風紀委員会と生徒会 <改>
説明多くてすみません
◇ ◇ ◇
ナゼ、ワレワレハ、コンナトコロニ、イナケレバナラナイノダロウカ?
ダレガ、ココニオイヤッタノカ?
チヲナガセ、サケベ、オビエロ
ウバウ、コロス、ゼンブコワス
ジャマスルナラ、ツブス
ソウダ、ワレワレハ……
◇ ◇ ◇
今、悠は非常に困っていた。最近化けの皮が剥がれてしまったアキホが予算案の書類をバラバラに落としてしまったことや、そのフォローしようとしたリョウカが書類を拾い集めているときに、同じく手伝おうとしたハルカが転んでリョウカにクリティカルヒットをくらわせたことも確かに困りはした。しかしこれは……。
「子どもがどうしてこんな所にいるのかなー? ここは小さい子が来るところじゃないよー」
「ボクより一センチ背が高いからって威張らないでもらいましょーか。むしろ今この瞬間廊下で菓子を食べやがっている君の方が子どもではねーのですか?」
「なにをー!」
「ここで決着をつけてやりましょーか?」
悠の目の前では二人の少女が言い争いをしている。一人は長い紅の髪が特徴的な少女、もう一人はクリーム色の髪でショートカットの少女。
いったい誰がこれを見て第三魔導学園の生徒会会長と、風紀委員会委員長だと思うのだろうか。学園自治組織のトップ同士が顔を会わせたときから口論を始めていた。
(あなた方はどちらも揃ってお子さまだということを理解したらどうですか?)
そんな言葉を怒りのまま叩きつけることになっても、別にそれは悠の責任ではないだろう。
「いい加減やめなさい、シキちゃん」
「ヒノ様もその辺でおやめになって下さい」
生徒会副会長と、風紀委員会副委員長の制止でようやく二人の低レベルな口論がとまった。
現在悠は生徒会役員を連れて、風紀委員会の部屋を訪れている。目的は顔合わせである。
「なぜ、風紀委員会のところへ?」
「それは、風紀委員会もメンバーが揃って、本格的に活動を開始したからよ」
「わたくしたち生徒会の抑止力となる存在。それが風紀委員会の活動の一つなのですわ」
「もちろんボクたちは、学園内の治安維持や、不良生徒の拘束、不審者の撃退も仕事のうちだよ」
ハルカの質問に役員たちが答えていると、そこに言い争いをやめた風紀委員長が加わった。
「そうなんですか」
感心したようにハルカは言った。ハルカは先程までの振る舞いとのギャップがありすぎる風紀委員長を見て、少し戸惑っていた。
「それじゃあ改めて自己紹介をしようか。ミヅキー」
「はい」
こちらに歩いてくるのは、背の高い女性だ。やって来るのを確認して、風紀委員長は口を開いた。
「じゃあボクから自己紹介をさせてもらうよ。ボクの名前はヒノ・シアール。分かっているだろうけど、風紀委員長をしているんだ」
「自分はミヅキ・リースト。風紀委員副委員長をさせていただいております。」
「他のメンバーは各学年五人ずついるけど、今回は省略するよ。今はみんな忙しいからね。これからよろしく」
風紀委員会の自己紹介が終わると、ハルカが呟いた。
「会長と違って見た目年齢ほど子どもじゃないんですね」
地味に毒を吐くハルカの口撃によって思わず崩れ落ちる子ども二人組。
「ハ、ハルちゃんって、なかなか……手厳しいのね……」
トウワが思わず口に出した感想に、その場にいたほぼ全員が心の中でうなずいた。
悠と生徒会役員たちは生徒会室へ戻ってきた。
悠としてはもう精神的に疲れたので、帰って子どもたちと過ごしたいところであったが、仕事があるためそうもいかなかった。
こうして見るとメンバーがアレな感じもする生徒会。だがこの生徒会役員たちはトップクラスの魔法技能をもっている。それこそ卒業後、国のエースである宮廷魔導隊に入れるレベルである。
(まあ、他にも何人かこの学園には才能のある人がいますけど……)
「今度行われる第四学年魔物討伐演習について、今日は話し合いたいと思います」
「先生!生徒会には、四年生いませんよ? アタシは一年生だし、会長とトウワ先輩は三年生、リョウカ先輩とアキホ先輩は、二年生です」
「そうなの。だから生徒会の役目は風紀委員会のバックアップよ。まぁ毎年生徒会と風紀委員会で、予定が合う方に任せるようになっているからね」
◇ ◇ ◇
魔導学園では魔導師になるための教育を行っている。魔導師にもいろいろあり、学者タイプから前線で魔物と戦うものまで様々だ。第三学年までは共通課程だが、第四学年と第五学年は研究者になるか、戦闘魔導師になるか、選択式である。
研究者は、魔力などの理論を調べる魔導理論学者、魔法を使った便利な道具を創る魔導工学師の二つの道ほとんどの人は選ぶ。特に魔導工学の発展は、目を見張るものがある。冷蔵庫や暖房器具、電灯や水道設備が誰にでも使えるように純粋魔力で使えるようにしてあるのだ。
戦闘魔導師は、フリーで働くこともできるし、国に雇われることもある。貴族や大商人のお抱えとなることもある。
◇ ◇ ◇
「風紀委員の四年生が有事の際に対応の指揮をとることになったからねー」
