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34 筒抜け

 二十一時、みんながピリピリし始めた。あと一時間で、出陣。

 一国VS俺と勇者パーティ、差は明確にこっちが不利だ。こっちから仕掛けなければだ。

 襲撃するのでもしかしたら、民間人を殺してしまう可能性さえもある。その時俺は、躊躇ってしまうだろう。それが敵であろうが。


 三時間前、勇者本人にユニークスキルは何かと聞いた。


「僕のユニークスキルは《コピー》、最大三つまでコピー出来ます。今は、サヨさんが持っている《テレパシー》、前勇者が持っていた《フルパワー》と《鉄壁》です。《フルパワー》は、文字通りフルパワーが出せるようになります。一日だけですけどね。《鉄壁》は、攻撃がほとんど僕に入らなくなります」


 ふぅーん、と思いたがら聞いていた。

 彩夜の《絶対回避》をコピーしなかったのが気になるが、聞かなかった。


 空を見上げると、暗雲が王都の方に見える。まるで、乱戦を予想しているかのように。


 ▷


 二十二時になり、みんなが街の出入口に待ち構えた。「血が騒ぐのぉ」とか聞こえてきて、何歳だよ!ってツッコミたくなる。


「サラム王国王都に向けて、出陣するぞ!」

「「「おー!!!!」」」


 戦国時代か!とツッコミを入れたいが我慢をする。騒がしい方々だなと思いこみ、最後尾を歩く。

 ニーナさんは第四王女の警護をするらしく、この戦いには居ない。女性を戦わせるのもどうかと思うけどね。あ、彩夜か。


 みんなガシャガシャと鎧の音をたてているが、俺は鎧の類を来ていない。勇者でさえも、全身を鎧で覆っている。

 重いと行動に支障が出ると言って着ていない。ローブは彩夜が持ったままなので、ザッ村人になっている。


 今更だが、街にいた聖騎士軍の人たちは、勇者パーティの血の気の多い人たちがご丁寧に倒していた。



 こちらも不測の事態は想定していたけどこれは不測ではなく、異常の事態だ。異変と言っても過言では無いかも。


 魔物が一体もいない。


 ただ単純に寝ているだけと思ってマップを表示したが、マップ上にすら表示されていない。

 最大まで拡大して細かく見てみるが、魔物はいない。

 時折勇者も確認に来るが、魔物はいない。


 既に敵の掌で踊らされているのか?

 訳が分からない。けどもしそうだとしたら、俺たちの敗戦は目に見えている。

 守備から攻撃まで、勝ち目がないとかそのレベルの問題じゃ無い。


 暗雲は既に頭上まで来ており、いつ雨が降るのか分からない。月明かりも無いまま王都へ進む。


 ▷


 王都に一番近い山に身を潜め、王都の様子を伺う。

 明かりが一切灯っていない。

 やられた。俺たちは誘い込まれたんだ。そう思った方がいい。


「うっ!」


 勇者が連れてきた人の一人が声を上げる。嫌な予感だ。何せその人は、双眼鏡らしきものを使って王都を見ていたのだから。


「王都周辺に、下級から上級の魔族が······その数、百は超えてます」


 皆同様に絶句する。これは、負けじゃない。言うなれば、負け戦だ。

 この世界に、核爆弾があれば話は違うだろう。だが、そうな都合のいい話はない。

 次元が違う。作戦も筒抜けだ。どれだけ足掻こうが、赤子の手をひねると同じように倒される。

 撤退は無理だ。魔族全員がこちらを見ているからだ。


 百を超える魔族、聖騎士軍、国王······聖騎士軍全員が魔族、国王はそれを知っている。国王は魔王か?

 そうでもないと、魔族を従える何て無理だ。はたまたま国王は、伝説上の魔神か?それで、サクラ十家の人たちは魔王。

 こっちの方がしっくりくる。


 今考えても仕方の無いことだ。今は目先の問題をどうにかしないとな。


 勇者は地図を広げて、作戦を修正している。修正なんて聞かないだろうけどな。


「全員あの中に放り込むか?」


 勇者の気が狂ってしまった。そんなことをしたらシリンダーにかけられる紙の如く、俺たちは粉々とゆうレベルで消え去るぞ。


「勇者さん。一か八かに掛けませんか?」

「レン・シノノメ、君は何をするつもりだ?」

「承諾して頂けるのなら、お教えしますよ」


 困り果てた様に、顔を顰めている。

 俺からしてもどちらでもいい。この方法を使うか使わないか。

 使わないなら、彩夜を意地で助けて国外逃亡する。その場合、この世界が消えるかもな。使うなら、俺の命はないと思った方がいいな。

 別に決めるのは俺じゃない。俺からしたらこの世界そのものどうでもいいし、神様からこの世界を救えとも言われてない。

 故に、どうでもいい。

 今からなら、勇者一人で隣国に助けを求めるとこも可能じゃなないかな?


「分かった。君の考えに乗ろう」

「有り難き幸せ。作戦は、今から星を落とします」

「「「は!?」」」


 これは俺が持っている、最後の切り札だ。使ったあと、何が起こるかわからない。

 肉体が耐えれずに崩壊するかもしれないし、もしかしたら魔神になるかもしれない。はたまたま、何も怒らないかもしれない。

 俺でも何が起こるか分からないってことだ。

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