28話
人通りのなくなった深夜、ヒカリは目を覚ました。隣のベッドにはすやすやと眠る白銀の姿があった。
「またあの夢だ」
囁くような声。
「もう大丈夫なんだ」
額の汗をぬぐった。窓を開けて空を見上げると金色のドクロが光っていた。しばらく眺めていたが風が吹いてきたので音が鳴らないようゆっくりと窓を閉めベッドに戻った。
眠れそうにない。そう考えたヒカリは起き上がりベッドに座りながら手を組みドクロが照らす光を眺めた。
しばらくそうしていたが何かに気が付いたように目をやると立ち上がりテーブルの上に置かれているナイフを手に取った。鞘からナイフを抜き少し眺めた後また鞘に戻し、足音を響かせないようにゆっくりとドアへと向かった。
ナイフを振る練習をしてみよう、ヒカリはそう考えた。じっとしていても眠れそうにないしあたりには人がいない、さらに夜とはいえ真っ暗というわけでもない、練習するにはもってこいだ。
広場かなんかがいい、確かあっちのほうにあったはずだ。一人で出歩くのはよくないと言われていたが魔獣対策でいつもより多くの兵士が街の外にいるはずだから危険はないだろう。
昼間見たときはにぎわっていた広場もさすがに真夜中では人っ子一人いない。期待通りの状況にヒカリはポケットからナイフを出し鞘をポケットに再びしまった。
「すごい」
まるで魔法かのようにナイフは淡く光っている。ブンッ、思っていたよりもずっとスムーズにナイフを振るうことができた。ブンッ、ブンッ、ブンッもやもやしていた気持ちが振るうたびに晴れていくのを感じる。
「足を切らないようにしないと」
ノブナガが言っていた言葉を思い出した。自分の体が今どこにあってどういう風な振り方をしてはいけないのかを考えながらやらないといけない。
ブンッ、ブンッ、ブンッ、最初よりもいい音が鳴っている気がした。
「相手を想像してやってみよう」
相手が剣を持っていたことを想像してみる。剣とナイフ、まともにぶつかったらパワーで負けてしまう。打ち合ったらだめだ。それにナイフはリーチが短いから向こうが当たる距離でもこっちは当てることができない、不利だ。
想像してみよう。相手は上から下に向かって剣を振り下ろしてくる、その時ボクはどうすればいいか。後ろに下がって避けるのがいい、相手が空振りした後でナイフが当たる距離まで近づけばいい。
想像してみる。タッ、ヒカリは体ごと素早く一歩分下がることができ、ヒカリは満足そうな表情を浮かべた。武器が軽いから剣よりは早く動ける気がする。タッ、もう一度やってみる。いい感じだ、このまま逃げるというのはどうだろう。相手は力いっぱい剣を振った後ですぐに走ることはできないはずだ。
もし後ろに行けない状況だったら?例えば壁なんかがあったりしていけない時。そしたら右に動こう、やることは同じだ。タッ、右に動けた、今度は左、いい感じだ。相手が上から振り下ろしてきたときに右に交わしてーーー
「ダメだ」
相手はきっと振り下ろした剣を横に払ってくるだろう。そうしたら僕は切られてしまう。ナイフじゃ防ぐことはできないだろう。
「そうか」
後ろに躱したときは距離が遠くなったから大丈夫だと思ったけど左右に動くのは距離が当たる距離のままなんだ。やっぱり後ろに躱さないと駄目だ。後ろに躱した後で走って逃げよう。
想像してみる。相手が剣を構えて振り上げて下す、どのタイミングでかわすのがいいだろう。構えてるときに躱して逃げる、これは駄目だ。相手はそのまま走って追いかけてくるだろう。力いっぱい振り下ろしてもらわないと追いつかれてしまう。
それなら振り下ろす時だ、当たると思った時に躱すから効果があるんだ。当たるか当たらないかのタイミングで躱す、怖い、怖いけどこれが一番逃げれるやり方なんだ。ちゃんと練習していざというときにできるようにしておかないと。
逃げれなかったらどうしようか。もし誰か守らなきゃいけない人がいたら?そうしたら相手を倒さなくちゃいけない。躱した後でナイフが当たる距離まで近づかないといけない、そうしないと倒せない。
想像してみる。相手が振り下ろしてきたタイミングでタッ、後ろに跳んで躱す、そうしてから相手に近づいてーーーダメだ当てられる気がする。一回後ろに下がったことで相手までの距離は最初よりも遠くなってしまった。その間に相手は振り下ろした剣を横に払ってくるだろう。
横に払った剣の届く距離よりも遠くに動いたらどうだろう?それなら相手に攻撃は当たらない。いや駄目だ、そうなるとボクは相手から離れることになる。ただ躱しているだけで相手に攻撃を当てることができない。
どうしようか。
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