お子さま会長も仕事は忘れないようだ。普段からお子さまと言われているが、やるべきことはしっかり……多分、しっかりやるはずだ。
「となると、その風紀委員の方々の仕事を肩代わりすればいいのですね?」
「そういうことー」
これから生徒会も忙しくなりそうである。
◇ ◇ ◇
――翌日――
こんにちは、御劔 悠です。突然ですが、こちらの世界の暦についてです。一月は三十日で、一日二十四時間、一時間は六十分、一分は六十秒で、一年は十二ヶ月、一週間は七日間となっています。地球とあまり変わらないですね。というか、ほぼ同じです。
魔導学園はひとつの授業に一時間、授業間の休み時間は十分となっていて、午前中は九時から二限、午後は十二時三十分から二限となっています。
私の受け持っている戦闘技能は一度の授業で、二限分の時間を用います。
まあ色々考えて現実逃避しても無意味なのですが、現在時刻九時……。
「遅刻だー!」
「な、なに? お母さん何かあったの?」
「うみゅ……ねむい」
本日は休日ではありません。これは非常にヤバいです。
「ルイ、ネル、起きてー! ごめんね、お母さん寝過ごしちゃった」
「急がないと!」
「ふぇっ?」
しっかり起きてるルイに寝ぼけているネルを任せて、私は身支度を整えます。
義務教育としていく学舎は、午前八時から五十分授業のち、十分休み時間のサイクルを四回繰り返し、十二時から昼食休憩一時間。その後また二回授業を行うようになってます。
「急いでいくよ!」
準備ができた子どもを両脇に抱えて一気に走ります。こんな人外のちからをだすことができるのも、実は魔法なのです。純粋魔力を体内で循環させるイメージで動かします。そうすると、通常の数倍から数十倍のちからを発揮できます。これは初歩中の初歩【身体活性】という技術です。
子どもたちを送り届けた後、休むまもなく学園へ行きます。間に合うといいなぁ。
結局間に合わず、きつく注意を受けました。とても悲しいです。
――第三魔導学園演習場――
今日は、三年生の授業です。今回行うことは、チームでの戦闘訓練です。魔導師の戦う相手は基本的には魔物です。魔物を一人で相手にするのはとても危険です。だから大抵の場合、何人かでパーティーを組んで挑みます。今回は五~七人で一つパーティーを組んで、私と戦闘してもらいます。
大体八パーティーほど出来ましたので、始めましょう。
◇ ◇ ◇
悠との模擬戦。これは、多くの生徒が恐怖する。悠は授業のときのみ、巫女服のようなものを着ている。普段なら多くの人が見とれるようなその姿は、もはや生徒たちにとっては悪魔のように見えていた。
ある生徒曰く、「あの先生容赦なさすぎて……。ちょっと引くかな……」とのことだ。
この学園に入ったことで少し増長している生徒たち。そんな生徒たちが現実を思い知るのは、この授業である。生徒たちは模擬戦の際、防護服(防御の術式が仕込んである服)を着る。殺傷力はほぼないが、それでも当たりどころによっては危険な模擬戦用武器、一歩間違えれば大惨事となる魔法などを使って模擬戦は行われる。そのためある程度のコストはかけてでも安全性を確保しなければならない。制服も防護術式が刻まれているが、防護服は模擬戦のときの判定ができるような術式がついている。だから授業では防護服を使うのである。
◇ ◇ ◇
魔術とは、術式を用いて発動する魔法である。一番の特徴は、属性に縛られないことである。それは、純粋魔力を属性をもった魔力に変換しつつ、発現させるという流れを擬似的に術式で行うからだ。術式とは、要は魔法陣などのことである。意味をもった複数の式を組み合わせてつくられている。また、魔法を発現させるのに必要なイメージの固定を行ってくれるため、詠唱が要らないのである。
しかし、デメリットもある。非常に繊細なため、戦闘中に描くことは難しく、普通は紙などに描いて持ち運びするしかない。術式を描いてある物が注がれる魔力に耐えられなかったら壊れてしまう。魔力消費が通常の魔法よりも多い。以上のことから、大抵の場合は緊急時の最終手段として用いられる。
◇ ◇ ◇
(ミツルギ先生の服、あれで模擬戦してるけど防御力があるようには見えないんだけど……)
トウワにとっての疑問は悠の服装であった。トウワが以前尋ねたときには、「これはちょっと特別なものでね……」と返されたことがあった。
(ミツルギ先生の言う特別とは何か、気になります! ってところだけど、今は目の前のことに集中しないと)
今回トウワのパーティーは、シキとヒノ、それと男子生徒二人。
「どうします? 作戦は」
『とりあえず接近して叩く』
(シキちゃんとヒノちゃんはこういうところは息がぴったりよね)
「もう少しきちんと考えないと、前みたいに瞬殺されますよ」
『……』
以前パーティー戦を行った際、シキ、トウワ、ヒノの三人は同じパーティーにいて、完膚なきまでに叩き潰されていた。
(今度こそリベンジしないとね!)
そう決意するトウワだった。
模擬戦の続きは次回




