第4話
大蜘蛛と戦った次の日。
アッシュ達はギルドに呼ばれ、感謝と追加の手当てを貰った。
1等級で受けた仕事が、4等級に上がった為だ。
俺達はギルドのロビー横の休憩所で、お茶していた。
「やったわね」
「報酬が10万ノルから30万になったね」
「素材を持って帰って来れてたらもうちょっと上がってたんだがな。まあ、人命救助優先だ」
「後はこの大蜘蛛の魔石をどうするかだね」
テーブルの真ん中に拳より一回り大きめの魔石をゴトリと置く。
「倒したのはアッシュだしアッシュが持っていってよ!それに手甲が吸い取るとこ見たい!」
「それでいいんじゃないか?」
「2人ともありがとう」
大蜘蛛の魔石を手甲で握ると、溶ける様に手甲に吸い込まれた。
「うわっ、ホントに溶けるようになくなるのね」
「どうだ?何か変化はあるのか?」
「う~ん、ちょっとは強くなった気がする」
「ならいいんじゃないか?」
「それより2人ともこのままこの3人でチームを組まない?2人と居るの楽しかったし……」
アッシュとマックは顔を見合わせた。
「こちらこそよろしくクロエ」
「よろしくな」
3人で笑い合う。
「さて、どうする?次の依頼でも探すか?」
「ウチは良いわよ」
「そしじゃあ「やあ、やあマックじゃ無いか!」」
マックの声を遮ったのはいつかのロイスだった。
「やあ、マックとその仲間達。活躍は聞いたよおめでとう」
「耳が早いなロイス」
「君達が助けたのは、パパンの協力会社の人なのだよ」
「へぇー」
「それでなんだが、君達にお礼と自慢を兼ねてこの『魔導技術博覧会』への招待状を渡すよ。ぜひ、わが社の技術を見ていってくれたまえ」
「凄いこんなのあるんだ!」
「出店も来るかしら」
「……ってな具合に2人が楽しみにしてるから行かせて貰うよ」
「楽しんでくれたまえ。それではまた会場で会えるかも知れないな。では、博覧会の準備で忙しいので今日はこの辺でさらばだ諸君!」
ロイスはそう言って去っていった。
「博覧会……そういえば宣伝してたな。なになに、初日は明日で…このチケットなら明日の関係者限定の日から入れるのか…」
「目一杯オシャレしなくちゃ、ウチは武器の手入れしてくる!」
そう言ってクロエは走って出ていった。
「……あのナイフ、オシャレなのか?」
アッシュとマックもマックが銃の手入れをすると言うので一旦別れることにした。
「また宿でな」
「うん」
ギルドを出るとアッシュは当てもなく街を散策する事にした。
屋台の出店を見てまわる。
しばらく進むと出店の1つで何かのトラブルが起きているようだ。
5歳くらいだろうかという銀髪の少女がうつむき、店主も困っている。
アッシュは声を掛けた。
「どうしたんですか?」
「いや、支払いの時にねお金が無いらしくてね、この子どっかで財布を落としたらしくてさぁ」
「あっ、じゃあ俺が払います」
そう言って店主に支払いを済ませる。
アッシュはしゃがむと少女と向き合う。
「これでお金は大丈夫だよ。お名前は?保護者の人は?」
「……名前はアリス。お父さんは分かんない……」
「そっか、それじゃあ。お兄さんと一緒に財布と、お父さんを探さない?」
「……うん」
「兄ちゃんその子の事頼んだぜ。俺もお客さんとかに声かけとくよ」
「はい」
アッシュはアリスの手を取り声を掛けつつ辺りをまわることにした。
「どの道を来たとか少しは分かるかな?」
「んっ、あっち」
少女の指差した方へ向かっていく。
その後もあちこち歩いて見たが少女の父親も財布も見つからなかった。
飲み物を買い、2人でベンチで休む。
「うーん、ねえアリス。もうちょっと探す?それとも最初のお店に戻ってみる?」
「ん~………あっ!お父さん!」
「えっ」
人混みから1人の男が出てくる。
アリスと同じ銀色の長髪に、黒いオーバーコートを着ている。
「探したよアリス、それと財布をみつけたよ。君は…あの店主に聞いたよ、アリスの面倒を見てくれてありがとう」
「あ、いえ。アリスちゃんはいい子でしたし…」
「お礼とアリスの使ったお金を返そう」
「いえ、いいですよ。俺も楽しかったので」
「そうか……また何処かで会えばアリスと仲良くしてやってくれ。さあ帰ろうか。では少年」
