第6話
「ここはオレがやる」
先頭に立つ者の言葉で後の2人が頷き、魔神の欠片を持って何処かに消える。
「よくも魔神の心臓を!」
アトラが怒る。
「アイツの相手は私がします。ここは私に任せて皆さんは乗客の避難を!」
「はい!」
アッシュ達はオークション会場を後にする。
「始めようか聖人…俺はエボルだ」
謎の人物がフードを外す。
出てきたのは見た目は普通の青年だった。
「何者であろうと魔に関わるものは断罪します」
アトラは一瞬でエボルの前に移動し、エボルに手をかざす。
「断罪、『破壊の罪』」
アトラの声でエボルは破裂した。
しかし、あっという間に元の姿に戻る。
「ククク、そんなものでは死なないぞ聖人」
エボルの腕が変形し剣となる。
「これは……時間が掛かりそうですね。神聖術『裁きの槍』」
アトラの放った無数の槍がエボルに襲いかかるのだった。
ーーー同時刻、船内カジノ付近にて
「はっ!」
アッシュと黒騎士がキメラを切り裂いていく。
「コイツらあちこちに居やがるな。アイツがばら蒔いていきやがったのか」
マックは2丁の銃で器用にキメラの頭を吹き飛ばす。
「みんな船室に避難出来たかな?」
クロエも持ち前の身体能力で一体ずつ首を切っていた。
3人の活躍でカジノエリアのキメラは一掃された。
その時、再び爆発音が響く。
「上からだな」
「多分デッキの方よ、行ってみましょう」
アッシュ達はデッキへ向かうのだった。
ーーー少し前、デッキにて
「ルカ、カイ無事だったのね」
「ハルも無事で良かったのであ~る」
「魔神の心臓の欠片は競り落としたプルッ?」
「あ~、無理無理。変なのに競り負けちゃった。ルカが気を聞かせてもうちょっと稼いでれば勝てたんだけどね~」
「む、無茶苦茶であ~る」
「ドンマイだプルッ」
「それにアタシ達を捕まえた変なのも出てきてさ~、逃げて来たってわけ」
「あのフードが来ているのであ~る?」
「アイツを思い出すと腹が立つプルッ」
「で、どうするよ?欠片は手に入るような感じじゃ無かったわよ」
「しかし、手ぶらで帰るわけにはいかないであ~るな…」
ルカがそう言い終わると同時にデッキの中心が爆発し、残骸が空に向かって吹き飛んだ。
「な、なんだプルッ!?」
片手が剣の青年と、光の槍を持った青年が飛び出して来る。
「あ、アイツよ欠片取ったの!もう1人は競り落とした奴だわ」
「ふむ、チャンスであるな。どさくさに紛れて盗むであ~る」
「やるプルッ!」
「よし、アタシ達ハルカイのチカラを見せてやりましょ!」
「「「お~!」」」
「神聖術『聖光の木槌』」
船のデッキで光るハンマーがエボルを叩く。
しかし、エボルは潰れてもゴムのようにすぐに元に戻った。
「ククク、無駄無駄」
エボルの口から、丸い肉片のようなものがいくつも転がり落ちる。
転がった肉片はあっという間に、先程のキメラに成長した。
「神聖術『浄化の柱』」
キメラ達が光の柱に焼かれて死ぬ。
「また、神聖術か」
「だからなんだと?」
「お前のように有名人だと能力の把握は容易い。断罪は任意に定義した罪の重さによって攻撃される。しかもお前を中心に広がる範囲の中でだ…広げると一般人も巻き添えをくらうのかな?」
「…なんにせよ、貴方を倒して見せます」
「クク、出来るかな」
その時だった。
エボルの足元に四角い機械が転がる。
そしてその機械ごとバリアがエボルを包む。
「ク?なんだ?」
四角い機械が光るとバリアの中を衝撃波が襲った。
連続して衝撃波がバリアの中を襲う。
エボルはバリアの中で潰れて液体のようになった。
「やったであ~る」
「ナイスコンビネーションね!」
「やったプルッ」
アトラが声の方を向くと3人組がハイタッチしているのが見えた。
「勝手に殺すよ、クク」
バリアが割れ、液体が飛び出すとエボルは元の姿に戻った。
「さて、そろそろこちらの番かな」
エボルの背中から腕か何本も飛び出す。
「死ね人間どもっ!」
「っ!」
腕が槍のようになり雨のように降り注ぎ、アトラとハルカイ達3人に襲いかかる。
アトラと3人組は間一髪躱す。
「ひっ、アイツ化け物ねっ!」
「や、ヤバいであ~る」
「当たれば……あれ?大したことは無いかもプルッ…」
アトラはエボルを睨み付ける。
「再生能力というには多才過ぎる。何処かに核を持ったモンスターか」
「クク、っとぞろぞろと集まって来ましたか」
エボルの視線の先にはアッシュ達の姿があった。
「楽しくなって来たね、クク」
エボルは再び大量の腕を槍のようにして攻撃をする。
アッシュ達やアトラ、ハルカイ達はそれぞれの武器で腕を防いでいく。
縦横無尽に迫る攻撃に、エボルに近づけないでいた。
止まない攻撃にアッシュはある決意をした。
「マック!クロエ!援護をお願い!」
「お前まさか……ったく。了解!」
「任せて!」
アッシュは黒騎士を召喚し自分の前を走らせる。
黒騎士は猛攻を凌ぎながら前へと進んでいく。
「クク、小賢しい真似を」
