悲劇が止まらぬ現実世界にて とある新人刑事(4)
「未だに学校や彼女の家族が『事実』を述べない。それは、自分達も『罪』を感じてでの行動か、それと
も単に何も考えていないだけか・・・
どっち道、奴らが事実を語らないのなら、僕の命を使ってでも、ここで『事実』を打ち明ける。
・・・もう僕も、色々と疲れてしまったんだ。これが僕の『罪滅ぼし』なのか、『逃走』なのかも、よ
く分かっていない。
けれど、気が変わらないうちに、僕は踏み出す事にしたんだ。
もう僕も、悩み続ける日々は嫌だったんだ。何もできない自分を責める毎日から・・・
彼女は、小学生時代からずっといじめられていた。これは僕以外にも、知っている生徒はいる筈。
僕も彼女も、この地域に住んでいた。だから、必然的に同じ小学校、同じ中学校だった。
・・・だが、それが彼女のいじめを長引かせた要因の一つなのかも。
小学校時代から続いたいじめなら、中学校に入ってもそれが治るわけがない。
彼女、節三 紺 に対するいじめは、中学に入ってからエスカレートした。
それは、誰の目から見ても、『脅迫』や『恐喝』に値するくらいの仕打ちだった。
その上、学校や先生は揃いも揃って、誰も彼女を助けようとはしない。彼女がいじめられている光景を
見て、陰で笑う教師までいる始末。
だからこそ、誰も彼女を助けようとはしなかった。彼女がいじめられている事自体が、皆の中の『当た
り前』になっていたから。
この異常な環境が、当たり前なわけがない。前に本で見た、『集団心理の恐ろしさ』という内容が、ま
さにピッタリ当てはまる。
皆で寄ってたかって、彼女をいつもいつも揶揄って、嘲笑って、彼女の私物にまで手を出して、この環
境を大人が野放しにして・・・
まるで此処は躾がされていない動物達が住う檻の中の様だった、皆が好き放題に暴れて、賢い彼女がそ
の犠牲になる。
僕もクラスでは浮いた存在だったから、彼女の気持ちは痛いくらい分かるし、彼女の家庭環境に関して
も、同じ地域住民だからよく耳していた。
しかし、『学校』という名の『檻』に住う人々と同じく、『地域』という名の『檻』の住う人々も同じ
く、彼女の苦痛に気づきもしない。
それどころか、影でコソコソと陰口を叩いている奥様達を何度も目にしていた。」




