第9話:国王の関心と「竜骨伯爵」
暗殺未遂事件から数日後。
アルス領の入り口に、本家の私兵ではなく、見たこともないほど豪華なルヴィス王国の「近衛騎士団」が到着した。
白銀の鎧を纏った騎士たちが一斉に膝をつき、中央から歩み出てきたのは、国王直属の特使である老騎士・ジェラルドであった。
「アルス・ヴァルハイト殿とお見受けする!」
「はい、僕がアルスですが……」
ジェラルド特使は羊皮紙の勅書を恭しく広げ、朗々とした声で読み上げた。
「——勅命である! 六男アルス・ヴァルハイト殿。お主が死の地『竜骨谷』を一人で開拓し、数万の難民を救い、更には【地脈操作】を用いて王都直下に生じていた古代大空洞の崩落事故を未然に防いだ特大の功績……これらを鑑み、国王フリードリヒ4世陛下はお主を独立した『竜骨伯爵』に即日叙するものである!」
「ひ、伯爵……!?」
周囲にいたクラウスや住民たちがどっと歓声に包まれた。
十代前半にして、寄子の立場から一気に「伯爵」への特進。これは王国史上でも前代未聞の快挙であった。
「さらに、お主から提出された本家ヴァルハイトの不正、および王都反乱分子との逆謀の証拠……しかと受け取った。国王陛下もお怒りである」
ジェラルド特使はアルスに近づき、声を潜めて一通の「漆黒の封書」を手渡した。
「アルス伯。これは陛下からの極秘指令だ。『王都に潜む巨大な陰謀——ゼノス公爵派の動向を探り、地脈の異変を食い止めよ』とな。お主のその力、頼りにしているぞ」
「……謹んで、お受けいたします」
アルスは深く一礼した。
この知らせは、すぐさま本家ヴァルハイト居城にも届いた。
「は……伯爵だと……!? あの無能の出来損ないが伯爵になったというのかあぁぁぁ!!」
書類を破り捨て、狂ったように叫ぶ長男バルド。
病床でこの知らせを聞いた父・辺境伯は、激しい吐血とともに崩れ落ちた。
「わ、わしは……なんという宝を捨ててしまったのだ……。我が家は……終わりだ……」
後悔の言葉を残し、父・辺境伯はそのまま静かに息を引き取った。
しかし、正気を失ったバルドとジュリアスは、父の死すら省みず、更なる狂気へと走っていく。




