第19話
「くー、借金さえ無かったらな~」
そう言ってマックはあちこちのお店を睨み付けるようにみていた。
「仕事を済ませてからまた来ようよ。報奨金があれば買えるよ」
「そうじゃのう。慌てておる訳でもないしのう」
「そうね、私もいろいろ見てみたいし」
項垂れるマックに3人が声をかける。
「…そうだな、取りあえずはゴーラでの飯だな。蒸気を使った蒸し料理や魔鉱石を使った石焼き料理なんかもあるらしいぜ」
「うむ、楽しみじゃ!」
「ウチは魚の蒸し料理がいいなぁ」
「肉まんとか食べてみたいな」
そうして4人はゴーラでの1日を堪能するのだった。
次の日、アッシュ達は依頼のあったコルナ鉱山に来ていた。
「へー、流石はゴーラの鉱山ね。照明が明るいわね」
「照鉱石もゴーラの特産品の一つだからな」
「ルナは大丈夫?」
「うむ、日光では無いから平気じゃ」
アッシュ達は中へと入っていく。
「依頼は鉱石を食べるトロールと、ジャイアントワームの退治だったわよね?」
「うん、どっちも4等級のモンスターだし気を付けないとね」
「トロールもワームも火が弱点だ。俺が炎の弾丸を用意してきてるから撃ったところを狙えばいい」
「任せるのじゃ」
4人は警戒しながら先へと進んでいく。
「地図の通りならこの先が採石区画だな。結構広くなってるらしいから警戒して行こう」
全員戦闘態勢に入ると採石区画に駆け込む。
中はドーム状で、所々に段があり上下で採掘出来るようにしてある。
「いたぞ!!」
下の段で鉱石を食べているトロールが7匹、ワームは見えるのが4匹。
マックが引き金を引く。
4発、1匹は頭部に当たり倒した。残りは肩や胸に当たる。
「いただき!!」
クロエは素早く懐に入ると燃えている胸の傷跡から袈裟斬りに斬り込んだ。トロールはそのまま倒れる。
ルナは血でトロールの四肢を地面に縫い付けると、肩の傷口に血の槍を突き刺す。
「弾けよ」
血の槍は爆発するとトロールの上半身の半分を消し飛ばした。
「黒騎士いくよ!」
黒騎士がトロールの石のこん棒を受け止める。
アッシュは懐に入ると剣を振り上げる。
スパリとトロールは真っ二つに切れた。
「はは、やるなアッシュ」
マックが笑う。
その時だった。
「グオオオオオア」
坑道を震わせる巨大な声が鳴り響き、採石区画の上段から普通のトロールの3倍のサイズはあろうかという巨体をムクリと起こす。
「アイツがボスね」
「俺がやる!マック達は他をお願い!!」
「気を付けろよアッシュ!」
「頼むのじゃ!」
ジャイアントトロールは飛び降りると、その身に合わぬ軽快さでこちらに走って来る。
アッシュは深呼吸をする。
「黒騎士やるよ、黒式剣」
そう言って構える。
黒騎士も隣に並ぶ。
黒騎士と何度も剣を交えて気付いた。黒騎士の剣には型がある。それを何度も何度も身に受けて習得した。
魔力の運用だけは感覚でやるしか無いが不思議とアッシュには分かった。おそらく手甲のお陰だろう。
「一の型『黒風』」
巻き上げる様に剣を振る。
2人同時に放たれた黒い風はお互いを食らう様に一つになると真っ直ぐに進んでいく。
なす術もなく黒き風に飲まれたジャイアントトロールを食らい更に向こうへ。
ドーム状の区画の壁に衝突する。
ドオンッ。
凄まじい地響きと轟音、ワーム達は音で倒れる。
「はぁ…はぁ…魔力ほとんど持っていかれた…」 アッシュが膝をつくと、黒騎士は静かにかき消えた。
破壊の黒き風が穿った傷痕の先には、岩壁を突き破って作られた大きな横穴が広がっていた。
「大丈夫かアッシュ?」
残りのモンスターを片付けたみんながアッシュの元へと集まる。
「凄いわね」
「壁に穴が開くとはのう」
「ははは、…ふう、これでちょっとはみんなを守れるかな」
そう言ってアッシュは笑うのだった。
「誰よ!危ないわね!!」
「死ぬかと思ったであ~る」
「慰謝料請求するプルッ」
突然の声と共に壁の穴の向こうから光が照らされる。
「えっ、ハルカイ?」
「なっ、またアンタ達?ちょっとストーカーは止めてよね」
そう言ってハルはプンプンと怒るのだった。




