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チートはいらねぇ。農高ヤンキー、拳と畑で異世界のてっぺんへ  作者: 月神世一


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EP 3

痛恨の放送事故! 地下要塞、全世界へポロリ

「……あ〜あ、最近再生数が伸び悩んでるんだよねぇ。やっぱりカツ丼の大食い(ヤラセ)だけじゃ、リスナーも飽きてきちゃうのかなぁ」

ポポロ村の広場、日当たりの良いベンチで、天使キュララはスマホの管理画面を見ながらため息をついていた。

隣では、カツ丼10杯を処理させられた後のリーザが、消化のために白目を剥いて転がっている。

「贅沢な悩みですわ……。私なんて、投げ銭が『どんぐり』だったこともあるんですのよ……」

「アイドルとトップ配信者を一緒にしないで。……あ! そうだ! 次の企画、思いついちゃった♡」

キュララの瞳が、承認欲求という名の怪しい光でギラリと輝いた。

「みんなが一番気になる『秘密』を暴いちゃえば、バズること間違いなしだよねっ!」

その日の夜。

ポポロ村の地下、ニャングルが「絶対立入禁止」と厳命していたはずのエリアに、羽音を殺した小さな影が忍び込んでいた。

「はろきゅら〜! 今夜は特別に、ポポロ村の『禁断の聖域』に潜入しちゃうよっ!」

キュララは魔法カメラを浮遊させ、完全密着生配信をスタートさせていた。

深夜にもかかわらず、タイトル『【閲覧注意】ヤバすぎる秘密基地を見つけちゃった!?【緊急生配信】』に釣られたリスナーが、数秒で万単位まで膨れ上がっていく。

「見て見て、みんな! ここ、ただの村の地下じゃないよ! 迷路みたいに道が続いてて、なんだか油と火薬の匂いがするの……!」

キュララが最初に映し出したのは、キュルリンの工房『キュルリン・ラボ』だった。

そこには、ルナの魔法でピンク色に変えられたとはいえ、明らかに一国を滅ぼせるレベルの重火器や、地下帝国ドンガンの極秘刻印が入った魔導兵器が山積みになっていた。

『待て、あれドンガン帝国の最新ライフルじゃね!?』

『なんで辺境の村に軍事機密があるんだよwww』

『これ、外交問題になるぞ……!』

コメント欄の勢いが加速するが、止まらない承認欲求がキュララの理性を焼き切っていた。

「さらに奥に行ってみるね! ……わぁ、何これ!? 野菜がピカピカ光ってる!」

カメラが捉えたのは、ルナの魔力と龍魔呂の技術によって育てられた『地下隠田』。

三カ国の法律を完全に無視し、納税を逃れるために隠された巨大な黄金の稲穂と、見たこともない発光野菜の数々。そして、その中央に鎮座する、龍魔呂の愛機『V8魔導トラクター』。

「凄ーい! 龍魔呂さんのトラクター、トゲトゲが付いてて超世紀末! これなら魔物も轢き殺せそうだねっ♡」

無邪気な天使の配信は、ついに決定的な「アウト」の領域へと踏み込んだ。

地下帝国との密輸ルート、脱税用の隠田、そして不法所持された魔導兵器。

その映像は、魔法通信網を通じて全世界、そして三カ国の首脳陣――ルナミス帝国の皇帝、獣人王ハガル、魔皇ルーベンスの端末にもリアルタイムで届いていた。

「…………」

深夜の執務室で配信を見ていたルーベンスは、咥えていたバレッドを落とした。

「あいつら……やってることがヤンキーの枠を超えて、完全にテロ組織のそれじゃねぇか……」

一方、ポポロ村の監視ルーム。

異常なアクセス集中に気づいたニャングルが、顔面を蒼白にして飛び起きた。

「なんや……!? なんなんや、この通信トラフィックの異常な跳ね上がりは! ……はっ! まさか!!」

ニャングルがモニターを確認した瞬間、そこには楽しそうに地下要塞の機密を全世界に垂れ流すキュララの姿が映し出されていた。

「あ、あ、あ、アホンダラああああああああああッ!!!」

ニャングルの絶叫が地下に響き渡ったが、すでに遅すぎた。

画面の向こうでは、特定班がポポロ村の正確な座標を割り出し、デジタルタトゥーとして拡散を開始している。

そして――。

その配信を、誰よりも冷酷な目で見つめている男たちがいた。

『三カ国合同特務・異端審問局』。

「世界のルール」を乱す者を、法と暴力の名の下に抹殺する、大陸最強の法執行機関。

「特定した。……ポポロ村だな。これ以上の『無法』は許されん」

暗い部屋で、冷徹な声が響く。

キュララの放った「承認欲求の火種」は、ポポロ村を焼き尽くすための巨大な業火となって、すぐそこまで迫っていた。

龍魔呂の平和なシマが、音を立てて崩れようとしていた。

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