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チートはいらねぇ。農高ヤンキー、拳と畑で異世界のてっぺんへ  作者: 月神世一


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EP 6

【激温注意】鬼神の怒りと、ヤンキーの流儀

「ひっ……! な、なんだこのプレッシャーは……!」

魔力を一切持たないはずの龍魔呂から放たれる、赤黒い闘気オド

それは、数多の修羅場を潜り抜けてきた異端審問兵たちにすら、本能的な『死』を予感させるに十分な威圧感だった。

「怯むな! そいつは魔法など使えん、ただの小僧だ! 焼き尽くせ!」

ゼインの冷徹な号令が飛び、火炎放射型の魔導器を持った兵士たちが一斉に龍魔呂へ銃口を向けた。

ボォォォォォッ!!

再び放たれた業火が、龍魔呂の身体を完全に呑み込んだ――かに見えた。

「――遅ぇよ。カカシのほうがマシな動きするぜ」

「なっ!?」

兵士が気づいた時、炎の中に龍魔呂の姿はなかった。

重い安全靴の足音が響いたのは、彼らの完全に無防備な背後だった。

「土を耕す基本は、足腰からだ」

龍魔呂の身体が極限まで沈み込む。

「鬼神流農業術――『鍬掛け(くわがけ)』」

ドゴォォォォォンッ!!

草刈り鎌のように鋭く放たれたローキックが、重装甲の兵士3人の足を『装甲ごと』へし折った。

「ぎゃあああああっ!?」

「足が……! 鉄のブーツが紙みたいに……!」

「次は、収穫した麦の脱穀だっこくだ」

倒れ込んだ兵士たちの顔面に、龍魔呂の拳が容赦なく振り下ろされる。

ガンッ! ガンッ! バキィッ!!

魔法も何もない、ただの純粋な質量とスピードによる暴力。分厚い兜がへこみ、魔導装甲の留め具が弾け飛び、兵士たちが白目を剥いて血を吐きながら吹き飛んでいく。

「……バカな。ジャミング下で、これほどの物理破壊力だと?」

ゼインの常に無表情だった顔が、初めて驚愕に歪んだ。

異端審問局の制圧戦術は「魔力を封じ、圧倒的な武装で蹂躙する」というものだ。しかし、目の前の男にはその前提が全く通用していない。

龍魔呂は、手についた血を学生服の裾で無造作に拭いながら、ゼインを真っ直ぐに睨みつけた。

「てめぇらみたいなお高く止まったエリート様には分かんねぇだろうがな。……生身の喧嘩に、魔法(小細工)なんざ要らねぇんだよ」

龍魔呂が一歩踏み出すたびに、残された兵士たちがジリジリと後退する。

ルナの魔法も、キュララのネットの権力も通じない絶望的な状況下で、ただ一人、最強の農業ヤンキーだけが、冷徹な法執行者たちを力のみで圧倒していた。

「……龍魔呂さん……」

地面に倒れていたキャルルやリリスたちが、その背中を呆然と見上げていた。

自分たちの『シマ』を守るために、怒りの業火を燃やす絶対的な強者の背中。

「……認めよう。貴様はただの農民ではない。極めて危険な『害獣』だ」

ゼインはギリッと奥歯を噛み締め、飛空艇に向かって通信石で指示を出した。

「重魔導ゴーレム部隊、降下しろ。……奴を肉片一つ残さずすり潰せ!」

ズズゥゥゥンッ!!

飛空艇のハッチから投下されたのは、全身を分厚いミスリル合金で覆われた、全高3メートルを超える3体の巨大な殺戮機械ゴーレムだった。

「ガァァァァァッ!!」

地響きを立てながら、ゴーレムたちが龍魔呂を包囲する。

どれだけ腕力があろうと、純度100%のミスリルの塊を素手で破壊することは不可能に近い。

「フン……素手で鉄の塊を殴り続ければ、いずれ貴様の拳が砕ける。そこまでだ」

ゼインが勝利を確信し、冷たく見下ろした。

「……チッ」

龍魔呂は首をポキポキと鳴らし、ゴーレムの巨体を見上げた。

「確かに、こんだけ『皮の厚い雑草』を素手で間引くのは骨が折れるな」

だが、龍魔呂の顔に絶望の色はない。

むしろ、獰猛な笑みがその口元に浮かんでいた。

「だからよ。……こういうデカい雑草は、最新の『農機具』でまとめて耕すのが農家の基本なんだよ」

その言葉と同時に。

ポポロ村の広場の地面が、内側から激しく隆起し始めた。

「な、なんだ!? 地震か!?」

ゼインや兵士たちが足元をふらつかせる。

ドゴォォォォォォォンッ!!!

地面が爆発するように吹き飛び、土煙の中から『凶悪な咆哮』が響き渡った。

ヴロロロロロォォォォッ!!!

「お待たせだもんっ! 龍魔呂きゅんの可愛い『鉄馬』、マッハでデリバリーしてきたよっ!!」

土煙の中から現れたのは、ピンク色のフリルドレスを泥だらけにした天才ドワーフ・キュルリンと――。

フロントからV8魔導エンジンを剥き出しにし、極太のトゲ付きタイヤと、ミスリル合金の巨大なロータリー(耕運刃)を備えた『世紀末仕様・魔改造トラクター』だった。

青白い炎をマフラーから噴き上げるその姿は、農機具などではない。完全に地獄から這い上がってきた狂気の戦車である。

「遅ぇぞ、キュルリン」

龍魔呂はゴーレムの包囲網を軽々と飛び越え、トラクターの運転席へと飛び乗った。

「へっへっへ……龍魔呂兄貴ィ! わいの店と算盤の恨み、そのバカでかいトラクターで晴らしてくだせぇ!!」

鼻血を出したニャングルが、ガッツポーズで叫ぶ。

「……さてと」

龍魔呂はハンドルを握りしめ、ギアをトップに入れた。

赤黒い闘気が、V8エンジンと共鳴し、トラクター全体が凶悪なプレッシャーを放ち始める。

「邪魔な雑草ども。……纏めて『ミンチ(肥料)』にしてやるよ」

最強のヤンキーと、最狂の魔改造トラクター。

一切のギャグを許さない圧倒的な反撃の時間が、今、幕を開けた。

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