33 一ヶ月後
一ヶ月。勇者がこの国に駆け付ける時間だ。
一ヶ月。俺からしたら、地獄の特訓の日々だった。
今、目の前には、勇者とその仲間たちがいる。種族はバラバラで、人数は数十人だ。
これから、宿の一室で作戦会議が開かれる。勿論、サラム王国の悪事を暴くためだ。と、言いたいところだけど明らかに違う。
もし、それだけだったらこんなにも多くの人は要らない。
勇者はこの人数で一国と争う気だ。どこからその答えが導き出されたのか、聞きたいものだ。
いや、今から聞けばいいことか。
この場にいるのは三人。俺と、勇者、第四王女だ。部屋には重々しい空気が流れていて、口を開けずにいる。
誰か、この沈黙を破ってくれ。
「では、始めましょう。王都を襲撃する作戦会議」
「ちょっと待てよ!平和的解決じゃないのか!」
声を荒らげた。ニーナさんから事前に聞かされていたのは、平和的交渉による解決、だった。
でも今勇者の口から発せられたのは、平和的解決ではなく、武力による解決だ。根本的に意見が違う。
「僕も平和的解決を望んでいましたがサラム王国自体、魔神に関与している可能性が出てきたので、武力解決に踏み切りました」
「魔神?魔王の間違いじゃないのか?」
「ええ」
この作戦会議、嫌な予感がしてきたぞ。
確かに、勇者が引き連れてきた種族の方々は如何にも戦闘できますよ、のメンツだったからな。と言うか、武装してたしね。
「でも、サヨ・モチヅキさんの救出が一番の目的ですけどね。その後の事は、二の次ですかね」
何でだろう。この勇者がだんだん変態に見えてきた。
彩夜は百二十年生きているって宣言していたけど、見た目は十歳位にしか見えない。
しかも、転生前の年齢も八歳ときたものだ。
この世界では知識を溜め込んだ、と言えばそうであろうが、地球の常識がまるで無いから、前みたいにメガネとヒゲの変装で誤魔化せると言い張る。
精神年齢も幼い気がしてきたぞ!
「王都の侵入経路は、私が抜けてきたルートを使えば問題無いと思います」
「分かった。ところで勇者さん。名前を伺っていいですか?」
みんながみんな勇者勇者言うから、本名自体知らない。又は、名乗ってない可能性があるな。
「僕は、永城圭杜です」
ホッ、良かった、厨二病な名前を出してこなくて。「我が名はダーク〇レイムマ〇ター」とか言ったら、はっ倒すつもりだったが心配無用だったな。
話は順調に進み、最後の話になる。
「では最後に、サクラ十家の事を聞きたいです」
「同意。第四王女アジェナさん、お答えして頂けますでしょうか?」
「これから敵対するんだ。言っても問題無いでしょう」
今思うけど、前置きがイラつくな。前置きってそんなに重要だっけ?
「サクラ十家、秘匿名、魔神の信仰者。つまり狂信者の集まりです。ただ、強さは折り紙付きです」
「魔神?魔王じゃなくてか?」
「はい。魔神自体存在するのかどうか怪しいですが、信仰しているらしいです。後、サクラ十家の部下の方々も、信仰者です」
これは一筋縄じゃな行かないな。
国王が直々に任命しているから、国王も、魔神の信仰者かもしれない。
そうなると、国王の家臣達もそうかもしれない。一気に敵が増えたな。
だから勇者が、あんな武装集団を引き連れてきたんだと思うけどな。
「作戦決行は、明日の二十二時です。頑張って行きましょう。では、解散」
俺は外に出る。
外では勇者が連れてきた武装集団の方々が、各々したいことをしている。
夜風が涼しい。
ステータス画面を表示して、スキル一覧を見る。
この一ヶ月間で、《無属性魔法》のスキルを獲得出来た。MPの減り具合も少なくなり、新しい無属性魔法もできるようになった。後は、作戦の決行日まで待つだけだ。
ニーナさんに剣の稽古をしてもらったおかげで、一般の兵士並には振れるようになった。実践では役に立つかは分からない。
彩夜がいると言われている異空間は、勇者が一人で解くらしい。
そんなに難しいのか······
第四王女さんは、ここで待っているらしい。王女だから仕方ないよな。
今の王が死んだら、継ぐのは第四王女らしいし。第一から第三までは、行方不明らしい。大方、今回の件に関与して行方不明になったらしい。
サクラ十家は、俺と勇者パーティ、武装集団の方々で倒す算段のようだ。
明日を待つだけだ。地面に寝転がり、目を閉じる。
どうか、彩夜が無事でいますように。今はただ、願うしかない。




