第六章 こそこそと・・・
「よ・・・い・・・しょ・・・っと。
ふー・・・階段降りるだけでしんどいって、ヤバいな・・・」
いつもなら十数秒で降りられる階段も、数分かけてようやく四階から一階まで降りられた。
つまり兄は、一階から四階まで、私を抱えて運んだんだよね・・・
改めて、兄が凄い事が身をもって実感できる。私はそれほど重くない・・・と思うけど、人を運びながら階段を登る事は、相当至難の業。
私でも、ボーっとしながら階段を登っていたら、爪先か引っかかって転びそうになる事が時々あるくらいだ。
私を持ち運べる腕力も凄いけど、この階段地獄を難なく突破できる脚力も凄い。これが、兄の訓練の成果なのか・・・
それに、私の看病を休む事なく支えてくれる心強さも兼ね備えている。・・・もしかしたら、兵士長の次期候補は、兄になるのかも・・・
・・・それにしても、こんなに廊下って長かったっけ・・・?
歩くだけで結構体力を持っていかれる・・・というか、体が重くて上手く動かせない。まるで錆だらけの機械になったみたいだ。
廊下に手すりなんてないから、壁を支えにして、ゆっくり歩かないと転んでしまいそう。
何故か廊下を歩いているだけなのに、汗が止まらない。それに、心臓の鼓動が鳴り止まない。
どうにか気合いで此処まで来れたけど・・・・・これ四階まで帰れるの・・・??
・・・そうなったらもうしょうがない、怒られる事覚悟で、誰かに運んでもらうか。
咄嗟に来てしまったけど、私の体が元に戻るのは、まだまだ時間がかかりそうだ。
城の門には兵士が沢山いるから、あえて裏口から出る。見つかったら、大騒ぎになってしまい、私のこれまでの努力が無駄になってしまう。
今は夕食直前の夕方、上手く身を隠せば、誰にも気付かれない。
久しぶりに外に出た直後、私の目は熱くなってしまう。城に引き籠っていたのは数日程度だったけど、それでも懐かしく感じてしまうのだ。
ただ、余韻がまだ私の中に残っているせいなのか、門付近を直視できない。何故か無意識のうちに、目線がずっと兵舎に定まっている。
道がある程度舗装されているから、歩きやすくて助かった。里の砂利道だったら、もし今の私が里を歩いたら、すぐにバランスを崩しそう。
夕暮れ時になると、市場の方から日中以上に多くの人々の声が聞こえるようになる。
そして、市場の商人が売り込む物も、日中は『日用雑貨』なのだが、夕方になると『食べ物』に変わるのだ。
そう、これから夕食を作る人々が、市場に挙って来ている。
その大半は奥様方だけど、中には仕事帰りの空腹を満たす為に、軽い軽食を求める男性の姿もある。
柵の向こうから見える市場の賑わいを見ると、不思議と心がホッとするのは何故だろう。
多分、あの事件は公に公表していないのかもしれない。もしくは、犯人が分かったら、改めて公表するのかも。
ただ、私としては、公にしてほしくないんだよな。だってあの亡骸は・・・
コンは 重い足を引きずりながらも
真実を究明しようとする
それが彼女自身にとって 苦痛になる事は分かっていた
それでも 真実を求めないと気が済まないのは
彼女の性なのか・・・




