第10話:焦燥の落ちぶれ兄弟たち
父の死によって正式に(自称)当主となった長男バルドと、参謀気取りの次男ジュリアス。
二人はアルスが「伯爵」になったことに耐え切れず、完全に正気を失っていた。
「許さん……許さんぞアルス! 寄子の分せいで生きていきながら、兄である私より上の爵位に就くだと!?」
バルドは本家の財産をすべて吐き出し、領内の重税を限界まで跳ね上げ、かき集めた金で「私兵とならず者の傭兵軍」三千人を雇用した。
一方、四男のガルドと五男のエリックは、長男たちの狂気についていけず、保身のために動き出していた。
「おいガルド、俺たちはアルスに本家の防衛図面を売って寝返ろうぜ」
「ふん、エリック。お前みたいなバカと一緒じゃ足がつく。俺一人でアルス兄さんに取り入るさ」
腹の探り合いを始めた四男と五男。
ガルドはエリックの酒に毒を盛り、エリックはガルドの部屋に暗殺者を放つという、醜い足の引っ張り合いを展開。結果として、互いの毒と刺客によって二人は相打ちとなり、自滅して果てた。
本家ヴァルハイト領の領民たちは、度重なる重税と狂った領主たちに耐えかね、ついに各地で大規模な暴動を起こし始める。
「バルドを倒せ! 竜骨伯爵(アルス様)のもとへ逃げるんだ!」
領地は火の海と化し、ヴァルハイト本家は内側から完全に崩壊の時を迎えようとしていた。




