30話
体を揺さぶられる感覚がする。
絶対起きないぞ、体の感覚がまだ寝たばかりだと訴えてくる。この感じはヒカリか?小さい手で遠慮がちにゆすっている。
そうかトイレか、一人でトイレに行くのが怖いから一緒に行ってくれということだろう。
「トイレは白銀といけ」
何も俺じゃなくてもいいはずだ、一緒の部屋の白銀に行ってもらえばいい。
「ちがいます、わたし、言われて、起きて、ください」
「誰だ!」
知らない声に急いで飛び起きる。
「わわ!」
暗すぎて顔がよく見えない。
「誰だ」
「あの、わたし、ノリユキ様のお手伝いをさせてもらっていて、名前はツツジ」
「ノリユキ、ツツジ、知らん、寝る」
また寝る。どうやら危険はなさそうし当たりは真っ暗だ。人間の起きる時間じゃない。
「強盗が」
「強盗!」
跳び起きる。
「あの、ここにはいなくて、ノリユキ様の」
「ノリユキ知らん」
また寝る。なぜこいつはここにはいない強盗の話をするんだ。
「そうじゃなくて、ヒカリさんが強盗に」
跳び起きる。
「隣の部屋か!」
「そうじゃなくて、ノリユキ様のお家に強盗が出て」
「ノリユキ知らん」
寝る。
「ノリユキ様はーーー」
「ヒカリは隣で寝ているはずだ、なんでこんな夜中にそんなところに行く」
「それは、わたしにも、わからないです、けど助けに来てくれて」
だいぶ目が冴えてきてしまっている。けどまだ諦めないぞ、頑張れば寝れるはずだ。
「また、強盗がくるかもしれないから、ヒカリさんがお家にいてくれて、それで私に呼んでくるようにと、」
また揺さぶってくる。こいつかなりしつこい。全然諦める気配がない。
「おねがい、します、どうか一緒に」
諦めろ、この。
「どうか」
しつこい。
「わかったよ、とりあえずヒカリの部屋を見に行く、それでいなかったらお前の言う家にみに行ってやる」
「ありがとうございます」
寝れるわけがない、俺は諦めた。
薄暗い廊下を歩きヒカリが白銀と一緒に寝ているはずの部屋の前についた。それにしてもこのスーツはすごい。寝ていてもしわにならないし汚れが付くこともない、肌触りも最高で寝るのに全く苦じゃない、最高の服だ。買ってよかった。
「鍵がない」
ドアを開けようとして気が付いた。
「無理だあきらめろ」
「ドア、空いているはずです、ヒカリさんが出て行ったので」
なるほどそうか。ドアノブをひねってみるとあっけないほど簡単に開いた。
「いない」
二つあるベッドのうち一つには白銀が眠っていて、もう一つが使った形跡はあるのだがヒカリはいなかった。
「本当に外に行ったのか」
「そうです、そうです、だから早くヒカリさんのところに」
どうやら本当らしい。
それにしても死んでるんじゃないか白銀。微動だにせず目を閉じている。普通呼吸で体が上下に動くような気がするがどうなっているんだ?
まあいいとりあえずこいつも起こそう、俺だけこんな暗い中で起きているのは癪だ。思いっきり体を揺らしてやろう。
「おいはーーーーー」
突然目の前が真っ白になった。
裏拳。
白銀の拳が俺の右顎を捉えたのが少し遅れて分かった。
ドゴバ!
殴られた体がその勢いのまま窓の方向へとぶっ飛び壁を突き破り、そのまま地面へ叩きつけられた。
「ああーーー!?」
ツツジといかいう子供の悲鳴みたいなのが聞こえた。
遠くに見える白銀の顔は反省というよりも怒っているように見えた。
意味が分からないほどの理不尽。
空に浮かぶ骸骨が笑っていた。
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