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チートはいらねぇ。農高ヤンキー、拳と畑で異世界のてっぺんへ  作者: 月神世一


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EP 10

発光野菜の地下大宴会と、平和なシマ

数時間後。

殺伐とした軍事要塞になるはずだったポポロ村の地下シェルターは、七色のレーザーライトが飛び交う『超絶巨大なアンダーグラウンド・パーティ会場』へと変貌していた。

キュイイイイイインッ!!(※元・魔導自爆ドローンが放つディスコ照明)

パンッ! パパーンッ!!(※元・魔導ライフルが放つ癒やしの紙吹雪)

「皆さぁぁん! 地下帝国とポポロ村の歴史的コラボ! 絶対無敵のスパチャアイドル、リーザのスペシャルライブにようこそですぅぅ!!」

特設のお立ち台で、芋ジャージから再び真紅のドレスに着替えたリーザがマイクを握り絶叫する。

彼女の頭上では、ルナの魔法でパーティーグッズ化されたドローンたちが、リーザの動きに完璧に連動して七色のスポットライトを当てていた。

「おおおおっ! いいぞねーちゃん! おひねりだァ!」

「ヒャハハハ! ドンガン帝国の兵器がこんな楽しいモンだったとはなァ!」

ドン・ガバーナをはじめとする地下帝国のドワーフたちが、ジョッキ片手に熱狂し、金貨や銀貨をステージに向かって投げまくっている。

その熱狂の裏側、会場の端に設けられた長机では、最強の農業ヤンキーによる『至高の宴会飯』が振る舞われていた。

「オラ、出来たぞ。食え」

龍魔呂がドンッ! と巨大な大皿を並べる。

『極上発光トマトとドンガン豚の特製チーズ焼き』

『筋肉大根の極厚ガーリックステーキ』

『黄金向日葵の油で揚げた、山盛りカリカリポテト』

ルナの過剰施肥ハイパー・バフによって規格外に育った野菜たちを、龍魔呂の料理スキルで暴力的なまでに美味く調理した品々だ。

暗い地下空間で、トマトや大根が自ら美味しそうに「ピカピカ」と発光しているという異常な光景だが、その匂いと味は本物である。

「うおおおっ! 美味えええええッ!!」

ドン・ガバーナが筋肉大根のステーキに齧り付き、あまりの美味さに涙を流した。

「噛み締めた瞬間、大地の魔力と肉汁が爆発しやがる! なんだこの美味さは! 宴会最高ォォォ!」

「ニャハハハ! 食え食え! これがウチのシマの新しい『シノギ』でっせ! 兵器より野菜とエンタメ! 儲かりまんなぁ!」

ニャングルはドワーフたちに自社ブランドの酒『サケスキー』を注ぎ回りながら、算盤を弾く手が止まらない。

「ふふっ♡ 皆さん、とっても幸せそうですわね」

ルナは、発光するトマトのチーズ焼きを優雅にフォークで口に運びながら、嬉しそうに微笑んだ。

「私が兵器を愛の力で浄化し、大地の恵みを分け与えたおかげですわ。やっぱり、私の魔法は世界を平和にしますのね♡」

「……どの口が言ってんだか」

厨房スペースで鍋を振るい終えた龍魔呂が、呆れたように呟く。

「あ、龍魔呂さん! お疲れ様ですわ♡」

ルナはパタパタと龍魔呂に駆け寄ると、持っていたハンカチで彼の額の汗を拭おうとした。

「貴方が美味しいお料理を作ってくださったから、宴も大成功ですわね。ご褒美に、私の世界樹の魔力で貴方の寿命を1000年くらい延ばして差し上げ……」

「やめろバカ。俺を人間辞めさせる気か」

「ちょっとルナああああ!! 何どさくさに紛れて龍魔呂さんに触ろうとしてんのよ! 龍魔呂さんの汗を拭くのは正妻(村長)の私なんだからぁ!」

背後からキャルルが猛ダッシュで突っ込んできて、ダブルトンファーでルナとの間に結界を張る。

「むぐぐ……ガチャが……あと1回で天井なのに石(金)が足りないですぅ……」

リリスは宴会の料理にも目もくれず、部屋の隅で金塊の端っこを削りながらスマホの画面を連打していた。

ドンチャカと騒ぐドワーフたち。

歌い踊りながら荒稼ぎする貧乏神アイドル。

金勘定に狂う腹黒猫商人。

ガチャに魂を売った駄女神。

ヤンデレのウサギと、コンプライアンス皆無の天然災害エルフ。

「…………」

龍魔呂は、そのカオス極まる地下宴会の光景を見渡し――フッと、悪くない笑みを浮かべた。

ポケットから真鍮製のオイルライターを取り出す。

カチッ……!

オレンジ色の炎が、赤い箱から取り出した『バレッド』の先端を焦がした。

「……ま、ハリネズミ(軍事拠点)にはならなかったが。俺のシマの連中が美味そうに飯を食って、笑ってんなら……それで上等だ」

深く煙を吸い込み、七色のレーザーライトが飛び交う天井へ向かって、ゆっくりと紫煙を吐き出す。

「平和が一番、か。……悪くねぇ響きだぜ」

極道顔負けの裏取引も、世界を滅ぼしかねないエルフの善意も、結局はこの男の「美味い飯」と「度量」の中に収束していく。

ヤンキー農業高校生・龍魔呂の統べるポポロ村は、また一つ大きな(そして物騒な)シノギを手に入れ、異世界で最もイカれた「最高のシマ」へと進化を続けていた。


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