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チートはいらねぇ。農高ヤンキー、拳と畑で異世界のてっぺんへ  作者: 月神世一


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EP 7

爆走! 農業術『V8・土竜耕し(モグラ・ティル)』

ヴロロロロロォォォォォォッ!!!

ポポロ村の広場に、V型8気筒魔導エンジンの常軌を逸した咆哮が轟いた。

空気を震わせる重低音と、極太マフラーから噴き上がる青白いバックファイア。そのあまりの音圧に、異端審問兵たちが思わず耳を塞いで顔をしかめる。

「えへへっ♡ どう? キュルリン特製、世界一キュートな『お花畑用アグレッシブ・コンバイン』のエンジン音は!」

土煙の向こうで、ゴスロリドワーフのキュルリンが安全靴でリズムを取りながらピースサインを決めている。

「……狂っている。ドンガン帝国の軍事機密(V8エンジン)を、農機具に積むだと?」

ゼインの氷の瞳に、明らかな焦燥の色が浮かんだ。

「ええい、構わん! そのふざけた鉄くずごと、奴をスクラップにしろ!」

「ガァァァァッ!!」

ゼインの命令を受け、3体の巨大なミスリル製重魔導ゴーレムが、地響きを立てながらトラクターへと突進を開始した。

その巨腕が振り下ろされれば、いかに装甲化された車両であろうと一たまりもない。

だが、運転席の龍魔呂は、咥えたバレッドをわずかに噛み締め、獰猛な笑みを浮かべただけだった。

「……土が固けりゃ、深く耕す。農家の基本だ」

龍魔呂が、トラクターの運転席横にある無骨なレバー(PTOクラッチ)をガコンッ!と乱暴に押し込んだ。

直後、後部に備え付けられた巨大なミスリル合金製のロータリー(耕運刃)が、鼓膜を破るような金属音と共に超高速回転を始める。

ギュイイイイイイイイインッ!!!

「おらァッ!!」

龍魔呂がアクセルを床まで踏み抜く。

巨大なブロックタイヤが大地を抉り、V8エンジンが限界突破の悲鳴を上げた。

「鬼神流農業術・機甲編――『V8・土竜耕し(モグラ・ティル)』!!」

ドゴォォォォォォォンッ!!!

突進してきたゴーレムと真正面から激突する直前、龍魔呂はハンドルを切り、あえてトラクターの車体をスピン(ドリフト)させた。

そして、超高速回転する後部の巨大ロータリーを、ゴーレムたちの足元の『大地ごと』激しく叩きつけたのだ。

「ガ、ギィィィッ!?」

ロータリーの刃が岩盤を砕き、凄まじい質量の『土砂の津波』を巻き起こす。

足場を完全に粉砕されたゴーレムたちはバランスを崩し、そのまま超高速回転するロータリーの刃の渦へと巻き込まれた。

ガガガガガガガガッ!! バキィィィィィィンッ!!!

絶対に砕けないはずのミスリル装甲が、火花を散らしながら紙くずのように削り取られていく。

「あり得ないっ……! ミスリル合金のゴーレムが、ただの耕運機に……!?」

ゼインが血相を変えて叫ぶ。

「ただの耕運機じゃねぇ。……最高にイカれた『暴走重機』だ!!」

龍魔呂の赤黒い闘気がエンジンと完全に同調し、トラクターの出力がさらに跳ね上がる。

ドバァァァンッ!!

という爆発音と共に、3体の無敵のゴーレムは完全にスクラップのミンチと化し、ポポロ村の土壌を豊かにする鉄の肥料デブリとなって空中に撒き散らされた。

「ひ、ひぃぃぃっ! ば、化け物だァァッ!」

「逃げろ! 轢き殺されるぞ!!」

最強の盾であったゴーレムを一瞬で粉砕された異端審問兵たちが、完全にパニックを起こして逃げ惑う。

「誰が逃げていいって言った? 雑草の根っこは、一つ残らず引っこ抜くんだよ」

龍魔呂はシフトレバーを叩き込み、再びアクセルを踏み込んだ。

トラクターが猛然とダッシュし、逃げ惑う重武装の兵士たちの陣形へと突っ込んでいく。

「オラァッ!!」

ズドォォォン! ガシャァァン!

トゲ付きの巨大タイヤが、兵士たちの持つ魔導盾を紙細工のように轢き潰す。さらに、ロータリーが巻き上げる大量の土砂と石の礫が散弾銃のように降り注ぎ、兵士たちの意識を次々と刈り取っていった。

「す、すげえ……!」

キャルルが呆然と呟く。

「完全な蹂躙……。これが、龍魔呂さんの本気……」

「ヒャハハハ! ええぞ兄貴! そのクソ役人どもを全部更地にしたれやああ!!」

ニャングルが算盤の残骸を振り回しながら狂喜乱舞する。

ものの数分。

数百人はいたはずのエリート部隊が、ただの一台の狂ったトラクターによって完全に制圧され、泥だらけになって地面に転がっていた。

「…………馬鹿な」

ゼインは、震える足で立ち尽くしていた。

彼の誇る『絶対封殺プリズム』による魔法の無効化。そんな小細工など、この圧倒的な暴力(V8エンジンとヤンキーの拳)の前では、何の役にも立たなかったのだ。

キキィィィィッ……!!

ゼインの目の前数センチのところで、巨大なタイヤが泥を跳ね上げて止まった。

ヴロロロロ……と、低く威嚇するようにアイドリング音を立てるトラクター。

プシューッ、と圧縮空気を抜く音と共に、運転席から龍魔呂が飛び降りた。

彼の黒い学生服は土埃にまみれ、額には汗が光っているが、その瞳に宿る赤黒い光は全く衰えていない。

「……さてと」

龍魔呂は、首をコキコキと鳴らしながら、完全に孤立したゼインへと歩み寄った。

「雑草の間引き(ザコ散らし)は終わった。……次は、てめぇの番だ。エリート様」

ヤンキーと、全てを失った異端審問官。

一切の手加減を許さない、最後の『収穫祭ハーベスト』の時間が訪れた。

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