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チートはいらねぇ。農高ヤンキー、拳と畑で異世界のてっぺんへ  作者: 月神世一


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第四章 天然爆弾エルフ娘ルナ登場

出会って3分の国家反逆罪(偽造金貨)

ポポロ村の穏やかな昼下がり。

いつもなら龍魔呂が畑を耕し、リーザが鳩とパンの耳を奪い合っている平和な広場に、突如として『異常事態』が発生した。

季節外れの桜が舞い、枯れかけていた雑草が一斉に色鮮やかな花を咲かせたのだ。

甘い花の香りと共に、森の奥からふわりふわりと歩いてきたのは、過剰なほどフリルがあしらわれたお嬢様ドレスに身を包む、一人の美しいエルフの少女だった。

手には、神々しいオーラを放つ『世界樹の杖』。

歩くたびに足元から植物が芽吹くその姿は、まさに森の女神の降臨である。

「わぁぁっ! ルナちゃんだあああ!」

真っ先に反応したのは、芋ジャージ姿のリーザだった。彼女は音速のスライディングでエルフの少女の足元へ滑り込み、そのドレスの裾に顔を擦り付けた。

「ルナちゃぁぁん! 会いたかったですぅ! (訳:食費をたかりに来ました!)」

「まぁまぁ、リーザ。お久しぶりですわね。今日も元気に地面を這いずり回っていて、何よりですわ」

ルナ・シンフォニア。

世界樹の森が誇る次期女王候補は、ふんわりとした極上の笑顔で、完全に小馬鹿にしたような挨拶を無自覚に放った。

「げっ……! ルナ……!」

少し離れた場所で農具を手入れしていたキャルルは、その姿を見るなり、ウサギ耳を限界まで後ろに寝かせて露骨に嫌な顔をした。

ルナミス帝国での同居を「家が燃えるから」と断固拒否した相手が、ついにこのポポロ村までストーカー……もとい、追ってきてしまったのだ。

「まぁ、キャルル。そんなに青い顔をして、何か困った事でもあったの?」

ルナは小首を傾げ、キャルル、そして初対面である黒学生服の巨漢(龍魔呂)へと視線を向けた。

「そうね……。こんな辺境の村で、皆さん毎日泥にまみれて、きっと日々のパンにも困っているのね。可哀想に……」

天然度100%の純粋な哀れみを浮かべたルナは、足元に落ちていたソフトボール大の『ただの石ころ』をふわりと拾い上げた。

「これで、美味しい物を食べてくださいな♡」

ルナが石ころに世界樹の杖を軽くトンッと当てた瞬間。

ピッカァァァァァァンッ!!!

眩い光と共に、ただの石ころが、純度100%の『特大の金塊(偽)』へと変貌を遂げた。

ルナはそれを、ポカンとしている龍魔呂の胸元へと無造作に押し付けた。

「わぁい!! 金塊ですぅ! 龍魔呂さん、それ私にください! これを課金石に変換すれば、エンジェルすまーとふぉんのガチャゲで、SSRの『水着の大天使』が天井まで回せますぅ♡」

リリスがよだれを垂らしながら、神の威厳をすべて投げ打って金塊に飛びついた。

「いや! ちょっと待てぇぇぇ!!」

ドガッ!!

リリスが金塊に触れるコンマ一秒前、キャルルの安全靴がリリスの顔面にクリーンヒットして吹き飛ばした。

「あんた何やってんのルナ! それ『3日で石に戻る偽金』やろがい! 帝国時代にもそれで何回ファミレスで無銭飲食しかけたと思ってんの!?」

「あらあら……?」

ルナは不思議そうに目をパチクリとさせた。

「駄目なの? 3日以内に使い切ってしまえば、誰も損はしませんわよ? むしろ市場にお金が回って経済が潤うのではなくて?」

「アホなこと言いなすなあああああ!!」

村の財務担当であるニャングルが、泡を吹きながら算盤を放り投げて突っ込んできた。

「3日後に金庫の中の金貨が石ころに変わってみなはれ! 信用創造が崩壊して、その街の経済は死に絶えまっせ! 頼むから、善意の顔して法律と経済学を学んでおくんなまし!!」

偽造通貨の行使は、どこの国でも死刑確定の第一級国家反逆罪である。

「そんなぁ……。私はただ、皆さんに幸せになってほしかっただけなのに……。クスンッ」

ルナが悲しそうに目を伏せると、彼女の感情に連動して、村の地面からズズズ……と巨大で不気味なイバラのツルが何本も生え始めた。世界樹のヤンデレ防衛システムが、ルナをいじめた(と認識した)ポポロ村を物理的に更地にしようと起動したのだ。

「ひぃぃぃっ! 世界樹の触手がぁぁ!」

「ご、ごめんなさい私が悪かったですぅ! だから村を滅ぼさないでぇ!」

ニャングルとキャルルがパニックに陥って泣き叫ぶ中。

「……」

龍魔呂は、押し付けられた重い金塊(偽)を片手で軽く放り投げ、もう片方の手で学生服のポケットから『バレッド』を取り出した。

カチッ……!

真鍮製のオイルライターで火を点け、紫煙を深く吸い込む。

「……おい、エルフ」

「はい? なんですの、柄の悪い殿方」

ルナがきょとんとして振り返る。

「てめぇ……『出会って3分で人生シマを壊しに来やがった』な」

龍魔呂は煙を吐き出しながら、特大の偽金塊と、迫り来る茨のツルを交互に見て、低く笑った。

「悪意のないバカが一番タチ悪いってのは、東京むこうでもこっちでも変わらねぇらしい。……上等だ。そのふざけたオモチャ、俺が真っ当なメシ代に変えてやるよ」

天然の災害エルフと、最強の農業ヤンキーの、最悪で最高なファーストコンタクト。

ポポロ村に、かつてない波乱の幕が上がった。

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