後悔と悲しみが渦巻く中にて ギン
俺と兵士長は、怪しげなスライムを次々と薙ぎ払っていく過程で、沼がある方面からスライムが押し寄せている事に気づき、早速この沼の調査に入った。
だがその最中、突然兵士長の姿が見えなくなった・・・と思った直後、俺も意識がなくなってしまう。
そして、意識がようやく戻り始めた頃、微かに聞こえてきたのは、『彼女の唄聲』だった。
だが、〈ノリト〉を唱えるいつものコンとは違い、例え用のない私情が混ざっていた。悲しみと苦しみが混ざり合った、痛々しい叫び声。
そして、ようやく俺の体が動き出した頃、目に映ったのは、天に向かって許しを請うコンが、『彼の足』を抱いている姿であった。
彼女にしっかりと握りしめられている足からは、まだ真っ赤な血液がポタポタと出ている。
コンは自分の体が泥や血で汚れようと、全く気にしていなかった。
もう自分から離れないように・・・と、嗚咽まじりの泣き声で愛を叫んでいる。
もう俺達に寄り添ってくれる、何度も励ましてくれたウルシが、そんな姿に成り果てようとも、それでも愛を貫こうしている、俺にはそう見えた。
俺だって、ウルシがこんな姿に成り果てたとしても、愛する弟である事に変わりはない。だが、このままではいけない事は、俺でも分かっている。
でも、それでもコンの側に近寄る事すらできない。体はもう動く筈なのに、心が全力で拒否している。
体は動くけど、感情はまだ正常ではない。それはこの光景を見れば、普通はそうなる。
もはや、自分の感情や倫理が、どんどん狂っている感覚に陥っていた。だがそれでも、その感情事態を否定する事はできない。
むしろ、今の状態が正常じゃないか・・・と、思えてしまう程に。
そんな狂いかけた俺を引き戻してくれたのは、兵士長だった。兵士長は、俺の肩を軽く叩くと、次にコンの元へ行き、背中を抱き締めた。
すると、コンもようやく正気を取り戻しかけたのか、一瞬で静かになる。・・・いや、兵士長が静かに泣く声だけが、辺りに響いていた。
・・・ウルシ、お前は幸せ者だぞ。最後がどうであれ、こんなに名残惜しく思われる死なんて、名誉に等しい。
それくらい、お前は愛されていたんだよ。俺も含め、この事件はこれからの長い期間、人々の記憶に残り続ける。
それは、とんでもなく凄い話だ。正直、ちょっと羨ましいぞ。
「・・・コン、もう帰ろう・・・な?」
「・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
兵士長は、謝り続けるコンに、ただひたすら頷き続けた。まるで、「君は悪くない」と暗示をかけている様にも見える。
実際そうなんだよ、コンは何も悪くない。悪いのは・・・・・
むしろお兄ちゃんである 俺の方だ
妹であるコンと同じく 兄であるギンの心に残ったのは
『罪悪感』と『無力感』
それが 彼女に全てを任せてしまった『責任』となり
ギンに重くのしかかった




