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チートはいらねぇ。農高ヤンキー、拳と畑で異世界のてっぺんへ  作者: 月神世一


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EP 5

世界樹の仕送り(年金)とハイパーインフレの危機

気絶から目覚めたルナを連れ、一行がルナキンからポポロ村の広場へ戻ってきた時のことだった。

「あ、そろそろですわね」

ふと、ルナが足を止め、空を見上げて嬉しそうに微笑んだ。

「なになに?」

キャルルが首を傾げた、その瞬間。

ズゴゴゴゴゴ……!!

突如として、ポポロ村の地面が局地的な地震のように激しく揺れ始めた。

「ひぃっ!? 魔物の襲撃ですか!?」

リーザが反射的に地面に伏せ、頭を抱える。

揺れが頂点に達した直後。広場の中央の地面が、内側からの凄まじい圧力によってドーム状に隆起した。

チュドオオオオオオンンッ!!!

土煙と泥を派手に吹き飛ばし、地中から『何か』がミサイルのように突き出してきた。

それは、太陽の光を反射して暴力的なまでにギラギラと輝く、巨大な黄金の円柱だった。

「げほっ、ごほっ! な、何これ〜?」

土煙を払いのけながら、リリスが目をぱちくりとさせる。

広場で農具を手入れしていた龍魔呂も、その轟音に気づいて歩み寄ってきた。彼は土から突き出た黄金の柱をコンコンと特殊警棒で叩き、短く結論を述べた。

「……キンだな」

「ええ。母親(世界樹)からの今月の『年金(お小遣い)』ですわ♡」

ルナは、まるで実家から野菜の仕送りが届いたかのような、極めて日常的なテンションで言い放った。

「母親って……あのヤンデレ世界樹から!? しかもこれ、目測で純金100kgくらいあるでしょ!?」

キャルルが戦慄してウサギ耳を震わせる。

世界樹は愛娘であるルナが異国で不自由しないよう、大陸の地脈レイラインを強引に捻じ曲げ、地中経由で毎月莫大な『お小遣い』を射出デリバリーしてきているのだ。

「さぁ、これで軍資金も潤沢になりましたし。皆さん、もう一度ルナキンに行きましょう♡ 今度はデザートも全種類頼んでよくってよ?」

フリフリのドレスを揺らしながら、底抜けの善意で提案するルナ。

その言葉を聞いた瞬間、リーザの瞳が「¥」のマークに変わり、完全に理性を失った。

「ルナ様ぁぁぁ!! 何処まででも付いて行きますぅぅぅ!!」

リーザは音速でルナの足元にスライディング土下座を決め、そのドレスの裾に頬を擦り付けた。

「一生ついていきます! 私を貴女の専属ペット(犬)にしてください! パンの耳生活から抜け出せるなら、ワンとでもニャンとでも鳴きますぅ!」

誇り高き人魚姫のプライドは、純金100kgの前に完全崩壊していた。

「わぁい! 私も行くですぅ! その金塊の端っこを削って、ガチャの課金石に……」

リリスも便乗してよだれを垂らしながら黄金の柱に抱きつこうとした、その時。

「アホンダラあああああああああああッ!!!」

村の財務管理所から、凄まじい血相を変えたニャングルが、算盤を振り回しながら猛ダッシュで突っ込んできた。

「ストォォォォップ!! その金塊に触るんやないでえええ!!」

ニャングルはスライディングで黄金の柱の前に立ち塞がり、両手を広げてルナたちを威嚇した。

「ニャングルさん? どうしたんですか、そんなに慌てて」

「どうしたやあるか! あんたはん、自分の持ち込んだソレがどれほど恐ろしい『経済の核弾頭』か分かっとらんやろ!?」

ニャングルは純金100kgを指差し、泡を吹きながら絶叫した。

「ええっと……ただの便利なお小遣いですわ?」

「ただのお小遣いで国家予算レベルの金を毎月持ち込まれてたまるかあああ! こんな金塊を軽々しく市場(ルナミス帝国やポポロ村)に回してみなはれ! 貨幣価値が一瞬で暴落して、パン一個買うのに金貨が100枚必要になる『ハイパーインフレ』が起きまっせ!!」

ニャングルの悲痛な経済学の講義が広場に響き渡る。

「ルナキンでこの金塊で支払おうとした日には、ゴルド商会の経済網が完全に麻痺して、大陸中から暗殺者がポポロ村に飛んできまっせ! この村は火の海や! 物理(魔物)の暴力より、経済の暴力のほうがよっぽどタチが悪いんやで!!」

「あらあら……。それは困りましたわね。でも、せっかくお母様が送ってくださったのに」

ルナは小首を傾げ、まったく事の重大さを理解していない様子だった。

「ひいいん……私のルナキン全メニュー制覇の夢がぁぁ……」

リーザが地面を叩いて悔し泣きをする。

「……チッ。しゃあねぇな」

龍魔呂が頭を掻きながら、学生服の袖を捲り上げた。

「おいニャングル。こいつの年金(爆弾)、また村長宅の地下室に『塩漬け(封印)』すんぞ。手伝え」

「へ、へい! 龍魔呂兄貴! 誰の目にも触れんよう、厳重に地中深く埋め直しまっさ!」

「あら、龍魔呂さん。運んでくださるの? 頼りになりますわ♡」

「てめぇはすっこんでろ。これ以上、俺のシマの経済(メシの種)を脅かすんじゃねぇ」

龍魔呂とニャングルが額に汗して純金100kgを引きずって地下室へ向かう中、ルナは「ふふっ♡」と呑気に微笑みながら、ポポロ村の空気を満喫していた。

ヤンデレ世界樹の加護を受ける、天然の経済テロリスト。

彼女の存在がポポロ村にある限り、ニャングルの胃痛が治まる日は永遠に来ないのだった。

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