「お兄ちゃんまたね!」
「じゃあね」
2人は去っていく。
不思議な雰囲気の2人だった。
アッシュは飲み物を飲み終わると、宿へと帰っていったのだった。
翌日、マックに起こされ一緒に朝食を食べると、3人は博覧会に向かうのだった。
会場近くのバス停でバスを降りる。
会場周辺は既に人で溢れていた。
「凄いな、人が多すぎて何処が入り口なのか分からない!」
「ウチ埋もれてる!」
「あっちだ!」
喧騒でお互いの言葉も聞こえずらい程だ。
人を掻き分けながら入り口へと向かった。
チケットを見せて会場の中に入る。
「ふう、落ち着いた」
「一般公開は明日からなんじゃ…」
「今日展示や発表をするエリアだけが関係者限定だ、出店やパンフレットなんかを置いてあるエリアには入れる」
「なるほどね…」
3人は息を整えていた。
「さて、まずは何処からいく?」
「ウチは新作の武器が見たい!」
「俺は魔導ロボットが気になるかな」
「どっちもいいな、俺は魔導車かな。武器はロイスのところだな」
「時間はあるから入り口から順番に見ていこうよ」
「そうだな」
「ウチも賛成!」
博覧会では、様々な技術の発表が行われていた。
特に目を引いたのはやはりヒト型ロボットだ。
「帝国産の魔導機兵をモデルにした奴だな」
「こっちのは足が2足じゃ無いんだね」
「小回りや人の動きは真似出来んが、4輪の方が地上戦では高速に動ける想定らしい」
「ふーん、ウチにはよく分からないわ」
「まあ、荒野なんかで戦闘する時にはいいんじゃないか」
「魔導車はどう?」
「今回のはハイスペックモデルはあんまり出てこなかったからな~、空飛ぶ車は微妙だしな」
「武器は良いのが有ったわよ、可変式の武器とかロマンがあったわ~」
「そ、そうか」
クロエがうっとりしていた。
「もう少ししたら発表スペースでそれぞれの企業が一押しを発表するらしいから、それ待ちだな」
「やあ、マック!…ハァ、ハァ、ハァ。偶然だね!」
息を切らせながらロイスがやってきた。
「探し…ゴホン。まさかこんなところで会うなんて奇遇だね」
「お、おう」
「もうすぐわが社の商品を発表するんだ。良い席を用意してあるよ」
「スマン2人ともつき合ってやってくれるか?」
「もちろん」
「ええ」
「よし、それでは行こうじゃないか!」
ロイスに連れられ俺達は発表会場に向かった。
「次が我らがパパンの会社の発表だよ!」
ロイス達の発表は2番目だった。
「我がコーデン社の技術は、世界を大いに変えるだろう。それではご覧に入れよう。
『魔導式高出力レーザーガン』だ!
固定型の装備だが、魔導ロボットや装甲車等に着ける事で移動砲台として活用できます。それでは、実演を……んっ?」
ロボットが出てくる。
しかし、ロボットは観客席に向かって片腕の銃口を向けた。
「マズい、アッシュ!」
「うん!」
黒騎士を召喚し、腕の銃口を掴み上げる。
甲高い音を立てレーザーが射出されると、1本の柱の様に、空に向かって放たれた。
「どうなってる?」
観客は悲鳴と共に逃げ惑う。
「あちこちで悲鳴や爆発音が上がってるロボットの暴走みたい!」
「すぐに警備が来るだろ、俺達は一先ず目の前の奴をやるぞ!」
「了解!」
クロエがナイフを構えて飛び出す。
しかしロボットには簡単には弾かれた。
「無理だよ!パパンのロボットは特注で、装甲が他のより固いし厚いんだ!」
「ならどうする?」
「あっ!あの固定型の砲台を使って!」
「任せろ!」
マックが発表台に向かう。
ロボットは黒騎士にタックルし、吹き飛ばした。
「黒騎士!」
「向こうの方がデカイ!無理するな!」
「……いや、まだいける!」
直感で分かった。
黒騎士が起き上がり再びロボットに向かう。
「もっと力を!」
黒騎士が1歩歩くことに一回り大きくなった。
6メートル程になり、ロボットと組み合う。
「大きくなっちゃった!」
「ハハハ、やるじゃないか!アッシュ、そのままだ!」
発表台のレーザーガンをマックが構える。
「アッシュいける!」
「黒騎士!」
言葉に反応するかの様に黒騎士はロボットを持ち上げて、上に投げた。
マックがレーザーガンを発射する。
