第11話:レイモンドの決意と崩壊の足音
崩壊していく本家の居城から、命からがら抜け出した一人の青年がいた。
三男のレイモンドである。
ボロボロの鎧を身に纏い、血と汗に塗れながら、彼は一人馬を走らせてアルス領へと辿り着いた。
「ハァ……ハァ……アルス……!」
「レイモンド兄さん!?」
領地の入り口で出迎えたアルスは、倒れ込むレイモンドを慌てて抱きかかえた。
【万物解明】で全身をスキャンし、即座に地脈の生命力を注入して傷を癒やす。
呼吸を整えたレイモンドは、アルスの手を強く握りしめ、涙を流しながら訴えた。
「アルス……父上が亡くなられた。そしてバルド兄さんとジュリアス兄さんは完全に正気を失っている……! 領民から奪い取った金で雇った三千の傭兵軍を率いて、この谷へ向かって進軍を開始したんだ!」
「三千の軍勢が……」
「あいつらは『アルスを殺し、谷の富を奪えばやり直せる』と思い込んでいる! アルス、お願いだ……僕に力を貸してほしい! バルド兄さんたちを止め、破滅に向かう本家を解体し、苦しむ領民たちを救いたいんだ!」
かつて気弱で、アルスを庇うことしかできなかった三男レイモンド。
しかし今の彼の瞳には、領民と弟を守るための「本物の領主の覚悟」が宿っていた。
アルスは温かく微笑み、強く頷いた。
「もちろん協力するよ、レイモンド兄さん。僕に優しくしてくれたのは、兄さんだけだったから。一緒に行こう!」
谷の入り口には、狂気に囚われたバルドとジュリアスが率いる三千の私兵軍勢が、地鳴りを立てて迫りつつあった。




