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チートはいらねぇ。農高ヤンキー、拳と畑で異世界のてっぺんへ  作者: 月神世一


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EP 9

一生消えないデジタルタトゥー(完全論破)

「みんな、お待たせぇぇぇ♡ 配信復活だよっ! 画質10Kの超高画質で、悪いおじさんの敗北を全世界に完全生中継しちゃうよっ!」

広域魔力ジャミングの解除と同時に、天使キュララは浮遊魔法カメラを再起動させた。

画面の向こうでは、配信が途切れてパニックになっていた数百万人のリスナーたちが一斉になだれ込み、コメント欄は秒間数万件という、もはや文字が視認できないレベルの超音速で流れ始めた。

『復活キターーー!!』

『え、待って、画面に映ってるの何!?』

『異端審問局のゼイン様が、泥に顔面から植えられてるんだがwww』

「そうなんです! 見て見てみんな! この『偉そうに他人の畑を燃やしたエリートおじさん』の無様な姿!」

キュララはスマホを片手に、泥まみれでピクピクと痙攣しているゼインの顔面に、カメラを限界までズーム(顔面ドアップ)した。

「う、ぬ、ぅ……き、貴様ら……! 異端審問局たる私を、このような下賤な大衆の目に晒すなど……っ!」

ゼインは泥を吐き出しながら、必死に顔を背けようとする。だが、魔導外骨格を龍魔呂に粉砕された彼の身体は、指一本動かすのすらままならない。

「はい、おじさん、もっとカメラ見て〜! チャンネル登録と高評価のお願いの邪魔だよ♡」

キュララは完璧なアイドルスマイルでダブルピースを決め、ゼインの横でポーズを取る。

その瞬間、コメント欄に『キュララ特定班(ネットストーカー兼凄腕ハッカー)』たちが一斉に動き出した。

『特定班、仕事早すぎワロタ』

『ゼインの本名、年齢、所属、全部割れたぞ』

『こいつ、表向きは『法と秩序』とか言ってるけど、裏でアバロン魔皇国の闇ギルドから莫大な賄賂(裏金)受け取って、違法な土地買収の揉み消しやってるぞ! 証拠の通信記録、ネットの海(地脈網)に全暴露したわ!』

「わぁ〜! 特定班のみんな、ありがとぉ♡」

キュララは画面を見ながら、小悪魔のような笑みを浮かべた。

「へぇ〜、おじさん。ポポロ村を『違法』って言って潰そうとしたくせに、自分は裏で『もっと違法な裏金工作』をやってたんだねぇ? はい、これで社会的抹殺デジタルタトゥー完了だよっ! もう二度と、表の社会でお仕事できないねっ♡」

「な、何だと……!? 私の裏金が……ば、馬鹿な、あれは絶対に足がつかないはず……!」

ゼインの顔から、完全に血の気が引いた。

龍魔呂による肉体的な破壊ボコボコに続き、キュララによる「社会的・精神的な完全消滅ざまぁ」。

エリートとしてのプライドも、築き上げてきた地位も、全世界の100万人の前で一瞬にして塵に変わったのだ。

そこへ、ゼインの懐の奥で、奇妙な『通信石』がけたたましい警告音を鳴らしながら点滅を始めた。

それは、魔法ジャミングが解除されたことで、ようやく繋がった『身内からの緊急連絡』だった。

「……ッ! 本部からの、救援要請か……!?」

ゼインは最後の希望を繋ぐように、血まみれの手で通信石を起動した。

しかし、通信石の向こうから聞こえてきたのは、野太い軍人の声ではなかった。

それは、どこか田舎の訛りが入った、初老の女性の『号泣する声』だった。

『――ちょっと! あんた!! ゼインかい!?』

「……え? は、母上……? なぜ、この緊急回線に……」

『なぜじゃないわよ、この大バカ息子おおおおお!!!』

通信石が割れんばかりの、凄まじいオカンの怒号。

『今ね! 村の集会所の魔導テレビを見てたらね! あんたが天使様の配信で、泥だらけになって悪いこと暴露されてるのが全世界に映ってたのよ!! 近所の人たちからも『あんたの家の息子、裏金泥棒の犯罪者だってよ』って電話が鳴り止まないわよ! 恥ずかしい! お母さん、もうこの村で生きていけないわぁぁぁん!!』

「は、母上……! 違う、これは、審問局の任務で……っ!」

『うるさいわよ! 言い訳なんて聞きません! 今すぐそのポポロ村の警察(ルナミス警察)に自首しなさい! 早くしなさい、このバカ息子がぁぁぁ!!』

プチッ……。

一方的に通信が切られた。

「あ、あはは……あはははは……」

ゼインは虚ろな目を天に向け、完全に精神が崩壊したように力なく笑い始めた。

肉体を耕され、社会的に死に、最後は田舎の母親に完全に見捨てられるという、非の打ち所がない『究極のざまぁオチ』の完成である。

「はい! というわけで、今日もポポロ村の平和は守られましたっ♡」

キュララがカメラ目線でウィンクを決める。

「……チッ。ネットのリンチ(タトゥー)ってのは、ヤクザの拷問よりエグいな」

龍魔呂は、ひしゃげたバレッドの煙をふぅと吐き出しながら、哀れな姿になった元・エリート指揮官を見下ろして苦笑した。

「さぁて! 悪い雑草も綺麗に間引けたことだし!」

キャルルがダブルトンファーを片付け、ウサギ耳をパタパタと嬉しそうに揺らした。

「龍魔呂さん! お腹空いちゃった! 畑はちょっと燃えちゃったけど、地下の隠田の『最高の発光野菜』は無事だから、みんなで美味しいご飯にしようよ!」

「お肉! リスナーさんのスパチャ(T-bar)で、最高級のドンガン牛肉を10キロほどデリバリーさせましたわっ! 龍魔呂きゅん、早く焼いてほしいもんっ♡」

キュルリンがガテン系の腰袋を叩きながら、おねだりをする。

「……しゃあねぇな。今回は、キュルリンのトラクター(V8)のおかげでシマを守れたからな。……おい、お前ら。特製の『ネギ塩ダレ』作ってやるから、取り皿と箸の用意しな」

龍魔呂のその言葉に、ポポロ村のイカれた住人たち(と、配信を見ていた数百万人のリスナー)が一斉に大歓声を上げた。

大炎上から始まった最悪のピンチは、最強のヤンキーの暴力と、天使のデジタルタトゥーによって、至高の『飯テロ宴会』へと突入しようとしていた。

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