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最弱スキルな貧乏貴族の六男の俺、隠しスキル【地脈操作】で成り上がる〜辺境の死の谷を開拓でスローライフをめざすことにしました〜  作者: 森羅万象


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第14話:遺跡調査官クラウスと『二つのコア』

「だ、誰だ貴様っ! アルス坊主に妙な真似をしてみろ、この斧で首と胴体を叩き切ってやるぞ!」


ガルドックが瞬時に間合いを詰め、地脈鋼の戦斧を青年の喉元へ突きつけた。鋭い風圧が青年の頬をかすめ、黒髪を大きく揺らす。しかし、青年は眉一つ動かすことなく、ゆっくりと両手を挙げて深々と一礼してみせた。


「おっと、どうかご容赦を。粗暴な振る舞いをするつもりは毛頭ございません。……私は王室直属の考古学研究機関に所属しております、クラウス・フォン・セルディスと申します」


「王室の調査官……? そんな立派な立場の人が、どうしてこんな非合法な最下層の遺跡にいるの?」


アルスがガルドックの手を制しながら問うと、クラウスは右目の単眼鏡の位置を指先で軽く正し、その口元に知的な笑みを浮かべた。


「非合法、ですか。フフ……実に滑稽な話です。王都の権力者たちは地上で権謀術数に明け暮れておりますが、自分たちが座っている足元にどのような『絶対的な力』が眠っているのか、誰一人として理解していない。私はただ、真実を求めて長年この地下遺跡に潜伏していただけに過ぎません」


クラウスは懐から、使い込まれて皮が擦り切れた一冊の古びた手記を取り出し、パラパラとページをめくってアルスに見せた。そこに描かれていた繊細な精密画を見て、アルスとレリアは息をのんだ。


手記の紙面には、アルスが現在も所持している『星輪の鍵』の立体図と、寸分違わぬ幾何学模様が緻密なインクで書き込まれていたのだ。


「この手記は、我がセルディス家に代々伝わる古代文明の解読書です。そこに記されていたのですよ。『星の脈動を統べ、物質の構造を解明する【適合者】が現れし時、王都地下の基幹施設アストラル・コアは第二段階の覚醒を迎える』と」


クラウスは後ろにそびえ立つ、巨大な青い光の球体——『アストラル・コア』を見上げた。その瞳には、純粋な探求心と畏怖が入り混じっていた。


「アルス・ヴァルハイト伯爵。あなたが竜骨谷の地脈を極限まで開放し、三千の軍勢を死者ゼロで制圧した瞬間、その莫大な魔力波長がこのコアに到達したのです。あなたが鍵であり、あなたがこの世界を動かす駆動源なのですよ」


「僕が……鍵……?」


アルスは己の手の平を見つめた。最弱の【地脈操作】だと蔑まれ、本家から追い出された自分が、世界の根幹に関わる存在だというのか。


しかし、クラウスの表情が急に鋭く陰りを帯びた。単眼鏡の奥の瞳が、凍てつくような冷たさを帯びる。


「ですがアルス様……手放しで喜んでいる場合ではありません。この『アストラル・コア』が覚醒したということは、それと対をなす世界網のもう一つの極……北方の軍事大国・ガルディア帝国領内に眠る『ネブラ・コア』をも同時に刺激してしまったことを意味します」


「ガルディア帝国の……コア……!?」


レリアが息を呑み、固い声で呟いた。

ガルディア帝国。それはルヴィス王国の北方に位置する圧倒的な軍事力を誇る覇権国家であり、近年目覚ましい侵略行為を繰り返している巨大な影だ。


「左様です」クラウスは重々しく頷いた。「ガルディア帝国は近年、極秘裏に古代遺跡の発掘を進めておりました。彼らは『ネブラ・コア』の圧倒的な破壊エネルギーを兵器転用し、このルヴィス王国を、ひいては世界全体を武力で平定しようと画策しております。彼らが求めるのは完全なる支配……アルス様、あなたの持つ【地脈操作】と【万物解明】は、彼らにとって喉から手が出るほど欲しい『最優先奪取対象』なのです」


「チッ……! 長男のバルドや次男のジュリアスをぶちのめして本家との決着がついたと思ったら、今度は帝国とかいうデカいバケモノが相手かよ!」


ガルドックが苛立ちを隠さずに吐き捨て、床の石畳をドスンと足踏みした。


アルスは静かに目を閉じ、深く息を吐き出した。

(争いは好きじゃない。僕はただ、竜骨谷で仲間たちと平和に暮らしたいだけなんだ。でも……僕の力やこのコアが狙われるなら、僕たちが動かなきゃ、大切な仲間も、レイモンド兄さんが継いだ辺境伯領も、全部巻き込まれて壊されてしまう)


アルスが目を開けると、クラウスはその場に静かに跪き、頭を垂れた。


「アルス様。王家の愚か者たちはこの遺跡を兵器としてしか見ようとしない。しかし、あなたならこの古代技術を正しく使い、人々の暮らしを守るために使っていただけると確信しております。どうか……このクラウス・フォン・セルディスを、あなたの臣下、そして参謀としてお加えください。私の知識と分析力のすべてを、あなたに捧げます」


【万物解明】でクラウスの生命波長を読み取る。彼にあるのは野心や悪意ではなく、真理への探求と、アルスという存在への強い敬意だった。


「顔をあげて、クラウスさん」


アルスは温かい手を差し伸べ、クラウスの手を固く握り返した。


「僕たちの街を、そしてこの世界を守るために……君の力を貸してほしい」


こうして、卓越した古代の知識と冷徹な分析力を持つ最高の参謀『クラウス』が、アルスの陣営に加わったのだった。

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