25話
「僕が商人になろうと思ったのはそれが理由なんだ。君たちがさっき行った商店なんかは大きな商店同士で手を組んで情報を隠して安く買って高く売ることで利益を独占しているってわけさ」
なるほど。
「簡単に言えば僕にはコネがある。だから僕ならもっと探索者に報酬を払うことができる、だからもし今度手に入れたら僕のところに持ってきてほしい。僕は彼らほどがめつくないからね。そういうことさ」
「コネとは?」
「僕の父親は貴族なんだ。だから僕は子供のころからほかの貴族と付き合いがあるし、学校の同級生も貴族だった。パーティーも好きだから友達も多いよ」
「貴族に直接売るつもりか?」
「そうだよ、そうすれば中抜きされないですむからねー」
「証拠は?」
「僕が貴族の息子だって証拠?うーんどうしようかそんなこと考えてなかったよ………オッケー!それなら僕の家に来てみる?父さんはいるかどうかわからないけど。それでどうかな」
行きたくないな。
「なぜ商人に?」
「兄弟が多いからね領地には限界があるし。それに楽しそうだから、あと自分でお金稼いでみたいんだよね」
うーむ、どうだろうか。怪しいと言えば怪しい気がするが。けどこいつには気品というか紅茶を飲むにしても格好が様になっている気がする。
「ヒカリ、あれを」
白銀が言う。こいつはこの男を信用しているのか?
「いいんですか?」
「ああ」
「あれ、アイテムを持ってるの?」
「売らなかったからな」
「そうなんだー不思議ーなんで売らなかったの?」
それは白銀が売らないといったから。
「さあな」
「教えてくれてもいいじゃーん」
「これです」
ヒカリがテーブルにジャージ一式を取り出した。
「すばらしい」
ノリユキの顔が欲望にゆがんだ。こんな顔するのかこいつは。
「触っても?」
「ああ」
「いままで触ったことのない手触りだ。それに形も見たことがないしこんな細かく均一な縫製はすばらしい職人技というしかない」
機械の大量生産品だと思うが。
「それにこれ、上下に上げるだけで開けたり閉めたりできるだなんて画期的にもほどがある、いまだかつてない技術だ」
ノリユキがチャックを触りながら言う。そうかそんなこと考えたこともなかったな、けど初めて見たのなら驚くだろうな、あるのが当たり前みたいに思っていたが作り方も仕組みもわからないし。
「デリック商店はいくらの値を?」
「20万」
「僕ならその4倍は出すね」
「売れるのか?」
「問題はないと思う。貴族にとってダンジョン塔のアイテムはブランドだし欲しがる人間は多い、逆にそれを持っていない貴族を探すほうが難しいくらいだ。とにかく見栄を張りが足るからね」
俺が思う貴族のイメージそのままだ。だとすればあまり近寄りたくない存在ということになる。それが分かっただけでも来た価値があったかな。
「もしかしたら200万か300万で売れるかもしれない」
「それなのに買取は80万なんですか?」
「すぐに金が欲しいのならそれが基準になるかな、まあ100万でもいいけど。売れてからこっちの取り分を差し引いて残りを払うこともできるけどそれだとある程度時間がかかると思う。」
今気が付いたがこいつの口調、最初とだいぶ違ってるな。こっちが本性なのか?
「後者の場合、高く売れる可能性もあるが80万より安くなるかもしれないということか?」
「まあそうだね一応、そんなことにはならないと思うけど」
「そっちの取り分は?」
「前者の場合はなし、後者の場合は20%ってところかな」
もし仮に200万で売れた場合は160万がこっちで40万が向こうってことか。即金で100万を選ぶか、いくらで売れるかわからないほうを選ぶか。どっちにしても普通に売るよりは
高く売れるわけだが。
「後者にしようか」
「契約成立かい?」
「ああ」
「いいんですかノブナガさん、お金すぐに手に入らないですけど」
「ああ、もし高く売れた場合後悔しそうで嫌だからな」
「確かにそうですね」
「うわーよかったー初めての取引成功だよー」
口調が戻ったな。
「初めて?」
「みんな心配症で誰も話聞いてくれなかったんだよねー」
大丈夫だろうか。
「大丈夫」
白銀、お前はなぜそんなに自信がある?
「この服は預かることになるんだけどさー不安でしょ?そのまま持って逃げるんじゃないか、とかさ」
確かにそうか、考えていなかった。
「だからさー僕はこれを君たちに預けておくよ」
ノリユキがテーブルの上の置いたのは皮の鞘に入ったナイフ。鞘の表面には英語でSMITHと印字されている。
「これは?」
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