31話
「ほんとごめんよー」
ノリユキは言った。
「顔から気持ちが伝わってこないんだが」
「よく言われるんだよ、顔がへらへらしてるってね。でも思ってる、本当おもってるよ。病院に僕がいる間にまさか強盗が入るなんてね、いやでも皆無事でよかったよー」
「ヒカリ、大丈夫?」
白銀が声をかける。
「はい、大丈夫です」
「本当か?」
いくら子供、ノリユキの身の回りの手伝いをしているツツジ、の身を守るためとはいえ強盗の首を見事に切り落としたのだ。ツツジよりも歳は上らしいがそれでも子供だ、大丈夫なはずがないだろう。
「自分でも不思議です、ボクは強盗を殺しました。でもあの時も今も後悔していないんです」
「無事でよかった」
「今度何かあったら私に言って」
白銀は相当に心配しているようだ。
「心配かけてごめんなさい、次からはそうします」
「白銀は心配なんかしていないぞ、ぐーすかぴーすか寝てたからな」
「は?」
「それよりお前は俺の心配をしろ、お前の裏拳のせいで俺は外まで吹っ飛ばされたんだぞ」
「は?」
「まあまあまあお二人とも」
「そうそうそう、結局皆無事だったんだからさー商品も無事だったし」
「犯人は?調べはついているのか」
「マフィアの下っ端らしいね。ゴウトク組っていうこの国で2番目の大きいマフィアだ」
「ヒカリ、今後は一人で行動するな。マフィアが報復してくるかもしれないぞ、ナイフも常に持っておけ」
「わかりました」
それにしても疑問がある。
「戦い方はどこで覚えた?」
「誰にも教わっていません。ナイフを使ったのもこれが初めてです」
そんなことありえるか?
いくらなんでもおかしい。ナイフという武器を持っているからと言って相手はその倍以上の長さの武器、しかも体格が違う。まさに子供と大人。普通なら立ち向かおうなんて思わないはずだ。
格闘技に熟練したものであっても武器を持った素人相手には逃げる、という話を聞いたことがある。それなのにヒカリはかすり傷すら負わず相手の首を吹っ飛ばす、そんなことが可能なのか?
「どうしたんですかノブナガさん?」
いや待てだからゲームなんだ。そうだ。RPGの登場人物はどんな状況であっても敵と遭遇したら決められた選択肢の通りの行動をする。たとえ初戦闘だろうと相手が強かろうと攻撃できない、防御できないなんてことはない。
「いやなんでもない」
そう考えればおかしいことでもない。あのナイフの攻撃力が凄かったんだ。そしてスピードが相手の数値よりも高かった。だから先に攻撃をすることができた、そしてナイフの攻撃力だけで相手のライフを上回って倒すことができた。ゲームならおかしくはない。
「レベル上げをしたほうがいい」
「?」
「強くなって損はない。街の外をぐるぐる回ってスライムかなんかが出てくるのをまとう。ダメージを受けたら宿屋で回復すればいい」
「すいません、全然わからないんですが」
「なにがだ?」
「全部なんですけど」
「それってもしかして覚醒のことかい?」
ノリユキが言った。
「覚醒?」
「魔獣なんかを倒し続けていると突然強くなる現象のことさ。学者はほかの生物が死ぬときに体から漏れ出す魂を体に取り込むんだって言ってるけどね」
「ああそれだ多分」
「止めたほうがいい」
「なぜだ」
「覚醒した人間はその前までと性格がまるっきり変わってしまうっていう話だからねー、暴力的になったり、我がままになったり。子供であれば特にその影響を受けやすいそうだよ」
「そうか」
「影響を受けない人間もいるけどね、ハヤシさんとかもそうだ」
ハヤシ?だれだっけ。
「領主のサカイさんの部下のハヤシ隊長のことさ」
そうか俺の魔獣を倒した奴だ。
「彼はすでに2回の覚醒を終えたらしい」
2回、つまりレベル3?
「終えた、というのは?」
「それで終わりだからさ、どんな人間でも2回覚醒することができる。まれに3回、4回と覚醒した、なんて言っている奴もいるけど眉唾物だね。けどたまに2回覚醒したやつが手も足も出ないほど強い人間もいるから絶対に嘘とは言い切れないけど証拠がないからね」
どうするべきだ?レベルが上がると性格が変わる?そんなことはゲームでは無かった。しかもレベル3が限度?そんな設定にして何の意味が?レベルが上がるのはRPGの楽しみのはず。
「レベル上げは保留にしよう」
「よかったーそのほうがいいよ」
「お前も気を付けたほうがいい」
「そうだね………ところで、これはたまたま、だと思うかい?」
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