第15話
あれから大忙しだった。
マックの治療に、麻薬組織の摘発の報奨など数日が慌ただしく過ぎていった。
マックは骨が折れ内臓にもダメージがあり回復薬ではどうにもならないくらいに危険だったが、ギルドの施設で高度な治療を受けて完治することが出来た。
施設の中でベッドの上で横になっているマックの見舞いに、ルナとクロエが来ていた。
「すまんな、結構治療費かかったろ」
マックが申し訳なさげに言う。
「そんなこと無いわ。マックが居ないとみんな死んでだろうから…」
「そうじゃな…」
クロエの言葉にルナも頷く。
「アッシュは?」
「アッシュは…自分を鍛え上げるって今日も1日黒騎士と鍛練してるわ。今のままじゃみんなを守れないって…」
「そうか…」
マックは天井を見つめる。
「俺も強くならないとな…守られるだけはごめんだ」
「うん、ウチも」
そう言う2人を少し羨ましそうな目で見つめるルナだった。
「そう言えばハルカイ達3馬鹿は?」
「さあね、言われてみればバタバタしてるうちに居なくなってたわね」
あのトランクの工房を出た時に会ったくらいだ。
「料理する約束だったが……まあ、またどっかで会うだろな」
「そうね」
その後も3人は面会時間いっぱいまで談笑を続けるのだった。
数日後、マックが退院することになった。
ギルドの病院の前でアッシュ達は4人は再会した。
「マック…」
「そんな顔すんなアッシュ。お前に守られる為に一緒に居るわけじゃねぇからな。それにちゃんと決めてくれたんだろ」
「…うん」
アッシュは頷く。
「ならいいや、どうせ報奨金も治療費で飛んじまったんだろうからまた稼がないとな」
「そうだね!」
「ええ、もちろん!」
気合いを入れ直す3人だった。
「これでお別れじゃな」
1歩離れたところからルナが声をかける。
「どうして?」
アッシュが不思議そうにルナをみる。
「もともとお主らはわしの退治の依頼でここにきおったのじゃろ?それなのにわしの頼みでお主らには余計な怪我まで…」
「それがどうしたんだ?」
マックはニヤリと笑う。
「だから……わしには言えん…」
ルナは俯く。
一筋の涙が地面に落ちる。
アッシュ達は顔を見合わせると頷く。
「なら僕たちから言うよ。ルナ、一緒に来ない?」
アッシュが手を差し出す。
「っ!……よいのか?」
「もちろん!」
「騒がしいのは歓迎だ」
「ウチも!!」
「…うむ、よろしく頼むのじゃ」
晴れた空の下、1人の吸血鬼の笑顔が咲いた。
闇から光への1歩。
ルナはアッシュの手を両手でそっと握った。
アッシュ達は冒険者ギルドの中へと入っていく。
受付に今回の治療費と報奨の差額を受け取る為だ。
「アッシュさん達ですねこちらになります」
受付のお姉さんはそう言って紙を渡してくる。
「小切手なのか?」
マックがそう言いながら覗き込んでくる。
紙にどうどうと書いてあるのは『借用書』だった。
「な、50万ノルだと!?」
「借金なの!?」
マックとクロエが悲鳴を上げる。
「実は…今回皆さんが倒された方には懸賞金が懸かって居なくて…ギルドとしては通常報奨しか払えなくて、吸血鬼討伐依頼の違約金や治療費を引いていった結果…こんなことに」
受付のお姉さんが申し訳なさそうに言う。
「すまぬ!わしのせいじゃ!!」
「ま、まあ確かに実力以上の依頼を受けて治療費で破産したヤツも居るのは知ってるが…」
マックが苦々しく言う。
「仕方ないよ、依頼を受けて挽回していこう」
アッシュが前向きに言う。
「申し訳ありません。その代わりでは無いですが利子や期限は免除となって居ますのでご安心下さい」
そう言ってお姉さんが頭を下げる。
「は~、依頼見に行くか」
「そうね…」
「そうじゃな…」
3人は依頼の受付端末の元へと歩いていく。
アッシュも追おうとしてふとあるお知らせが目に入った。
調査依頼だった。ドレイクの調査だが依頼の必要等級が8等級になっている。
「お姉さんこのお知らせ…」
「あ、はい南の大陸での事ですが、最近ドレイク狩りの依頼で帰って来ない人が多いので実力のある方への調査依頼です」
ドレイクは6等級のモンスターだ。
8等級への依頼とはギルドも注視しているようだ。
気にはなるがアッシュ達は4等級、関係の無い話だ。
アッシュは3人の後を追うのだった。
「おっアッシュ遅いぞ!良い依頼見つけたんだ。ルナがな」
「うむ、まかせよ」
「バリバリ働かないとね!」
「どんな依頼?」
「鉱山のモンスター退治だ。場所はなんと魔導都市『ゴーラ』の近く!」
「ゴーラ?」
「ああ!この国の最先端の魔導技術を持ってる都市だ!帝国に負けないように魔導兵士なんかの研究もしてるところだ。男のロマンが詰まった街だぜ」
マックが興奮している。
「いいね、行こう!」
「よし、車をで待ってる!」
マックはそう言って1人走っていった。
3人は1拍遅れて後を追うのだった。
ーーーその頃ハルカイ達は。
宿の一室でボスに報告をしていた。
「というのがライゼラの顛末です」
『そうか』
「麻薬組織を潰してやったのであ~る」
「頑張ったプルッ」
『よくやった。お前達には次の任務がある魔導都市ゴーラでな』
「ゴーラであ~る?」
「えー、あのじめじめして鉄臭い街なの~」
「ハル!ボスの前プルッ!!」
「はっ!?ボスの意のままに!!」
『…まあ良い。お前達にやって貰うのは…』
ボスの指令を3人には聞く。
「なんとプルッ!」
「まさかそんなことがであ~る」
「へー、人って分かんないもんね~」
『…任せたぞ』
そう言って通信が切れる。
「しゃあないわね~、行くわよゴーラに」
「了解であ~る」
「了解プルッ」
3人は気合いを入れるのだった。




