15話
「なんもしてないじゃないですかー主たちが話があるんですよー」
人間の言葉を自由に話すことができる。これは高位に分類される魔獣である。必然的に戦闘力も高くなり注意が必要になる。
「なんだこいつの喋り方は」
そう、一番引っかかるのは意味不明な明るさ。飲み屋で仲のいいお調子者の後輩が喋ってるみたいだ。もしかしたら相当に強い魔物かもしれない、それは予想していたがこの喋り方は予想外だ。
「隊長ー」
俺に言われたってわからん。どうしましょう、みたいな感じでシミズが喋りかけてくるが知るか、と言ってしまいたい。
「とりあえずは何にもしませんからーちょっと話聞いてくださいよー」
胡散臭い、だがとりあえず話をしてみるというのは悪くないかもしれない。言葉を喋れるといってもそれはランクの高さによってまちまちでランクの低い魔獣は片言だったりするから、まあコイツの感じをみるとその可能性は低いが。
「うわぁ」
寒気がした。部下の一人が合図なく弓を放ってしまったのだ。矢は誤発射だったようで魔獣を掠ることすらなく射程外だったことから威力もなかった。
「おうおうおうおう、そう来ますかまさそう来るとはねえ、これは少々痛めつけてやらないといけないっすねえ」
「来るぞ!!」
照準から一瞬で魔獣が消えた。急速な低空飛行であっという間に隊列へと突っ込んできた。
部下たちの叫び声、そこには自分の声も混じっていたのかもしれない。弓を捨て剣を取り出す暇もなかった。防具を貫通するほどの威力の何かに体を切り刻まれた。
「構えろ!!」
通り抜けた魔獣はあっという間に再び距離を取り空中で停止していた。それはさっきと同じく矢の射程範囲の外であった。こいつはこちらの射程範囲を完全に把握していると考えて間違いなさそうだった。
「被害は!」
「死者、重傷者いません!」
シミズが大声で報告してくる。いい部下だ。普通であれば混乱してもおかしくないが即座に状況判断ができたのは褒めてもいい。
だが血が止まらない。急所には当たっていないが傷はある程度深さがあるようだ。このままではただ弓を構えているだけでも衰弱していくのは明らかだ。
「敵は急激に位置を変えて突進してくるぞ、発射の合図を待たず個々の判断で射程に入ったら打て!」
「そうっすよねーそうするしかないっすよねー」
魔獣はこちらの指示を完全に聞いている。やりにくいったらない。
「おっと、いいことを思いついたっすよ」
魔獣はへらへらしている。憎たらしい野郎だ。
「この距離だったら当たらないっすもんねえ、サービスタイムあげますよお。そんでもってしばらく動かないでいてあげますよお、そんならあんたたち当て放題っすもんねえ。優しいでしょー世の中にはいい魔獣もいるんっすよー」
そのままゆっくりと魔獣が距離を詰めてくる。もう少し、もう少しで届く。
「放て!!」
グオッという呻き声。
「痛い、痛すぎる」
矢が魔獣の体に突き刺さっていた。
「そんな馬鹿な、こんなこと」
予想通りでもあったし予想外でもあった。
「構え!!」
刺さったのは1本だけ、しかもその一本すら浅い。
「ただの矢じゃない」
初めて魔獣から怒りを感じた。
「その通りだよくわかっているじゃないか魔獣」
魔獣の体を境に矢は切り落とされそのまま地面へと落ちた。くそっ、刺さったままか抜いてしまえばこちらに有利だったがそうはいかなかった。やはり知性は高い。
「痛てえ痛てえよ、喰ってやる、全員喰ってやるぞ、雑魚っちい人間のくせにこのやろうー」
「放て!!」
甲高い奇声を上げながら魔獣は猛烈な勢いで独楽のように回っていた。
「耳が」
「剣を持て」
棒を突っ込まれてみたいに耳の穴の中が痛む。両手を使って塞ぎたくなるがぐっと堪えて剣を持つ。
「突進してくるぞ」
「うわ!矢が」
到達するよりも矢は弾き飛ばされた。あの回転、突風でも巻き起こしてるのか?
「来たぞ!」
回転したまま猛烈な勢いで魔獣が突進してきた。
「くらえ!」
上段に構えた剣を一気に振り下ろす。マズい、最初の突進よりも早い。息もできないくらいの衝撃とともに視界がぐちゃぐちゃになり、その直後地面にたたきつけられた衝撃。まずい弾き飛ばされた。
「ぐあああああああああああーーーーー隊長ーーーー!」
幸いにも手放していなかった剣を構え直そうとしたところで聞きなれたシミズの叫び声が聞こえた。
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