させたら一本買ってやるからな」
「ちょっとおおおおーーーーーーーーー!!」
露店少女の叫び声が天高く響いた。
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