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最弱国の魔素無し第四王子戦記(無限の魔素と知略で最強部隊を率いて新王国樹立へ)  作者: たぬころまんじゅう
第五章

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エピローグ1

 一月後。



 エルム歴739年10月も半ば。ミラン・キャスティアーヌ宮殿に、ハイデ公国からの使者が訪れていた。大広間に通された使者は、イグナシオ公爵の名代として、アルスに深く頭を下げる。


「ファニキア王アルトゥース陛下。ハイデ公国新国王イグナシオ公爵より、感謝と友好の証を申し上げに参りました」


 使者は巻物を差し出す。そこには、ニコラス国王の死と、イグナシオの即位、そしてファニキアとの「永続的な友好関係」の宣言が記されていた。過激派の排除後、穏健派がハイデを統べることになり、アルスとの約束通り、両国は互いの独立と繁栄を尊重する友好国として歩む道を選んだ。アルスは巻物を読み、頷いた。


「イグナシオ公爵に伝えて欲しい。ファニキアはハイデと共に平和と繁栄の道を歩むと。互いの国境を越えた交易と文化の交流を、これからも深めていこう」


 使者は深く頭を下げ、退室する。アルスは窓辺に立ち、遠くの地平線を眺めた。西の向こうには広大な森が広がり、そのまた向こうにはエルザとナザルが戦ったランス川が流れている。


「これで・・・・・・やっと、全部終わったなぁ」


 アルスは遠くの景色を見ながら呟く。カロルに続いて、エレーナ率いる第六師団を撃退した時には第二師団であるナザルは戦場から退いていた。エルザ、ナザル共に激戦だったらしいが、決定打となったのはフランツが糧食庫を燃やしたことらしい。経戦能力を失ったナザルは一旦後退し、軍を再編しつつ整然と撤退したとのことだった。


 ナザルが退いた報を聞いた帝国軍第五将ヴィクトルは、軍を退く決断をする。もちろん、グレゴリー公爵は反対を表明したが軍事決定権はヴィクトルにある。レオニード皇太子もヴィクトルの判断に従う手前、ヴィクトルに対して一貴族であるグレゴリーが、それ以上強気に圧力を掛けたり、要求することはできなかった。こうして帝国軍は撤退。教皇軍は、第二師団半壊、第三、第六師団ともに壊滅という大敗北を喫することになった。


 この報はエルム大陸中に広がり、驚きをもって人々に迎えられたのである。ファニキアの王アルスの名と彼の軍団は、大陸全土に響き渡ることとなった。


 アルスと全将兵の帰還は、ミラン・キャスティアーヌの住民に歓喜をもって迎えられた。街中の建物から紙吹雪が舞い、人々から「アルトゥース王万歳!」「ファニキア万歳!」の大歓声が沸き上がった。称賛の声は将兵たちにも惜しみなく送られることとなる。ちなみに怪我をしたガルダだったが、それほど傷が深くなかったようで、しっかり歓声にも応えていた。


 リザは一時期危なかったが、なんとか一命を取り留め、今は順調に回復に向かっている。サシャは戦が終わったら、リザが峠を越えるまで付きっ切りだったらしい。今も三日に一度は見舞いに行っている。もっともリザのほうは、「絶世美男の王子が、なんでコイツ(サシャ)になってるんだ?そうか、きっと悪い夢だなこれは」というのが、目が覚めての第一声だったらしい。


 一方、各地で戦勝パーティーが開かれるなか、当のアルスはずっと苦しんでいる。「アルス!」後ろからミラの声が聞こえる。アルスが恐る恐る振り返ると、ミラが書類の束をドサッとテーブルの上に置いたところだった。


「うぇぇ・・・・・・」


 それを見てアルスは思わずため息が出る。戦が終わると、アルスを待っていたのは、膨大な書類の山だった。戦の間に溜まっていた書類と戦後処理に係る膨大な書類作業にいささかうんざりしていた。


「何を呆けておるんじゃ!さっさと処理せんと進まんぞ」


「ああ、うん。あれ、それってこの前と同じ書類じゃ?」


 アルスが恐る恐る指を差すと、ミラは即座に首を振った。


「ふん、甘いな。甘いぞ、アルス。以前のはハイデ穏健派との友好宣言の儀礼文書じゃったが、これは今日届いたばかりの正式版じゃ。使者が持ってきたのは『友好の証』じゃろ? あれは儀礼的なものじゃ。細かい文言の修正と、交易協定の追加条項がこれじゃ。さっさと目を通せ!」


「はぁ・・・・・・。そっちのは?」


 彼女は一番上の書類をパラパラとめくりながら、早口でまくし立てる。


「こっちは教皇軍の残党が国境近くでウロウロしてる報告書と、ゴドア国王からの『新経済圏についての会議』という招待状、それとサシャが『新しい弓の試作品が完成したから早く見に来て!』って走り書きのメモ・・・・・・なんじゃ、こりゃ!?」


 ミラは読んだメモをクシャっと丸めて投げる。


「エルザの奴め、このくそ忙しい時にわけのわからんメモまで渡しおって!」


 アルスが苦笑いする。宮殿の窓から差し込む陽光が、書類の山を優しく照らす。戦場の血の臭いは、ゆっくりと、インクの匂いに塗り替えられていくようだった。


いつも拙書を読んで頂きありがとうございます。


☆、ブックマークして頂けたら喜びます。


今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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