34話
「どう?一人3本くらいずつ買っていってよ。一本買うよりそっちのほうが断然お得なんだから」
「木刀なんて買う奴いるのか?」
この国の兵士はもちろんのこと冒険者の連中まで全員が金属製の武器を携帯している。そんななかで木刀が何の役に立つんだろうか。
「何言ってるのお兄さん!みんな買ってるよ。普段のトレーニングに使ったりとかですーごい売れてるよ。特にうちの木刀は質がいいって町中の評判なんだ」
「その割に客が一人もいないが」
「ほら、持ってみてよ。すごくいいんだからさー振ってもいいよ」
無視された。
「いいですよ」
「いいからいいからやってるうちにだんだん気持ちよくなってくるんだからさ」
ドラッグか!
「そうですか……じゃあ少しだけ」
ヒカリが振るたびに木刀がブンブンと音を立てた。
「わーー!!すごい!すごいよー!あなたどこの免許皆伝なの!?」
「いえ木刀を振るのは今日が初めてです」
「信じられない!すごい!すごすぎる!このまま毎日しっかりうちの木刀で練習すれば剣聖だって夢じゃないよ!すごい!すごい才能!天才よ!」
「そんなことないと思いますけど」
「いえ、間違いないわ!わかった、あなただけに特別サービス。1本6980ゴールドの所、3本で20,000ゴールドでいいよ!将来の剣聖さまにだけ超出血特別サービス!」
「高くないか?」
「ほら、お財布出して、いくら入ってるの。ほら、ほら」
無視された。
「ノブナガさん、お金を…」
「騙されてるぞヒカリ」
「そうなんですけど、でも…」
「そもそもお前の武器はナイフだろう。木刀を振って練習になるのか?どっちにしても3本は絶対いらないだろ」
「それもそうなんですけど…」
「強くなりたいならナイフの使い方がうまい奴を見つけて指導するのがいい。冒険者は討伐以外の仕事だって引き受けるって言っていただろ。自己流で練習するよりそっちのほうがいい」
「はい………」
「何アンタたち剣術の指導を受けたいの?」
露店少女が話に割って入ってきた。なんというメンタルの強さだろう、そこだけは感心する。
「それだったらうちの道場に通いなさいよ」
「うちの道場?」
「もちろん知ってるでしょ剣聖セイゾウ、うちのじいさんの名前」
知らんが。
「ダイセクの守護者セイゾウ、その指導が受けられるなんてあなた達ものすごくついてるよ。しかも今だけ特別割引がきくんだから。ほら、道場を見ていきなよ」
道場?
「ボロくないか」
「じゃあとりあえず入会金を置いて行ってよ。100万でいいよ」
高っか。
「すいませんけどそんなお金持ってないんです」
「そんなことないでしょ、めっちゃ高そうな服着てるじゃないの。私の服と交換してほしいくらいよ」
「ナイフも使えるのか?」
「もちろんよ、剣聖なんだからなんでも使えるにきまってるでしょ!さあお金お金お金」
ようやく俺の言葉に返したな。都合のいいことは聞こえるようだ。
「剣聖の実力を見てみたいな」
もし本当なら金を払う価値はある。実をいうと俺も剣が使えるようになりたいのだ、できれば日本刀、二刀流もいい。憧れだったんだ、格好いいにもほどがあるだろ。
「今は、ちょっと………あれなんだけど」
「あれってなんだ」
「もしかして魔獣の襲撃に備えて街を守っているんじゃないですか?兵士の方だけじゃなく冒険者とか探索者の方にも声をかけてみんなで守っているって言っていましたから」
「そうそう、そうかも、それだわ。なんてったって剣聖だし」
嘘くさ。
「それならハヤシに聞いてみるか。隊長のハヤシならどこにいるか把握しているだろう。会って話をしてみてから考えよう」
「そうですね」
「いや、ちょっちょっとそれは……」
「なんだ嘘か」
「嘘じゃないわようちのじいさんは本物の剣聖なんだから」
「それなら見せてみろ」
「道場にいるわ。本当だけどもう82歳だから魔獣と戦ったりはできない。けどひとりやふたり道場で指導するくらいだったらできるはずよ。嘘じゃないんだから。案内するから見ていけばいいじゃないの」
「どうします?」
なんでこんなことになっているんだろう。
「一応見ていくか」
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