第12話:決着、そして新たな双璧へ
竜骨谷の隘路。
黒雲が立ち込める中、三千の傭兵軍を率いた長男バルドと次男ジュリアスが陣を敷いていた。
「ハハハ! 見ろジュリアス! あの無能のアルスが、数人の従者と立ち尽くしていやがるぞ!」
馬上で高笑いするバルド。
「兄上、容赦はいりません。全軍突撃! アルスの首を取った者に金貨千枚を与える!」
ジュリアスの号令とともに、三千の兵が一斉に爛々とした目を光らせて突撃を開始した。大地が激しく揺れる。
しかし、アルスは焦る色を一切見せない。
静かに前に歩み出ると、両手を大地へ向けてかざした。
「これで……終わりにしよう。本家の呪縛も、過去の怨みも。【地脈操作】——『流砂の大連動』!」
ズゴゴゴゴゴゴゴッ……!!
一瞬にして、果てしない地鳴りが十里四方に轟いた。
突進していた三千の兵たちの足元——その強固な岩盤が、一瞬にして底なしの「流砂」へと変化した。
「な……なにぃ!?」
「あ、足が沈む! 助けてくれぇぇ!」
悲鳴が上がる。三千の兵たちは抵抗する間もなく、胸まで、首まで土の中に埋もれていく。
アルスの精密極まる魔力操作により、誰一人として押し潰されることなく、ただ完璧に「身動きを封じられた」状態となった。死者は文字通りゼロである。
最後に取り残されたバルドとジュリアスは、馬から転げ落ち、腰を抜かして震えていた。
アルスとレイモンドが静かに二人の前へ歩み寄る。
「ヒッ……ひぃぃっ! アルス、助けてくれ! 私は兄だぞ!? お前に寄子の領地をくれてやった兄だろう!?」
「だ、そうだ! 全部バルド兄上が計画したんだ、私は従わされただけだ!」
醜く責任を押し付け合う二人。
レイモンドは冷たい視線で二人を見下ろし、静かに剣を突きつけた。
「バルド兄さん、ジュリアス兄さん。あなたたちは領主としての資格を完全に失った。……連れて行け!」
数日後。
王都の謁見の間において、審問が行われた。
国王直々の判決により、国家反逆罪および領民殺傷の罪で、バルド、ジュリアス、そして既に死亡していたガルド、エリックを含めた一派の全爵位が剥奪。生きていた二人は最北の鉱山での生涯強制労働に処された。
そして——。
「国王陛下。ヴァルハイト辺境伯家は解体せず、真に領民を想う三男レイモンド兄上に継いでいただきたく存じます」
アルスの強い進言により、レイモンドが「新ヴァルハイト辺境伯」に即位。
ここに、北東の地を守護する「竜骨公爵(※予定)アルス」と「辺境伯レイモンド」による、最強の兄弟二大領主体制が完成したのである。
……しかし、決着の直後。
アルスの脳内に、地下深くから響く(カチ……カチ……)という音が、今までにないほど激しく鳴り響いた。
『——適合者アルス・ヴァルハイト。第二段階認証へ移行。王都地下の『コア』が共鳴を開始しました——』
未知の声が、アルスの頭に直接届いていた。




