39 魔神と記憶
光を抜け出すとそこは、転生前に神様と話をしていたことろだ。
あの《転送》は、神の領域にも行けるのか。だとしたら、どうやって来たんだ?
やっぱりサクラ十家の人達は、魔神の領域に行く方法を知っていた。と言う方が、しっくりくる。
前言撤回、今のサクラ十家を人と呼ぶのは、些か無理があるな。
サクラ十家は、一人一人が師団長に融合している。途端、師団長の姿も変わり、人と呼ぶのは無理の領域に入った。
全身が黒く染まり、身長は二メートルを超す。背中には黒い翼が生え、羽根を一枚魔神が抜き取ると武器に変わる。
正しく、チートだな。
勝てるかな?勝てなかったらあの世界消えるだろうし、勝てたとしても腐っても神だ。今後の世界がどうなるか想像がつかない。
「痛!」
《転送》された人達も全員来たみたいだな。俺、彩夜、そしてニーナさん。こんだけかな。
「ここ何処!?」
ニーナさんも状況が把握出来てないのか、挙動不審みたいに動いている。
それにしては、何故ニーナさんなんだ?勇者だってさっきまでいたし······《転送》をした基準がイマイチ分からない。
「ココハシンイキ。オマエタチガアガメルカミガイルリョウイキダ」
「蓮君、何あれ?」
「魔神」
魔神は言葉がカタコトで聞にくい。
彩夜も答えに満足したのか、攻撃の準備に入る。よっぽど攻撃は当たらないと思うがな。
だけど神だからな。ユニークスキルを上回る動きをして、攻撃を当てることもしてくるかもしれない。
平和的解決が出来ないか、交渉するか。決裂したら、7割がた負ける可能性があるけどな。
ニーナさんを持ちつかせるのは、彩夜に任せる。
「魔神?出会ってるか?」
「レン・シノノメ、アッテイルゾ」
自我あり。交渉の余地はあるな。
「魔神って神話上の生物だよな?なんだ、サクラ十家は魔神の欠片で、融合すると魔神になるのか?」
「クックックッ、チガウ。ワレハ、ゼンマオウガコノバショデユウゴウスルトコノスガタニナレル」
これで魔神とサクラ十家の正体が分かったな。
サクラ十家は、魔王。しかも、十人全員がだ。更に部下達は全員、魔族って考えて良い。
魔神はこの神域で、魔王全員が融合すると魔神が生まれる。
勇者は全魔王がこの神域に集まらないようにするために、魔王を倒していたんだな。だけど今回は、初めからいたと。
はぁ、今回の事は既に決まっていたことだったんだ。
「お前らの慕っていた王は何処に行った?あと、何故ニーナさんをここに連れてきた?」
「アンナツカエヌオウハ、シタッテイルニアタイハシナイ。アンナグオウハ、コロシテヤッタヨ。ソコニイルオンナハ、ゼンカイノユウシャダ」
あんなに国王陛下とか言ってたくせに、内心は愚王と。センスが感じられるな。
んで、ニーナさんは前勇者か······今回の勇者、前勇者のニーナさんよりも弱いのか。
「レン・シノノメ、ワレハオマエヲカッテイル。コウショウヲシナイカ?」
よし、乗ってくれた。このまま行けば、平和的解決で済むな。多少は血が流れるけどな。
「コウショウナイヨウハ、エイキュウテキニコノセカイセンノホシヲコワサナイコト」
「待て待て、世界線?パラレルワールドって解釈で合ってるか?」
「ソレテヨイ」
パラレルワールドと来たか。
俺の予想ではこの星は壊さない、が出てくると思ったのだが予想の遥か斜め上だ。
この世界線は壊さない。この言葉で、ほかの世界線は滅ぼすが、この世界線は滅ぼさない。
「そんな口約束だけじゃ信用ならんな」
「ホウ、デハ、コレデモンダイナイ」
翼の羽根を一枚取り、平ペったい長方形の何かにする。魔神はその何かを操作している。
「コレデヨカロウ」
ーーズキン
頭が痛くなってくる。
これを手に取ってはいけないのだと、警告をしてくるかのように。
脳が警告しても、体は動く。警告は好奇心に負け、俺は平ペったい長方形の何かを取ってしまった。
全身に鳥肌が立った。
平ペったい長方形の何かは、地球で暮らしていた人なら一度は聞いたことがある物だ。
魔神が持っていたものは、スマートフォンだ。
ーーズキン、ズキン、ズキン······
痛い、痛い、痛い、痛い······
永遠に終わりのない頭痛に晒されてる。同時に霧がかかった様な転生前の記憶、つまり俺が殺された理由の記憶も戻りそうだ。
だけど、見たくない。
自分が誰に殺され、何のために殺されたかなんて、見たくない。
友達、親戚、借金取り、先生、近隣の人······思いつく可能性はいくらでもある。
ーーガチャ
脳内にそんな音が響いた。いや、響いてなんかいないのだろう。勝手に想像が作り出したのだろう。
ーー過去ーー
借金取りから追われていた俺は、色んな県に行っていた。
国外逃亡も考えたが、何分お金が無いから無理だった。
そんな矢先、都心で事件が起きた。
未確認生物が都心で大暴れ。一気に国は崩壊していった。
いろんな国が攻撃を仕掛けたが、ほぼ無力だ。攻撃を仕掛けた国は、次の日には巨大なクレーターだらけになっている。全生命体が絶望の淵に立っていた。
俺は山に逃げ込み、自足自給の生活を送っていた。
当初はよかったが、段々と生物が枯死んでいった。
そこで俺は、町に出ることにした。今思えば、この行動が最悪の片道切符だったんだ。
俺は未確認生物に見つかり、殺された。あっさりととはいかず、この世界のことについて全部追求された。言わない時があると、片腕が消し飛んでいった。
結果、俺は四肢を無くし死んでいった。
復讐心を燃やしながら。
ーー現在ーー
過去を思い出した。俺はこいつを殺さなければいけない。例えそれが、道ずれになろうとも。
「《強化》」
「フグっ!」
足を強化して、魔神の顔面を蹴る。
「コウショウケツレツダナ」
「ああ、そうだ」
さっきから彩夜とニーナさんがポカンとしているが、臨戦状態になっている。
戦えるな。
「全人類······いや、地球上にいた全ての生命を殺したお前を、地球を代表として絶対お前を倒す!」
「ワレハ『魔法の創造主』、『魔族の神』、『魔物の創造主』。コイ、チキュウヲダイヒョウスルトノタチヨ。コレガサイゴノタタカイダ!」