レーザーはロボットを貫き、空に伸びた。
ボットの胸部から頭部を消滅させ、ロボットは地面に轟音と共に落ちる。
マックはコックピットを開ける。
「誰も乗ってないぞ!」
「どうなってるの?」
「なんてことだ……」
「ロイス!呆けている場合じゃないまだ終わってない!」
「マック、クロエ向こうに僕達も手伝いに行こう!」
「ああ!」
「分かったわ!」
4人はまだ騒ぎの収まらぬ方へ駆け出した。
「普通のもそこそこ固いな」
マックがロボットの関節を銃で撃つと、銃口の着いた左手が弾け飛ぶ。
クロエは足元の関節にナイフを突き立てて破壊していた。
「このロボット達誰も乗ってない!」
アッシュは黒騎士と共にロボット達に斬り込む。
黒騎士の剣がロボットの腹部に突き刺さる。
「こっちは終わったよ!」
「こっちもだ」
「ウチも!」
ロボット達の暴走は警備やギルドのハンター達に鎮圧された。
「死人が出てないと良いが……」
「コックピットがからなのは何でなの?」
「それはボクが説明するよ……」
ロイスが憔悴した顔で答える。
「このロボット達は移動させやすい様に外部からコントロール出来るようになってたんだ。誰かに乗っ取られたに違いない」
「これはテロかもな。都市の上層部が動くだろ、俺達はここまでだ」
「みんな済まなかった」
ロイスが謝る。
「いいよ、楽しかったしな。それに友達だろ?」
「えっ………そ、そうだよな!友達もんな!」
ロイスが急に元気を取り戻す。
「このお礼は必ずさせて貰うよ。今日はボクは取りあえずパパンのところに戻らないと」
「ああまたな」
そう言ってロイスは迎えに来た執事と共に帰って行った。
「俺達はもう少し後始末してから帰ろうよ」
「だな」
「そうね」
その後警備や警察に話をして、解放されたのは夜だ。
アッシュ達は宿に帰ると気絶するように眠ったのだった
——その頃、某所では。
ハルカイの3人はモニターの前で正座して居た。
「という訳で館の謎の連中が、この近辺で活動していると思われるのであ~る」
「これからどうするかは、ボスのご判断にお任せします」
「プルッ」
3人が頭を下げる。
「ふむ……」
男の声だった。
「ソイツらの事は分かった。だが、一先ず置いておけ、おまえ達には次の任務がある…」
「はっ、何なりと!」
「数日後ハーティの海上でオークションがある、そこでおまえ達には……」
怪しげな会話はその後しばらく続く。
ジグザグ団の暗躍が始まろうとしていた。
「マック!それにアッシュとクロエ!出てきたまえ!」
翌朝、3人を起こしたのはロイスの大声だった。。
「朝っぱらからなんだロイス?」
「なに、何なの~」
「おはようロイス」
宿の外へと出るとロイスがご機嫌でカッコ付けていた。
「昨日言っただろ。お礼をすると」
そう言ってロイスが何やらスイッチのようなものを押す。
すると何もない空間から一台の車が姿を現した。
「っ!こ、これは!」
「そう、ファントム『T700』それを更にわが社でアレンジしたものだ!透明化や他にもいろんなオプションを付けてある!……君達へのプレゼントだ」
「嘘だろっ!」
マックが反応する。
「ホントさ、君達のお陰でわが社のロボットが誰かを傷付けずに済んだ。それに……友達だろ」
「ロイス!」
マックがロイスを抱き締める。
「おい!そこまでの関係では無い!」
「ハハハハハ!」
「それともう1つ、これだ『海上オークションの参加チケット』だ。本来君達に買えるような代物は無いだろうが、このわが社の小切手を使えば5000万ノル以内の物なら買える」
「そこまで事はしてないぞ……」
「いや、これは投資だよ。君達の将来へのね。君達は大物になる。昨日君達を見てそう直感した」
「ロイス、ありがとう」
「ありがとね」
「……期待に応えて見せるぜ」
「ま、まあ、そういうことだ。諸君それでは、去らばだ!」
そう言ってロイスは帰って行った。
「凄い贈り物だったね。車はマックに任せるよ」
「そうね、マックは車好きみたいだし」
「ありがとう、俺はもう少し車を堪能する」
2人は宿に戻っていく。
マックは1人ニヤニヤしながら車を眺めているのだった。