エボルの腕が枝分かれをして、黒騎士を無視して後のアッシュに襲いかかる。
「「させるか!」」
マックの銃弾とクロエの投げナイフがそれを全て弾いた。
一瞬だが隙が生まれた。
「黒騎士!」
アッシュは黒騎士の振る剣の腹を足場に、前へと加速すると、そのままエボルの腕を全て切り落とした。
「クっ!」
エボルに再生までの隙が出来る。
「核の場所を示します!神聖術『導きの光』。アッシュくん!」
エボルのお腹辺りが光る。
「くらえ!」
アッシュは手甲で光る場所を貫いた。
その手には光る固まりが握られていた。
「私の核が…!?」
アッシュは核を握り潰す。脈打つ肉の塊がドロリと崩れた。
「そんな…」
そう言うとエボルは倒れたのだった。
「ふう、終わったみたいですね」
「ええ、ですが魔神の心臓の欠片は奪われてしまいました」
そう言うとアトラは肩を落とす。
そんな中ハルカイの3人は隅に集まりなにやら話している。
「欠片が奪われたらしいプルッ」
「どうするよ欠片が無いと任務失敗よ。手ぶらで帰るわけにもいかないし」
「うぬ~、そうだあの小僧の手甲を奪えばいいのであ~る」
「いい案じゃないルカ!」
「やるしかないプルッ」
そうして3人がこそこそとたくらんでいた。
「エボルの死体が無いぞ!」
マックの声が響く。
「あそこよ!」
視線を向けるとエボルはいつの間にかデッキの先に移動していた。
「バカめ核が破壊されても即死するわけでは無い!俺が死のうとお前達も道連れだ。この秘宝でな!」
デッキの先でエボルの持つ水晶が光ると巨大な海獣達が海から姿を現す。
「せいぜい置き土産を楽しんで…」
「『白一閃』」
ドンッ。
風が吹き、白い光が夜空を切る。
音と閃光が収まると首から上無い海獣達が海に沈んでいった。
首から上が吹き飛んでいたエボルも海に落ちる。
波に飲まれ闇へと消えていった。
「船が壊れるのは困る。娘が寝てるんだ」
後から声がする。
振り向くとアリスのお父さんが剣を持って立っていた。
「やはり貴方は銀の剣聖ルードでしたか」
「…俺は戻る」
そう言うとルードは船内に戻っていった。
「あのアトラさん銀の剣聖って?」
「銀の剣聖はこの世界で最高峰にいる4人の剣士の1人ですよ」
アッシュは船内への階段に目を向ける。
「あれが世界最高レベル…」
アッシュは彼の放った一刀に思いを馳せるのだった。
まもなく船は港に戻ることとなった。
先日の博覧会と事といい、今回も連日報道されるような事件になりそうだ。
アトラさんは、一応魔神の心臓の欠片を追いかけるらしく船を降りると何処かに消えた。
アリスちゃん達親子はあの後は見かけていない。縁があればまた何処かで会えるだろう。
ハルカイの3人はルードさんがエボルを倒すどさくさに紛れて消えていた。
オークションでの出来事は後日話せばいいとの事だったのでアッシュ達は、船を降りると車で宿へと帰った。
疲れていた3人は寝る準備を済ませると泥のように眠るのだった。
次の日にギルドに呼ばれ、警察とギルドに何があったのかを説明することになった。
アッシュ達の活躍は乗客達の証言で裏付けられ、等級が3等級に上がることになった。
「頑張ったかいがあったな!」
「順調ね!」
「せっかくだし、依頼を受けていこうよ」
「そうだなこのままの勢いでいくか!」
端末機に向かい依頼を探す。
「ねえ、車もあるんだし遠出してみない?」
「おお!いいな。アッシュどっかないか?」
「う~ん……それじゃあ、この吸血鬼の討伐は?」
「場所はライゼラの街か、車で12時間くらいだし…いいんじゃないか?」
「決定ね!」
3人は依頼を受けると車に乗り込む。
「必要な物を買ったら出発するか」
「うん!」
「ええ!」
そうして街に車を走らせるのだった。
ーーー同時刻、ギルド前駐車場にて
中古の魔導車からアッシュを見つめる怪しい人影が3つ。
「動き出したわ!追跡よ!」
「早く出すプルッ」
「分かってるであ~る」
ルカが車を発進させる。
「欠片を追うよりアイツらの方が可能性があるわ!アンタ達、地の果てまでも追うわよ!」
「…そんなところまでは行かないと思うプルッ」
「で、あ~るな」
「う、うるさい!」
彼らの追跡もまた、始まったばかりなのである。
ーーー???
傷を負った1匹の地を這うドレイクがいた。
ドラゴンのなり損ない。
ハンター達に追われ、傷ついた身体で逃げていた。
砂漠を越え、森を越えて海に辿り着く。
逃げ続けていたため飢えていた。
身を丸め休んでいると、砂浜に打ち上げられているものを見つけた。
肉だ。
ドレイクはそう思いソレを貪った。
食べると身体が熱くなった。
ソレは頭の無い人間の死体だった。
身体中の骨が折れ、筋肉が千切れる。
ドレイクの身体はどんどん縮んでいった。
気が付けばドレイクは半竜半人の姿に為っていた。
身体が軽く、力が漲るのを感じた。
軽く拳を繰り出すと、木々が弾け飛んだ。
力だ。
欲しかった力がある。
海岸にドレイクの笑い声が響き渡ったのだった。




