20話
「金が欲しい」
「どうしたんですか急に」
「どうしたもこうしたもこれを見てみろヒカリ」
「お財布ですね」
「ジャラジャラジャラジャラ銅貨ばっかりだ」
財布の口を開いて掌に中身を出す。
「ちょっと待ってくださいよ、それ俺たちの金っすよ、ちゃんと返してくれるんすよね」
スギタが悲痛な声を上げた。この男は案内役ということで付けられたハヤシの部下だ。領主との交渉が決まるまでの間、街を案内してくれるということだが同時に俺たちが何かしでかさないための監視役でもあるだろう。
「そのうち返す」
「それ、金返さないやつが言いそうなセリフっすよ」
「金金うるさい」
「金がないのは誰のせいだ。黒いパンなら安く買えたのに白いパンじゃないと嫌だとか言ってるからただでさえ少ない金がどんどん減っていくんだぞ白銀」
「あれは食べれたもんじゃない」
「食べてもいないのに言うな」
「確かに白いパンはおいしかったですけど」
「ほら」
「ほら、じゃない」
「それならノブナガは黒パンを食べればよかった。それなら少しは安くなる」
「まあまあまあお二人とも落ち着きましょうよ、ちゃんと働けばいいんですから」
「働く?」
「今は魔獣に対して警戒しているので自由に街を出入りできないですけど街の中でも仕事はあるはずですから、下働きとかしてお金を稼ぎましょうよ」
下働き?
「さっきのパン屋さんでも募集してましたよ。朝四時から夜七時まで働いて一日3,000Gもらえるみたいですよ」
「落ち着けヒカリ」
「落ち着いてますけど」
「一日中仕事をするなんて人間のすることじゃない」
「その通り」
「白銀さん…」
「ないならあるところから取ってくればいい」
「ちょっとーー」
「確かにな」
「お二人とも落ち着いてください、泥棒ですよそれは」
「俺も兵士としてそれは見逃せないっすよ」
「落ち着け二人とも、冗談だ」
「冗談」
「あーよかった冗談だったんですね」
「全然そうは見えなかったっすけど」
「そうするとアレしかないか」
遠くにありながらも力強い存在感を示す塔。街のどの建物よりも高くそびえる黒い塔。
「ダンジョン塔」
「あそこにはお宝がざっくざくなんだろう?」
「そうっすけど危険っすよ。入ってったほとんどのやつらは帰ってこれませんから」
「ハイリスクハイリターン、か」
「たった半日で何百万稼いだとかレアアイテム手に入れて貴族になったとか、そんな夢みたいな話はいくらでもあるっすよ。けどそんな話を真に受けて俺の友達もダンジョンで大金持ちになるとか言って入ったすけど、3日もしないうちにもう帰ってこなかったっす」
「やる」
「えーーまじっすか」
やるしかないだろう。ゲームにダンジョンがあるのに入らないなんてないだろう。牧場で素材集めて道具作ったり林檎とか育てて売ったりする要素とかもあるのかもしれないけどそんなゲームは性に合わない。
「お前はどうする白銀、パン屋じゃなくても下水掃除の仕事もあったぞ」
「絶対無理」
漢字四文字で拒否するな。
「討伐系ならダンジョン塔じゃなくても森の魔獣を倒すほうが人気があるっすけど」
「魔獣なんかめったに出てこないだろ」
「そんなことないっすようじゃうじゃいるっすよ。というか誰かが数を減らしてくれないと大変なことになるっす」
「そんなこと言ってここに来るまでの間一度も出会わなかったじゃないか」
「それはそうっすけどそんなこと滅多にないっていうか隊長だって初めてだって言ってましたよ」
「大体なんで宝箱のない森に行くんだ塔のほうがいいだろう」
「ダンジョンで魔獣を倒すと肉が手に入らないっす、それにダンジョンには突然強い魔獣が現れたり魔物だらけの部屋に転移したりとかするって話っす」
魔物だらけの部屋、モンスターハウスか。やっぱりゲームだな。
「森で魔獣を倒すほうが安全っていうことですか?」
「そうっす。3年以内に死ぬ確率が倍以上違うっていう話ですよ」
「それじゃあそっちのほうがいいんじゃないですか?」
「それはないだろ」
「なんでですか?」
「なんでって森だぞ、森。森といえば虫の宝庫だ、そんなところを歩きたくない」
「まあ確かに虫はめっちゃいるっすけど」
「白銀はそっちのほうでもいいぞ」
「断固拒否」
漢字四文字で拒否するな。
明日も更新予定です。
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