第8話
剣を構える。
「ハンターか…」
少女が男を離すと、男は呻きながら倒れる。生きてはいるようだ。
「話を聞かせて貰うよ」
「ふん!おぬしに……くっ、がはっ!」
急に胸を押さえ、少女は苦しみ出す。
「どうしたんだ!」
少女は地面に倒れると身体を丸め苦しんでいる。
「なんだ!」
「こっちから声がしたぞ!」
路地裏の奥から、複数の足音が近づいてくる。同じ依頼を受けたハンターたちだろう。
「くっ……マズい、人が来る!」
アッシュは咄嗟に黒騎士を消し去ると、倒れた少女を抱き上げた。軽すぎる身体に驚きつつも、アッシュは足音とは逆の方向へ向かって全速力で走り去った。
走りながら通信機でマックとクロエに連絡を入れ、ギルドの駐車場で合流する。
「おい、アッシュその子…」
「吸血鬼!?」
「よくわからないけど急に苦しみだして、病院に連れていくわけにも行かないしマックは診られない?」
「んっ~、取りあえず俺たちの家に入れ。診てみるしかない」
「ありがとう!」
アッシュたちはトランクを開け、手すりと台座を使って一気に『トランクの家』の中へと駆け込んだ。
ダイニングテーブルの上に、そっと少女を寝かせる。
「よし…やるか」
マックは少女の目や口を調べる。
「ん?これは…血に混じって何かあるぞ」
マックは布を取り出し、少女の口元に付着していた液体を拭い取る。
白い布に、赤い血に混じって緑色の不気味な液体が付いていた。
「これが何かは調べてみないと分からないが、取りあえず胃の中を洗浄するぞ。お前ら手伝え」
「うん」
「わかったわ」
3人は一晩中少女の為に手を尽くすのだった。
アッシュ達は睡魔と戦っている中、朝日が昇る頃に少女の目が覚めた。
「んっ…」
「あっ、みんな起きたよ!」
「おう…」
「ええ…」
マックとクロエは徹夜の看病で疲れた身体を、ノロノロと動かす。
「大丈夫?」
アッシュが顔を覗き込むと、少女はうっすらと金色の目を開けた。
「んっ」
目の前にあるアッシュの顔に気づくと、少女は一瞬で頬を真っ赤にし、ぷいっと顔を逸らした。
「……助かった……のじゃ」
「はは、うん」
「ふう~、何とかなったか~」
「疲れたわね…」
「それにしてもどうしてあんなことに?」
「……薬じゃ………」
「えっ...」
「薬のせいじゃというておる。この街に何者かが薬をばら蒔いておる。わしは薬を吸いだしておったのじゃ。しかし、今回は吸いすぎたのかのう。吸いきれてなかったのか暴れる者が出たからの…」
「じゃあ『吸血鬼の呪い』ってのは…」
アッシュは息をのむ。
「その薬で暴走した奴だったのか…」
「誤解だったのね」
マックとクロエが呟く。
「おぬしらもし良かったらじゃが……助けてくれんかこの街の者を…」
「もちろんだよ」
アッシュは頷く。
「はっ…ったく仕方ねぇな」
「ふふ、いいわよ」
2人も賛成した。
「すまぬ…すまぬのじゃ…」
少女の目から涙が零れた。
「あっ!挨拶がまだだったね。俺はアッシュ、それで2人は…」
「マックだよろしく」
「ウチはクロエ。よろしく!」
「…ぐすっ…わ、わしはルナじゃ、よろしく頼む!」
4人は笑い合う。
ひとしきり自己紹介が終わるとマックが緑色の液体が付いた布を持ってくる。
「それにしてもこの薬?は何なんだ」
「まずはそれから調べてみないとだね」
「うむ」
「そうね」
「そういえばルナは日光だめなんじゃ」
「心配するでない、心臓を貫かれた上で日光にでも当たらぬ限り死ぬことはないのじゃ。ただどうしても力が入らなくなり弱るがの…」
「戦いになるなら任せて!」
「だな」
「それじゃあ、行きましょ!」
アッシュ達は、車から出ると謎の薬を調べに街へと歩いていくのだった。




